結論:歯の欠損(歯がない状態)には、生まれつき歯がない「先天的欠損」と、虫歯・歯周病・けがなどで失う「後天的欠損」があります。放置すると噛みにくさだけでなく、周りの歯や噛み合わせにも影響が及ぶことがあります。インプラントは、隣の歯を削らずに固定式の歯を補える治療法の一つで、ブリッジや入れ歯と比べて選ぶのが基本です[1]。
この記事では、歯の欠損の原因と影響、インプラント治療の仕組み・流れ・リスク、ほかの治療法との違いを、日本歯科札幌の院長が患者さん目線で解説します。
歯の欠損とは?先天的欠損と後天的欠損の違い
歯の欠損とは、お口の中で1本以上の歯が失われている状態のことで、原因によって「先天的」と「後天的」の2つに分けられます。
歯は食べ物を噛むだけでなく、発音を助け、口元の形を支える役割も担っています。どちらのタイプかによって対処法が変わるため、まずは違いを知っておきましょう。
| 種類 | どんな状態か | 主な原因 |
|---|---|---|
| 先天的欠損(先天性欠如歯) | 永久歯のもと(歯胚)がつくられず、生えてこない | 遺伝的な要因など |
| 後天的欠損 | 生えた歯を後から失う | 歯周病、虫歯、歯の破折(割れ)、けがなど |
先天的な歯の欠損は珍しくない
日本小児歯科学会の全国調査では、親知らずを除く永久歯の先天性欠如は、調べた子どもの約10%に見られました[5]。
- 最も多かったのは下あごの第二小臼歯(奥から数えて小さい歯の2本目)
- 次いで下あごの側切歯、上あごの第二小臼歯、上あごの側切歯の順
- 上あごより下あごに多い傾向
乳歯がなかなか抜けない、永久歯が生えてこないといった場合は、レントゲンなどの検査で確認できます。自己判断せず、歯科医師にご相談ください。
後天的な歯の欠損の多くは予防できる
後から歯を失う原因の多くは歯周病と虫歯で、日々のケアと定期的な受診で予防できる部分が大きいのが特徴です。
早い段階で治療を受ければ、歯を残せる可能性も高まります。
歯を失う主な原因は歯周病と虫歯
8020推進財団の全国調査では、永久歯を抜歯した原因は歯周病が約42%、虫歯が約32%、歯の破折が約11%でした[6]。
- 歯周病:歯ぐきや歯を支える骨が壊れていく病気。30〜50代で抜歯原因に占める割合が大きくなります[6]。
- 虫歯:進行して歯の根まで傷むと、残せなくなることがあります。
- 歯の破折:20〜40代に比較的多くみられます[6]。神経を取った歯や、歯ぎしり・食いしばりで強い力がかかる歯は割れやすくなります。
- けが:転倒やスポーツなどで前歯をぶつけて失うことがあります。
歯科医師に相談するときは、いつ・どのような経緯で歯を失ったかを伝えると、治療計画を立てやすくなります。
年齢と歯の本数の関係
年齢を重ねるほど歯を失うリスクは高まりますが、予防によって多くの歯を保つ方は増えています。
「8020運動」(80歳で20本以上の歯を保つことを目指す運動)の達成者は、厚生労働省の令和4年歯科疾患実態調査で51.6%と推計されています[7]。年齢にかかわらず、適切なケアと定期的な受診で歯を長く保つことは十分に目指せます。
歯の欠損を放置するとどうなる?
歯の欠損を放置すると、噛む力の低下に加え、周りの歯の移動や噛み合わせの乱れなど、時間とともに影響が広がることがあります。
噛みにくさと食生活への影響
特に奥歯を失うと噛む効率が下がり、硬いものや繊維の多いものを避けがちになります。
やわらかい食品に偏ると、たんぱく質や食物繊維、ビタミンなどが不足しやすくなります。よく噛めないことで、胃腸に負担がかかることもあります。
見た目・発音・気持ちへの影響
前歯の欠損は口元の見た目や発音に影響し、人前で笑うことをためらう原因にもなります。
見た目の悩みは、会話や外出など日常生活の積極性にも関わります。気になる方は早めにご相談ください。
周りの歯と顎の骨への影響
歯がない部分ができると、両隣の歯が傾いたり、噛み合う歯が伸びてきたりして、噛み合わせが崩れることがあります。
- 残った歯に負担が集中し、さらに歯を失うきっかけになることがある
- 歯がなくなった部分の顎の骨は、噛む刺激が伝わらず徐々にやせていくことがある
- 骨が大きくやせると、後からインプラントを入れる際に骨を補う処置(骨造成)が必要になる場合がある[2]
インプラント治療とは?仕組みとメリット・デメリット
インプラント治療とは、歯を失った部分の顎の骨に人工歯根(インプラント体)を埋め込み、その上に人工の歯を取り付ける治療法です[2]。
骨と結合して固定されるため、取り外しの手間がなく、しっかり噛める点が特長です。一方で手術が必要で、治療期間が長く費用も高額になりやすいなどの注意点もあります[2]。
インプラントの3つの構造
インプラントは、次の3つの部品で構成されています[2]。
