インプラントで歯並びは良くなるの?矯正治療との違いを解説
インプラント治療を考えるときに「歯並びも一緒に良くなるの?」と疑問を持つ方は少なくありません。そもそもインプラント治療と矯正治療では目的も治療方法も異なるため、両方を混同しないように正しい知識を身につけることが大切です。本記事では、インプラント治療と矯正治療の違いや、それぞれの特徴・メリット・デメリットなどについて詳しく解説します。治療を検討する際の参考にしてみてください。
インプラントと歯並びの関係
インプラントとは、失った歯を補うために顎の骨に人工歯根(チタンなどの金属)を埋め込み、その上に人工歯を装着して機能を回復させる治療法です。一方、矯正治療はワイヤーやマウスピースなどを使い、現存する歯の位置を動かして歯並びや噛み合わせを整える治療です。
つまり、インプラントは歯を失った部分の機能回復がメインの目的であり、歯並び全体を整える役割は基本的には期待できません。「歯並びを良くしたい」という希望がある場合は、まずは矯正治療を検討するのが一般的です。
インプラント治療と矯正治療の違い
1. 治療目的の違い
インプラント治療は失った歯の機能や見た目を回復させることを目的とします。歯を抜けたままにしておくと、隣の歯が移動して噛み合わせが悪くなったり、顎の骨が痩せたりするリスクがあります。そのため、インプラントを埋め込むことで歯の欠損部分を補い、噛む能力や審美性を高めるという治療法が提案されます。
一方、矯正治療の目的は、すでに存在している歯の位置を移動させ、歯並びや噛み合わせを整えることです。歯並びが悪いと歯磨きがしにくく、虫歯や歯周病のリスクが高まるだけでなく、咀嚼機能や顎のバランスにも影響を及ぼす可能性があります。
2. 治療方法の特徴
インプラント治療は、顎の骨に人工歯根を埋め込むという外科手術を伴います。一般的には、人工歯根が骨としっかり結合するまで数ヶ月の治癒期間を要し、その後に上部構造(被せ物)を装着します。インプラント自体は固定されるため、矯正のように歯自体の位置を動かすことはできません。
矯正治療では、ワイヤー矯正(ブラケット装置)やマウスピース矯正(インビザラインなど)を使い、時間をかけて徐々に歯を動かしていきます。大がかりな外科手術は基本的に必要なく、定期的な調整や型取りなどを行いながら治療を進めます。ただし、顎の骨格的な問題が大きい場合には、顎の骨を切る外科手術(外科矯正)が必要になるケースもあります。
3. 費用と治療期間
インプラント治療は、1本あたり30~40万円程度が目安とされていますが、骨量の不足や症例の複雑さによって変動します。治療期間は約半年~1年とされ、骨とインプラントが結合するまで待つ工程が含まれるため、比較的長期にわたる治療です。
矯正治療の費用は、30~150万円程度と幅があります。これは使用する矯正装置の種類や治療の難易度によって大きく異なります。治療期間も約半年から3年とケースにより大きく差があります。
治療法 | 目的 | 費用目安 | 治療期間 | 外科手術 |
---|---|---|---|---|
インプラント治療 | 失った歯を補い、機能回復 | 1本あたり30~40万円程度 | 約半年~1年 | 必要 |
矯正治療 | 歯並び・噛み合わせの改善 | 30~150万円程度 | 約半年~3年 | 基本的に不要(外科矯正は別) |
インプラントと矯正、どちらを先に行う?
インプラントは埋め込むと位置を動かせないという大きな特徴があります。そのため、歯並びに問題がある場合はまず矯正治療を受けて歯を理想的な位置に移動させた後、欠損部分にインプラントを入れるのが一般的な流れです。
しかし、以下のようなケースでは例外的にインプラントを先に行うこともあります。
- 虫歯や事故によって失った歯の機能を早期に回復させる必要がある
- インプラントを埋入しても矯正治療の邪魔をしない位置である
- 矯正の計画においてインプラントをアンカー(固定源)として活用する
いずれにしても、歯科医師や矯正専門医としっかり相談し、歯並びや顎の状態、患者さんのライフスタイルなどを考慮した上でベストな治療順序を決定することが大切です。
インプラント治療と矯正治療、それぞれの制限や注意点
インプラント治療が難しいケース
インプラント治療では、骨の状態や全身疾患の有無など、以下のような条件が揃わないと施術が難しい場合があります。
- 重度の持病(糖尿病、免疫不全、白血病など)がある
- 顎の骨量が不足している
- 18歳未満の成長期
- 重度の歯周病がある
- 喫煙者(喫煙により骨の治癒が遅れる)
- 妊娠中
これらの要因があるからといって絶対にインプラント治療ができないわけではありませんが、成功率が下がったり治療計画が複雑になったりする可能性があります。カウンセリング時にしっかり歯科医師へ伝えるようにしてください。
矯正治療における制限
矯正治療は、基本的に年齢制限が少ない治療です。大人になってからでも歯の移動は可能であり、歯と顎の健康状態が許せば幅広い年齢層で矯正が行われています。ただし、以下のような場合には注意が必要です。
- 顎関節症が進行している
- 歯周病が進行している(まずは歯周病治療を優先)
- 虫歯など、ほかの口腔内トラブルが解決されていない
これらの問題がある場合は、まず問題となっている歯周病や虫歯などの治療を行い、口腔内を健康な状態に整えてから矯正治療を始めることが推奨されます。
歯並びを整えたいなら矯正治療が最優先
「見た目を改善したい」「噛み合わせを良くして健康的な口腔環境にしたい」という場合、最初に検討すべきは矯正治療です。インプラント治療は欠損した歯を補うための治療であり、歯そのものの位置を変えることはできません。もし歯が足りない状態でさらに歯並びも悪い場合は、矯正治療とインプラント治療を組み合わせて計画的に進める必要があります。
矯正治療を受ければ、歯と歯が正しい位置に移動し、噛み合わせが安定するということがほとんどです。その上で、欠損部位に対してインプラントを埋入すれば、最終的に機能面と審美面の両方でより優れた結果が期待できるでしょう。
インプラントと矯正以外の選択肢
歯並びの軽微な乱れや、歯の形・大きさ・色などが気になる場合は審美治療(ホワイトニング・ラミネートベニア・セラミッククラウンなど)で対処できることもあります。例えば、前歯に少し隙間がある程度なら、ラミネートベニアで歯の表面を薄く削り、セラミック素材を貼り付けて見た目を改善する方法も検討可能です。
- ホワイトニング:歯の色を明るくする
- ラミネートベニア:歯の表面に薄いセラミックを貼り付ける
- セラミッククラウン:歯を全体的に削って被せ物を装着する
ただし、審美治療は歯並びそのものを動かすものではないため、噛み合わせの根本的な改善にはつながりません。あくまでも見た目や軽度な問題を短期間で補う方法としての活用がメインです。
まとめ
インプラント治療は失った歯を補うための外科的治療であり、矯正治療は歯並びや噛み合わせを整えるための治療です。両者の目的や方法、期間、費用は異なります。歯並びを改善したい方はまず矯正治療を検討し、抜歯などで歯を失っている場合は、矯正治療後にインプラントを組み合わせることで最良の結果が得られるケースが多いです。
日本歯科グループのクリニックでは、豊富な治療実績と先端の技術力を活かし、患者さまの希望に沿ったオーダーメイドのインプラント治療を提供しています。専門スタッフのチーム医療と充実したサポート体制で、術前の疑問や不安をしっかりと解消しながら、安全・安心の治療を目指します。インプラントや歯についてのお悩みがあれば、まずはお気軽にご相談ください。