結論:歯周病が重度まで進むと、歯ぐきから膿が出る、歯がぐらつく、噛むと痛い、歯並びが変わるといった症状が現れます[1]。こうした状態でも、治療によって歯を残せる場合はありますが、支える骨が大きく失われた歯は抜歯が必要になることもあります[2]。「手遅れかもしれない」と感じたら、自己判断せず早めに歯科医院で検査を受けてください。
令和4年の歯科疾患実態調査では、4mm以上の歯周ポケット(歯と歯ぐきの間の溝)がある人は47.9%で、年齢が上がるほど増える傾向があります[5]。この記事では、重度の歯周病で見られる症状、受診までにできること、歯を残すための治療法、抜歯後の選択肢を解説します。
歯周病が重度になると現れる主な症状
重度の歯周病では、膿・歯のぐらつき・噛んだときの痛み・強い口臭・歯並びの変化などが見られます[1]。日本歯周病学会は、歯周ポケットの深さが4mm以上になると重症で、歯科での診断と治療が必要としています[1]。
歯ぐきから膿が出る
重度の歯周病では、歯の周りに膿がたまることがあります[1]。ただし、白い膿のように見えても、実際はプラーク(歯垢)だったり、歯の根の先の炎症が原因だったりする場合もあります[1]。見た目で判断せず、歯科で確認してもらいましょう。
歯がぐらつく
炎症が長く続いて歯を支える骨(歯槽骨)が少しずつ溶けると、歯が動きやすくなります[1]。歯のぐらつきの程度は、一般的に次のように分けて評価されます。
| 動揺度 | 状態の目安 |
|---|---|
| 1度 | 前後(唇側・舌側)にわずかに動く |
| 2度 | 前後に加えて左右にも動く |
| 3度 | 前後・左右に加えて上下にも動く |
上下に動くほどの歯は、支える骨の多くが失われていることが多く、残せるかどうかは検査で慎重に判断します。
噛むと痛い・歯ぐきが腫れる
歯を支える組織が壊れると、噛む力に耐えにくくなり、痛みや違和感が出ることがあります。体調を崩したときに慢性の炎症が悪化し、腫れや痛みが出ることもあります[1]。腫れが引いても、歯周病が治ったわけではない点に注意が必要です[1]。
噛んだときの痛みは、むし歯や歯の根の病気、歯のひびなどでも起こります。原因の見極めは歯科医師の診察で行います。
口臭が強くなる
口臭の主な原因の一つは、歯周ポケット内の歯周病菌です[1]。ほかにもお口の清掃状態、のどの炎症、内臓の病気などが関わることがあります[1]。歯みがきや洗口液で一時的に和らいでも、続く場合は歯科で相談しましょう。
歯並びが変わる・隙間ができる
歯を支える骨が減って歯が動くと、歯の位置も変わります[1]。次のような変化が見られることがあります。
- 以前はなかった歯と歯の間の隙間ができる
- 歯ぐきが下がり、歯が長く見える
- 歯が傾いたり、前歯が扇状に開いたりする
- 噛み合わせが変わったように感じる
歯ぐきが下がる原因には、歯周病のほか、誤った歯みがき、噛み合わせ、加齢などもあります[1]。
歯周病に気づきにくい理由
歯周病は初期には自覚症状が少なく、気づいたときには進んでいることがあります。特に喫煙者は、歯ぐきからの出血が抑えられたり歯ぐきが硬くなったりして、症状に気づきにくいとされています[1][3]。
重度の症状が出た場合にすべきこと
最も大切なのは、できるだけ早く歯科医院を受診することです。歯周病は放置すると進行し、残せる歯が減っていきます。
早めに歯科医院を受診する
受診の際は、次のことを伝えると診察の参考になります。
- 症状がいつから始まったか
- 痛みや腫れ、出血・膿の有無
- 歯のぐらつきや噛み合わせの変化
- 普段の歯みがきの回数や方法
- 喫煙の有無、糖尿病などの持病、服用中の薬
受診までのセルフケア
| ケア | ポイント |
|---|---|
| 丁寧な歯みがき | 歯と歯ぐきの境目を、力を入れすぎず磨く |
| デンタルフロス・歯間ブラシ | 歯の間のプラークを落とす。痛みや強い出血があれば無理をしない |
| 洗口液 | 補助として使う。歯みがきの代わりにはならない |
プラークは薬品だけでは取り除きにくく、歯ブラシで落とすことが大切です[3]。ただし、セルフケアだけで重度の歯周病は治りません。歯石は歯根に強くついているため、歯科医師や歯科衛生士でなければ取れません[2]。