- インプラント体(フィクスチャー):顎の骨に埋める人工歯根。主にチタンまたはチタン合金製で、骨と結合しやすいよう表面が加工されたものが多く使われています[2]。
- アバットメント:インプラント体と人工歯をつなぐ部品。
- 上部構造(人工歯):見た目と噛む機能を担う部分。セラミックやジルコニアなどが用いられます。
メリットとデメリット
インプラントの主なメリットは、隣の歯を削らずに固定式の歯を補えることです[1][2]。
| メリット | デメリット・注意点 |
|---|---|
| 隣の健康な歯を削る必要がない[1] | 外科手術が必要で、全身状態によっては受けられない[2] |
| 取り外しの手間や口の中の違和感が少ない[1] | 治療期間が長めで、自由診療のため費用が高額になりやすい[1][2] |
| 残っている歯への負担が少ない[1] | 歯ぐきとの結合が弱く、細菌感染に弱い[2] |
| しっかり固定され、噛む力を発揮しやすい[2] | 骨が不足していると骨造成が必要になることがある[2] |
インプラント治療の流れ
インプラント治療は、検査から人工歯の装着、メンテナンスまで段階を追って進めます[3]。
- 相談・検査:お悩みや全身の状態をうかがい、口の中の検査、レントゲン撮影、必要に応じてCT撮影や血液検査を行います[2][3]。
- 前処置:必要に応じて抜歯、歯周病治療、虫歯治療を先に済ませます。骨が足りない場合は骨を補う処置を行うことがあります[3]。
- 埋入手術:麻酔をしたうえで歯ぐきを切開し、顎の骨にインプラント体を埋め込みます[3]。
- 治癒期間:インプラントと骨が結合するのを待ちます。目安は下あごで2〜3か月、上あごで4〜6か月程度とされています[2]。
- 人工歯の装着:仮歯で見た目や噛み心地を確認・調整し、最終的な人工歯を装着します[3]。
- メンテナンス:毎日のセルフケアと定期的な歯科医院でのチェックを続けます[3][4]。
治療期間・回数・費用の目安
治療期間は骨の状態や骨造成の有無などによって大きく異なり、数か月から、複雑な場合は1年以上かかることもあります[2]。
- 標準的な期間:骨との結合を待つ期間を含め、数か月以上が一般的です。
- 通院回数:検査、手術、経過観察、型取り、装着など複数回の通院が必要です。
- 費用:インプラント治療は通常、保険適用外の自由診療です。外傷や腫瘍による顎の骨の欠損、先天的な欠損など一部の症例では保険が適用される場合があります[2]。
日本歯科札幌を含む日本歯科グループのインプラント1本あたりの費用は、バイオテムインプラント15万円〜(1年保証)、ネオデントインプラント25万円〜(5年保証)、ストローマンインプラント35万円〜(10年保証)です(上部構造が銀・プラスチックの場合。税込・公式サイト記載の料金、症例により別途費用あり)。レントゲン・CTスキャン・手術代が含まれ、骨造成や静脈麻酔などが必要な場合は別途費用がかかります。初回の相談料は0円です。詳しくはインプラントのページをご覧ください。
手術後は腫れや内出血が出ることがありますが、次第に引いていきます。痛みは処方された鎮痛薬で対応でき、多くは数回の服用で治まるとされています[2]。
主なリスク・副作用
インプラントには、手術や長期使用にともなうリスクがあることも知っておきましょう[2][8]。
- 術後の痛み・腫れ・内出血[2]
- 周囲の組織や神経の損傷による、しびれなどの症状[8]
- ネジのゆるみ、人工歯の破損や脱離[2][8]
- インプラント周囲炎(インプラントの周りの歯ぐきや骨が炎症で壊れる病気)。進行するとインプラントを失うおそれがある[2]
インプラントに向いている方・注意が必要な方
インプラントは多くの欠損に対応できますが、骨の量、お口の衛生状態、全身の健康状態を確認したうえで適否を判断します[2]。
- 顎の骨の成長が終わっていることが前提です。
- 高血圧、心疾患、ぜんそく、糖尿病、骨粗しょう症、腎臓・肝臓の病気がある方や、服薬中の方は注意が必要です[2]。
- 歯周病や喫煙はインプラントの残存率を下げることが知られています。歯周病は先に治療し、喫煙される方には禁煙または減煙が勧められています[2]。
- 喫煙は傷の治りを遅らせ、長期的な結果にも影響するとされています[8]。
ご自身が適しているかどうかは、検査と歯科医師の診察で判断します。
インプラントとブリッジ・入れ歯の比較
歯を補う方法にはインプラントのほか、ブリッジ、入れ歯(部分入れ歯・総入れ歯)があり、どれが適しているかはお口の状態やご希望によって異なります[1]。
| 治療法 | 主な利点 | 主な欠点 |
|---|---|---|
| インプラント | 隣の歯を削らない。取り外し不要で違和感が少ない[1] | 手術が必要。自由診療で費用が高額、期間が長め[1] |
