先天性欠如歯とは、生まれつき歯の本数が足りない状態を指します。近年、この先天性欠如歯をもつ子供が増えているといわれており、歯並びや噛み合わせへの影響を心配される親御さんも多いのではないでしょうか。
先天性欠如歯は本人も保護者も気づかずに見過ごされることもありますが、実は放置していると歯や顎、さらには全身の健康にも影響を及ぼす可能性があります。
先天性欠如歯とは?
先天性欠如歯とは、本来生えるはずの乳歯や永久歯の数が生まれつき不足している状態のことです。乳歯の数は通常20本、永久歯は親知らずを除くと28本ありますが、先天性欠如歯の子供の場合、これらがもともと揃わずに成長していきます。特に永久歯の先天的な欠如は、大人になっても乳歯が残ったままになる場合があるため、以下のようなリスクが考えられます。
- 乳歯が長期間残ることで虫歯や歯周病のリスクが高まる
- 隣の歯が傾きやすく、歯並びが乱れやすい
- 噛み合わせに不調和が生じ、顎関節や発音に影響が出る
特に歯並びや噛み合わせへ悪影響をもたらす可能性がある点に注意が必要です。子供は顎の成長途中にあるため、欠如している箇所を放置すると、全体の歯列や顎の骨格形成にも関わってきます。
先天性欠如歯が起こる原因
先天性欠如歯のはっきりとした原因は解明されていませんが、いくつか考えられている要因があります。
主な原因
先天性欠如歯の原因として有力視されているのは、遺伝的要因や妊娠中の栄養不足、感染症、薬の影響、全身疾患などです。顎のサイズの変化によって、歯が生えるスペースが足りなくなることも一因と考えられています。しかし、どの要因がどの程度影響しているのかは明確にはわかっていません。そのため、先天性欠如歯の予防は実質的に難しいとされています。
好発部位
先天性欠如歯はどの歯にも起こりえますが、特に以下の部位に多いといわれています。
- 乳歯:上顎の前歯(2番目の切歯)
- 永久歯:上下の第三臼歯(親知らず)・上顎の切歯(2番目)・上下顎の第二小臼歯(5番目)・下顎の切歯(1番目)
個人差が大きく、1~2本の欠如で済む場合もあれば、稀に10本以上欠如している場合もあります。また、欠如歯が多いほど歯並びや噛み合わせに大きな影響を及ぼしやすいとされています。
先天性欠如歯を放置するリスク
先天性欠如歯を放置すると、口内だけでなく、顎や身体全体への影響が懸念されます。特に乳歯しか生えていない箇所は、永久歯ほど長い年月を耐えられないため、いずれは抜け落ちてしまう可能性が高いです。抜けた歯を放置すると、隣の歯が傾斜したり、反対側の歯が伸びてくるといった問題が起こり、結果的に噛み合わせがずれてしまいます。
また、歯並びの乱れから磨き残しが増え、むし歯や歯周病リスクが高まることも懸念されます。子供のうちから歯並びを乱したままにしておくと、将来的に咀嚼機能や顎関節への負担が大きくなり、頭痛や肩こりといった全身症状にもつながる恐れがあります。お子さんの将来の口腔機能を守るためにも早めに専門家に相談することがおすすめです。
先天性欠如歯の子供に行われる矯正治療
欠如歯がある子供に対して矯正治療を行う目的は、歯並びの改善や噛み合わせの調整だけではありません。将来的に欠如部位を補綴(ブリッジやインプラントなど)する際も、歯並びが整っている方が安全かつスムーズに治療できるため、計画的に矯正と補綴を組み合わせることが重要です。具体的には、以下のようなメリットがあります。
- 抜歯が必要な場合でも、欠如部位を利用できるため正常な歯を温存しやすい
- 隙間を効率的に閉じることで、ブリッジやインプラントの適合が向上する
- 顎の成長を考慮しながら歯を正しい位置に誘導できる
子供の場合は成長を見据えて治療方針を立てるため、成人よりも矯正の自由度が高いことが特徴です。自己管理が難しい年齢だと、装置の扱いに親御さんのサポートが必要となります。
先天性欠如歯の矯正費用