重度の歯周病でも検討できる治療法
重度でも、検査の結果によっては歯周外科や再生療法などで歯を残せる可能性があります。治療は段階的に進めます。
まず行うこと:プラークコントロール
治療の中心は、患者さん自身の歯みがきによるプラーク除去です[2]。歯科医院で磨き方の指導を受け、磨き残しを減らしてから、歯石除去などの処置に進むのが一般的です[2]。
スケーリング・ルートプレーニング
スケーリングは歯石を取り除く処置、ルートプレーニングは歯石を取った後の歯根の表面をなめらかに整える処置で、歯周病の基本的な治療です[2]。
- 歯周ポケット内の細菌を減らし、歯ぐきの炎症を抑える
- 処置後、歯根が露出して一時的にしみることがあるが、多くは正しい歯みがきを続けると数か月で落ち着く[2]
歯周外科治療
歯石除去だけで改善しない深いポケットには、歯周外科治療を検討します[2]。歯ぐきを開いて、歯根や骨の表面を直接見ながら清掃する方法(フラップ手術)などがあります。
- 目的:ポケットを浅くする、骨の再生を図る、磨きやすい歯ぐきの形に整える など[2]
- 局所麻酔で行い、所要時間は治療する歯の本数にもよりますが約1〜2時間、入院は不要とされています[2]
- 約1週間後に抜糸し、その後1〜数か月かけて経過を観察します[2]
歯周組織再生療法
歯周病で失われた骨などを再生させる治療です。主に、骨がくさび状に溶けた中等度の歯周病が対象で、適応となるケースは限られます[2]。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な方法 | 膜を使って組織の再生を促す方法(GTR法)、歯周組織再生用の薬剤を使う方法、骨移植 など |
| 期待できること | 適切に行われると、歯ぐきの付着の回復に加えて、失った骨の9割〜半分程度の回復が期待できるとされます。ただし年齢、体力、免疫力、歯みがきの状態で結果は大きく変わります[2] |
| 期間 | 骨が完全に成熟するまで2年以上かかり、その間の徹底した歯みがきとメンテナンスが重要です[2] |
| 保険 | GTR法の一部と、歯周組織再生用の医薬品を使う方法は保険適用。それ以外は自由診療です[2] |
再生療法を受けられるかどうかや自由診療となる場合の費用は、詳しくは各院にお問い合わせください。主なリスクとして、術後の腫れや痛み、期待したほど再生しないことなどがあります。
抜歯が必要と判断される場合
支える骨が大きく失われた歯は、治療後もぐらつきが残り、しっかり噛めなかったり自然に抜けたりすることがあります[2]。保存が難しい歯を無理に残すと、隣の歯の骨に悪影響が出たり、抜歯後の骨の形が悪くなってインプラントや入れ歯に不利になったりすることもあります[2]。このため、歯科医師が抜歯を勧める場合があります。
歯を残せるかどうか確認したい場合は、歯周病専門医に相談する方法もあります[2]。
抜歯後の選択肢
抜歯後は、インプラント、ブリッジ、部分入れ歯などで失った歯を補います。
| 方法 | 特徴 | 主な注意点 |
|---|---|---|
| インプラント | あごの骨に人工歯根を埋め、その上に歯を取り付ける。両隣の歯を削らない | 手術が必要。通常は自由診療[6] |
| ブリッジ | 両隣の歯を支えにして橋渡しする固定式の歯 | 両隣の歯を削る必要がある |
| 部分入れ歯 | 取り外し式。手術が不要 | 違和感や、留め具をかける歯への負担がある |
インプラントを検討する場合に知っておきたいこと
- 治療期間:人工歯根と骨が結合するまで、下顎で約2〜3か月、上顎で約4〜6か月が目安。骨を増やす処置が必要な場合はさらに延びます[6]。
- 歯周病との関係:歯周病はインプラントの寿命を縮めることが知られているため、先に歯周病の治療を行います[6]。歯周病で骨が減っている場合は、骨を増やす手術が必要になることがあります[6]。
- 主なリスク:手術後の痛み・腫れ・内出血、インプラント周囲炎、部品の破損や緩みなど[6]。