| ブリッジ | 固定式で比較的短期間。保険適用内なら比較的安価。噛んだ感触が自分の歯に近い[1] | 両隣の歯を多く削る。支える歯の負担が大きい[1] |
| 入れ歯 | 保険適用内なら比較的安価で、治療期間も比較的短い[1] | 取り外しの手間。噛む力が弱い。バネをかける歯に負担[1] |
ブリッジとの違い
ブリッジは、失った歯の両隣の歯を削って支えにし、橋のように人工歯をつなげて固定する方法です。
固定式で治療期間が比較的短い一方、健康な歯を削る必要があり、支えの歯に負担がかかります[1]。ブリッジの下は清掃しにくいため、虫歯や歯周病の予防に一層の注意が必要です。
部分入れ歯との違い
部分入れ歯は、残っている歯にバネをかけて支える、取り外し式の装置です。
手術が不要で、骨の量が少ない方や全身疾患で手術が難しい方にも対応できます。部分入れ歯はバネのかかる歯と歯ぐきで力を分担するため、合わなくなっても裏打ち(内側の調整)で対応しやすいという特徴もあります[9]。一方で、取り外して洗う手間や、装着時の違和感があります[1]。
総入れ歯との違い
総入れ歯は、上あごまたは下あごのすべての歯を失った場合に使う取り外し式の入れ歯です。
手術が不要で身体の負担が少ない一方、特に下あごでは安定しにくく、硬いものが噛みにくいと感じる方もいます。少数のインプラントで入れ歯を安定させる「インプラントオーバーデンチャー」という方法もあります[2]。
まとめ:歯を失ったら早めに相談を
歯の欠損は、生まれつきの場合も後から失った場合も、放置すると噛み合わせや周りの歯に影響が広がることがあります。
- 後から歯を失う主な原因は歯周病と虫歯で、予防と早期治療が大切です。
- インプラントは隣の歯を削らずに固定式の歯を補える方法ですが、手術・期間・費用・リスクを理解して選ぶことが重要です。
- ブリッジや入れ歯にもそれぞれ利点があり、歯科医師と相談して選びましょう。
- どの治療でも、治療後の毎日のケアと定期的なメンテナンスが長持ちの鍵です[4]。
日本歯科札幌では、患者さまのご希望をうかがいながら、一人ひとりのお口の状態に合わせて、インプラントだけでなくブリッジや入れ歯も含めた治療方法をご提案しています。院長が責任を持って診療し、術前の疑問やご不安にも丁寧にお答えします。まずはお気軽にご相談ください。
よくある質問
歯が1本抜けたままでも、すぐに困らなければ放置してよいですか?
見た目や食事に支障を感じなくても、両隣の歯が傾いたり、噛み合う歯が伸びてきたりして噛み合わせが変わることがあります。残った歯に負担が集中する点も心配です。早めに歯科医師に相談し、治療が必要かどうか診察で判断してもらいましょう。
インプラントは何歳まで受けられますか?
顎の骨の成長が終わっていることが前提で、高齢であることだけを理由に受けられないわけではありません。ただし手術を伴うため、高血圧・糖尿病・骨粗しょう症などの持病や服薬の状況を確認したうえで適否を判断します[2]。
インプラントは保険で受けられますか?
通常は保険適用外の自由診療です。外傷や腫瘍による顎の骨の欠損、先天的な欠損など、一部の条件では保険が適用される場合があります[2]。日本歯科グループの自由診療のインプラント費用は、1本15万円〜(税込・公式サイト記載の料金、症例により別途費用あり)で、インプラントの種類と上部構造の材質によって異なります。
インプラント・ブリッジ・入れ歯はどれを選べばよいですか?
それぞれに利点と欠点があり、お口の状態や全身の健康状態、ご希望によって適した方法は変わります[1][2]。歯科医師の説明を聞き、納得したうえで選ぶことが大切です。
インプラント治療後に気をつけることは?
インプラントは歯ぐきとの結合が弱く、細菌感染に弱い面があります[2]。毎日の丁寧な歯みがきに加え、一般的に3か月〜半年ごとの定期メンテナンスが勧められています[4]。
参考情報
- 公益社団法人日本口腔インプラント学会「入れ歯やブリッジとの違いは」
- 公益社団法人日本口腔インプラント学会「よくあるご質問」
- 公益社団法人日本口腔インプラント学会「相談から治療の流れ」
- 公益社団法人日本口腔インプラント学会「インプラントのお手入れ」
- 日本小児歯科学会 学術委員会「日本人小児の永久歯先天性欠如に関する疫学調査」小児歯科学雑誌 48巻1号(2010)
- 財団法人8020推進財団「永久歯の抜歯原因調査 報告書」(2005)
- 厚生労働省「令和4年歯科疾患実態調査」結果の概要
- U.S. Food and Drug Administration「Dental Implants: What You Should Know」
- 日本歯科医師会 テーマパーク8020「入れ歯」