先天性欠如歯を含む矯正治療は、基本的に自由診療になります。ただし、欠如歯の本数が6本以上ある場合には健康保険が適用される可能性があります。保険適用される場合、指定された医療機関でのみ治療が認められますので、事前に歯科医院や矯正歯科で確認をしましょう。また、保険適用外の装置や治療法を選択すると、別途自費分が発生することもあります。
ワイヤー矯正の費用目安
ワイヤー矯正は、ブラケット(歯に取り付ける小さな装置)とワイヤーを使い、歯を段階的に動かすオーソドックスな方法です。比較的幅広い症例に対応できるため、先天性欠如歯の子供にもよく選択されます。費用の目安としては、子供の場合でも総額40~80万円程度かかる場合が多いです(クリニックや症例の難易度により変動あり)。
マウスピース矯正の費用目安
マウスピース矯正は、透明のマウスピース型装置を装着して歯並びを整える治療方法です。歯の移動が少しで済む場合に向いていて、取り外しが可能で目立ちにくいメリットがあります。先天性欠如歯の部位が複数ある場合は、ワイヤー矯正や補綴治療と組み合わせて行うこともあります。費用目安としては、子供の場合でも総額60~100万円程度とされることが多いでしょう。
矯正方法 | 費用目安(子供) |
---|---|
ワイヤー矯正 | 約40~80万円 |
マウスピース矯正 | 約60~100万円 |
これらはあくまで一般的な相場です。実際の費用は、歯科医院の料金設定や、欠如している歯の数・位置などにより大きく変動します。治療を始める前に複数の歯科医院でカウンセリングを受け、総額の見積りを比較すると安心です。
矯正以外の治療方法
先天性欠如歯があるからといって、必ずしも矯正だけで全てを解決できるわけではありません。足りない歯を補う「補綴治療」が必要になることも多く、矯正治療との併用で適切な噛み合わせや機能を獲得することを目指します。
ブリッジ
ブリッジは、欠如した歯の両隣の歯を削って支柱とし、そこに人工歯を架け渡す治療法です。セメントで固定するので安定性が高く、見た目も自然に仕上がりますが、健康な歯を削るデメリットがあるため注意が必要です。
インプラント
インプラントは、顎の骨に人工の歯根(ネジ)を埋め込んで、その上から人工歯を被せる治療法です。他の歯を削る必要がなく、機能的にも見た目にも優れていますが、顎の骨の十分な成長が必要なので、16歳前後まで待つことが一般的です。また、全身の健康状態や顎の骨量によっては適用できない場合もあります。
治療を始めるタイミング
先天性欠如歯が判明したら、できるだけ早めに歯科医院や矯正歯科へ相談しましょう。特に子供の成長期は顎が大きく変化する時期でもあるため、このタイミングをうまく利用することで、より効率的な矯正治療が期待できます。
歯科医院を選ぶ際は、先天性欠如歯の治療実績が豊富かどうか、矯正だけでなく補綴治療など幅広い選択肢を提示してくれるか、といった点を確認するとよいでしょう。また、治療方針や費用面については、複数の医院でカウンセリングを受けると安心です。事前にしっかりと質問し、納得した上で治療を始めることが大切になります。
まとめ
先天性欠如歯は珍しいものではなく、子供の中でも一定の割合で見られる症状です。放置すれば歯並びや噛み合わせに影響が出る可能性が高く、将来的にさまざまな口腔内・全身のトラブルにつながる可能性もあります。適切な時期に矯正治療や補綴治療を組み合わせることで、お子さんが成長してからも健康な歯と噛み合わせを維持しやすくなります。
お子さんが先天性欠如歯と診断されたら、ぜひ早めに歯科医や矯正歯科に足を運んでみてください。正しい知識と専門家のアドバイスを得ることが、お子さんの将来の健康的な口腔環境を守る第一歩となるでしょう。
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