結論:上あごの奥歯は上顎洞(じょうがくどう:頬の奥にある副鼻腔の一つ)に近いため、インプラント治療の後にまれに副鼻腔炎が起こることがあります。インプラント後に鼻づまりや膿のような鼻水、頬の痛みが続く場合は、まず治療を受けた歯科医院に相談してください。原因は画像検査などで確認し、鼻の治療が必要な場合は耳鼻咽喉科の受診が勧められることがあります。
この記事では、副鼻腔炎の基本、インプラント治療との関係、疑われる症状と対処法、予防のポイントを解説します。
副鼻腔炎とは?
副鼻腔炎は、鼻の周囲の骨にある空洞(副鼻腔)に炎症が起きる病気です[1]。
主な原因はウイルスや細菌の感染、アレルギーで、4週間以内に治まるものを急性、12週間以上続くものを慢性と分類します[1]。慢性のものは一般に「蓄膿症」とも呼ばれます。
副鼻腔炎で見られる主な症状
副鼻腔炎では、次のような症状が見られることがあります[1]。
- 黄色や緑色の膿のような鼻水[1]
- 鼻づまり、においが分かりにくい[1]
- 頭痛、顔の圧迫感や痛み[1]
- 口臭[1]
- 夜に目立つ、痰を伴うせき[1]
- 全身のだるさ、発熱[1]
上顎洞の炎症では、頬や歯の痛みが特徴とされています[1]。当てはまる症状があっても自己判断せず、医療機関で診察を受けましょう。
副鼻腔炎の主な原因
副鼻腔炎の原因はさまざまで、鼻の病気だけでなく歯のトラブルが関わることもあります[1]。
- かぜなどのウイルス感染と、それに続く細菌感染[1]
- アレルギー(アレルギー性鼻炎など)[1]
- 鼻中隔弯曲症(鼻の仕切りの曲がり)などで副鼻腔の出口がふさがりやすい[1]
- 上の歯の膿瘍(膿のかたまり)が上顎洞に広がる[1]
歯が原因で起こる上顎洞の炎症は「歯性上顎洞炎」と呼ばれ、上あごの奥歯と上顎洞が近いことが関係しています。
インプラント治療で副鼻腔炎になることはある?
上あごのインプラント治療では、まれに上顎洞に影響が及び、副鼻腔炎の原因になることがあります。
骨を増やす処置で上顎洞の粘膜が傷つく場合
上あごの骨が足りない場合、上顎洞底挙上術(じょうがくどうていきょじょうじゅつ:上顎洞の底を持ち上げて骨を作る処置)などを行うことがあります[2]。
この処置は上顎洞のすぐそばで行うため、粘膜が傷つくと細菌が入り、炎症につながるおそれがあります。事前の検査で骨の厚みや上顎洞の状態を確認し、計画を立てることが大切です。日本歯科グループでは、無料カウンセリング時にレントゲン検査・CT検査を行っています。
インプラントが上顎洞に入り込む場合
上あごの骨が薄い場合などに、インプラントが上顎洞に入り込んでしまう(迷入する)ことがあります。
日本口腔インプラント学会誌の症例報告では、上顎洞に迷入したインプラントは上顎洞炎を起こす可能性があるため、できるだけ早く摘出すべきとされています[3]。同報告では、11例中7例で上顎洞底挙上術が併用されていました[3]。
インプラント周囲炎が進んだ場合
インプラント周囲炎は、インプラントの周りに起こる炎症で、骨の吸収を伴います[4]。
上あごで炎症が進むと、上顎洞に影響が及ぶ可能性も考えられます。治療後の毎日の清掃と定期的なメンテナンスで、周囲炎を防ぐことが大切です[5]。
インプラント後に副鼻腔炎が疑われるときの対処法
インプラント後に鼻づまりや膿のような鼻水、頬の痛みが続く場合は、まず治療を受けた歯科医院に相談しましょう。
まずは歯科医院で確認する
歯科医院では、レントゲンやCTなどでインプラントの位置や周囲の状態を確認し、原因を調べます。鼻の病気が関わる場合は、耳鼻咽喉科での診断・治療が必要になることがあります。具体的な受診先は担当の歯科医師にご相談ください。
耳鼻咽喉科での主な治療
副鼻腔炎の治療は、症状や原因に応じて次のような方法を組み合わせます[1]。
| 治療 | 主な内容 |
|---|---|
| 鼻洗浄など | 食塩水で鼻を洗い、分泌物の排出を助ける[1] |
| 点鼻薬 | ステロイドの点鼻薬などで粘膜の炎症を抑える[1] |
| 抗菌薬 | 細菌感染が原因の場合などに使う。慢性の場合は数週間続けることがある[1] |
| 手術 | 薬で改善しない場合に、副鼻腔の排膿や通気の改善を目的に検討する[1] |
インプラントの除去・再治療