- 費用:通常は健康保険が適用されない自由診療です[6]。日本歯科グループの公式サイトでは、インプラント1本あたりの費用は、ストローマン(10年保証)35万〜45万円、ネオデント(5年保証)25万〜35万円、バイオテム(1年保証)15万〜25万円(上部構造の材質により異なり、レントゲン・CTスキャン・手術代を含む)と掲載されています(税込・公式サイト記載の料金、症例により別途費用あり)。詳しくは日本歯科グループのインプラント治療ページをご覧ください。
- 治療後:定期的なメンテナンスと毎日の清掃が欠かせません[6]。
歯周病の進行を防ぐための予防策
予防の柱は、毎日のプラーク除去、歯科医院での定期的なメンテナンス、喫煙や糖尿病などのリスクを減らすことの3つです。
毎日のセルフケア
- 歯と歯ぐきの境目を意識した丁寧な歯みがき(特に就寝前)
- 歯間ブラシやフロスによる歯の間の清掃
- かぶせ物や詰め物がある歯は、特に丁寧に磨く[2]
定期的なメンテナンス
歯石の除去は一般的に年3〜4回が目安とされますが、歯石のつきやすさには個人差があります[2]。受診の間隔は、かかりつけの歯科医師と相談して決めましょう[2]。
| 主な検査 | 目的 |
|---|---|
| 歯周ポケットの測定 | 歯と歯ぐきの間の溝の深さから進行度を評価する |
| 出血の確認 | 歯ぐきの炎症の有無を確認する |
| 歯の動揺度の確認 | 歯を支える組織の状態を評価する |
| X線検査 | 歯を支える骨の量を確認する |
生活習慣の見直し
- 禁煙:喫煙者は歯周病になりやすく悪化しやすいうえ、治療の効果も出にくいとされています。禁煙は進行した歯周病でも治療結果の改善につながります[4]。
- 糖尿病の管理:糖尿病は歯周病を悪化させる大きな原因の一つです[3]。
- 食生活:粘着性の高い食べ物や糖分の多い食べ物は、プラークや細菌の活動を助けます[3]。
- 歯ぎしり・食いしばり:直接の原因ではありませんが、症状を悪化させることがあります[3]。
まとめ
歯周病が重度になると、膿、歯のぐらつき、噛んだときの痛み、歯並びの変化などが現れます。「手遅れ」と感じる状態でも、検査の結果によっては歯周外科や再生療法で歯を残せる場合がありますが、保存が難しい歯は抜歯を勧められることもあります。気になる症状があれば早めに受診し、治療後も毎日のケアと定期的なメンテナンスを続けることが大切です。
静岡歯科(静岡市葵区追手町2-15 MRKビル3階、JR静岡駅から徒歩5分)では、歯周病治療を保険診療で行っており、抜歯後の治療としてインプラントの初回相談(0円)も受け付けています。治療内容や費用は事前にご説明しますので、詳しくは静岡歯科のクリニック紹介をご覧のうえ、お気軽にご相談ください。
よくある質問
歯がぐらぐらしていても歯周病の治療で残せますか?
ぐらつきの程度や、歯を支える骨がどれだけ残っているかによります。検査の結果、歯周外科や再生療法などで残せる場合もあります。一方、骨が大きく失われた歯は、治療後もぐらつきが残るため抜歯を勧められることがあります[2]。
歯ぐきの腫れが引いたら治ったと考えてよいですか?
腫れが引いても、歯周病が治ったわけではありません[1]。体調によって慢性の炎症が悪化と改善を繰り返すことがあります。歯科医院で歯周ポケットの深さや骨の状態を確認してもらいましょう。
歯周病の再生療法は誰でも受けられますか?
主に、骨がくさび状に溶けた中等度の歯周病が対象で、適応となるケースは限られます[2]。結果は年齢や体力、歯みがきの状態でも変わります。一部は保険適用、それ以外は自由診療です[2]。
タバコは歯周病にどのくらい影響しますか?
喫煙者は歯周病になりやすく、悪化しやすく、治療の効果も出にくいとされています[4]。また出血が抑えられて症状に気づきにくくなります[3]。禁煙は進行した歯周病でも治療結果の改善につながるとされています[4]。
歯周病の定期検診はどのくらいの間隔で受ければよいですか?
歯石除去は年3〜4回が一般的な目安とされますが、歯石のつきやすさには個人差があります[2]。お口の状態に合わせて、かかりつけの歯科医師と相談して間隔を決めましょう。