インプラントが上顎洞に入り込んでいる場合や、炎症の原因になっている場合は、インプラントを取り除く処置が必要になることがあります[3]。
摘出前には、診察と画像による評価を行い、適切な治療計画を立てることが重要とされています[3]。炎症が治まった後に再治療を検討する場合は、骨や粘膜の回復を確認して新たに計画を立てるため、治療期間が延びることがあります。
副鼻腔炎を起こさないための注意点
インプラント治療による副鼻腔炎のリスクは、事前の検査と計画、術後のケアによって下げることが期待できます。
精密な検査と無理のない治療計画
インプラント治療では、レントゲン撮影などで顎の骨の形や神経の位置を確認し、骨が足りない場合は骨を増やす処置を検討します[6]。
骨や粘膜の状態に合わせて治療計画を立て、内容・期間・リスクについて十分に説明を受け、納得してから進めることが大切です。
鼻の持病は事前に伝える
花粉症や慢性鼻炎、副鼻腔炎にかかったことがある方は、必ず事前に歯科医師へ伝えましょう。鼻の症状が強い時期を避けて手術日を調整するなど、状態に応じた対応を相談できます。
術後のケアと定期メンテナンス
- 処方された抗菌薬や痛み止めは、指示どおりに服用する
- 喫煙はインプラントが長持ちしにくくなる要因のため、禁煙・減煙が望ましい[4]
- 上あごの手術後に強く鼻をかむことは控え、注意点は歯科医師の指示に従う
- 3か月〜半年ごとを目安に定期的なメンテナンスを受ける[5]
インプラント治療について知っておきたいこと
インプラント治療は自由診療で、手術に伴うリスクや治療後の継続的なケアが必要です[4]。
- 標準的な流れ:検査 → むし歯・歯周病の治療 → 必要に応じて骨を増やす処置 → 埋入手術 → 骨との結合を待つ → 人工の歯を装着 → 定期メンテナンス[6]
- 主なリスク:術後の痛み・腫れ・内出血、人工の歯の破損やネジの緩み、インプラント周囲炎など[4]。上あごでは上顎洞への影響もある
- 注意が必要な方:高血圧・心臓の病気・糖尿病・骨粗しょう症などがある方、喫煙者、歯周病がある方[4]
- 費用:原則として健康保険が使えない自由診療です[4]。日本歯科グループの公式サイトでは、インプラント1本あたり15万〜45万円、上あごの骨が特に薄い場合のサイナスリフト(上顎洞底挙上術)は15万円(いずれも税込・公式サイト記載の料金、症例により別途費用あり)と案内しています。詳しくはインプラントのページをご覧ください
まとめ
上あごの奥歯は上顎洞に近いため、インプラント治療の後にまれに副鼻腔炎が起こることがあります。骨を増やす処置での粘膜の損傷、インプラントの上顎洞への迷入、インプラント周囲炎などが原因として考えられます。
インプラント後に鼻づまりや膿のような鼻水、頬の痛みが続く場合は、自己判断せず早めに歯科医院へ相談してください。事前の精密な検査と治療計画、術後のケアと定期メンテナンスがリスクを下げるポイントです。
静岡歯科(静岡市葵区追手町2-15 MRKビル3階、静岡駅から徒歩5分)には、生体モニターや空気清浄システムを備えたインプラント専用の手術室があります。患者さまのご希望とお口の状態をうかがい、一人ひとりに合わせた治療計画をご提案しています。術前の疑問や不安にもお答えしますので、まずはお気軽にご相談ください。
よくある質問
インプラント後に鼻づまりがあれば、必ず副鼻腔炎ですか?
鼻づまりはかぜやアレルギーなどでも起こるため、インプラントが原因とは限りません。膿のような鼻水や頬の痛みが続く場合は、まず治療を受けた歯科医院に相談してください。原因は画像検査などで確認します。
歯科と耳鼻咽喉科、どちらを受診すればよいですか?
インプラント治療の後に症状が出た場合は、まず治療を受けた歯科医院への相談をおすすめします。インプラントの状態を確認し、鼻の治療が必要な場合は耳鼻咽喉科の受診が勧められることがあります。
上あごの骨が薄いとインプラントはできませんか?
上顎洞底挙上術などで骨を増やすことで、治療できる場合があります。ただし、処置が増える分、患者さんの負担や期間も増えます。適応は検査結果をもとに歯科医師が判断します。
花粉症があってもインプラント治療は受けられますか?
花粉症などの鼻の持病があることだけで受けられないわけではありません。症状が強い時期を避けるなど、状態に合わせた対応を相談できますので、事前に歯科医師へお伝えください。