矯正費用の返金不可と言われたら?トラブル時の対処法と確認ポイント
綺麗な歯並びを目指して歯列矯正を始めたものの、引っ越しや転勤、あるいは何らかの事情で治療を断念せざるを得ないことも珍しくありません。そんなとき、一度支払った矯正費用を返金してもらえるのかは大きな疑問でしょう。また、矯正治療が思うように進まず、結果的に治療が失敗したと感じる場合に「返金はできない」と言われる場合もあります。
矯正費用が返金されない理由
歯列矯正は、ワイヤー矯正やマウスピース矯正などの装置を用いて歯並びを整える治療です。長期にわたる治療であるため、費用も高額になりがちですが、治療途中や完了後に「返金できない」と言われることも少なくありません。返金不可と言われたら、まずは以下のような理由を把握しておくことが大切です。
医師の指示を守らなかった場合
矯正費用が返金されない理由としてもっとも多いのは、患者側に過失がある場合です。例えば、マウスピース矯正では、決められた時間きちんと装着しないと歯が計画通りに動きません。また、ワイヤー矯正でも、医師に指示された来院スケジュールを守らなかったり、装置の取り扱いを誤ったりすると治療に支障をきたします。
こうした理由で治療効果が得られなかった場合、矯正費用が返金されない可能性をしっかり理解する必要があります。矯正治療は歯科医師の指示に患者が協力してはじめて成立する治療です。医師側の明らかなミスではなく、あくまでも患者側の問題で治療が上手くいかなかった場合は返金が難しくなります。
契約内容で返金を認めていない場合
矯正費用の返金は、契約内容を事前に確認しトラブルを未然に防ぐことが大切です。多くの歯科医院は契約書や同意書などに「返金ポリシー」を明記しています。患者が契約内容に同意した時点で、そのルールを了承したことになるため、後から「返金ができないなんて聞いていない」という主張は通りにくいのです。
特に、矯正治療の最終的なゴールに対して「必ず理想の歯並びになる」といった結果保証を明示していないクリニックも多く、その場合「仕上がりに対する結果責任」を歯科医が負わずに済む可能性があります。そのため、契約書をしっかりと読み込み、返金に関する文言を把握しておくことが重要です。
矯正費用が返金される場合
「絶対に返金は不可能」というわけではなく、ある条件を満たす場合には返金対応が行われる可能性があります。
医療ミスの場合
医師側の明らかなミス(医療過誤)が原因で矯正治療が失敗した場合には、返金請求が認められる場合があります。例えば以下のような場合です。
- 必要な抜歯を怠った結果、歯並びに重大な不具合が生じた
- 不必要な抜歯を行ったことで歯列や咬み合わせに悪影響が出た
- 診断や検査が極端に不十分で、明らかに治療計画に誤りがあった
このように、歯科医師側の不法行為が認められる場合は、矯正費用の一部または全額が返金される可能性があります。ただし、医療ミスかどうかの判断は素人には難しく、実際には専門家の意見や証拠が必要になる場合も多いでしょう。
中途解約の場合
矯正治療は、法律上「準委任契約」と位置付けられています。これは、患者が「いつでも治療を中止(解約)できる」代わりに、歯科医師側には「治療の結果に対する責任は負わない」という形態です。したがって、途中で矯正治療をやめる場合には、それまでに受けた治療に対する費用を差し引いた上で、未施術分の費用を返金してもらうことが可能とされています。
しかし、どの程度が「未施術の範囲」に当たるのかは曖昧になりやすいのが現状です。途中解約が発生しても、矯正装置の作成費や検査費用などは、すでにサービスが提供されたものとして扱われることが多いため、その分は返金対象外になる場合が多いでしょう。
実際に返金される金額は、治療の進捗状況によって異なります。例えば、日本臨床矯正歯科医会では、永久歯列期のマルチブラケット治療を例に、以下のような返金率の目安を示しています。
治療工程 | 返金率の目安 |
---|---|
全歯の整列 | 60~70%程度 |
犬歯の移動 | 40~60%程度 |
前歯の空隙閉鎖 | 30~40%程度 |
仕上げ | 20~30%程度 |
保定 | 0~5%程度 |
これはあくまで一例であり、実際の返金率は各クリニックのポリシーや治療方針によって異なります。返金トラブルを回避するためには、患者と医師の間で納得いくまで話し合うことが基本です。
返金トラブルを未然に防ぐためのポイント
矯正費用の返金トラブルは、実際に起きてしまうと精神的・時間的な負担が大きくなります。そこで、トラブルを未然に防ぐためのポイントを3つご紹介します。
契約書をよく読む
まず大切なのは、治療前に交わす契約書(または同意書)を入念に確認することです。矯正治療のゴールや費用、返金に関するポリシー、途中解約の条件などが記載されています。書面の内容を把握せずに治療を始めると後々トラブルになる可能性が高いので、必ず署名や捺印をする前に疑問点をクリアにしましょう。
疑問点や不安を積極的に質問する
歯科医師の説明だけでは理解しきれない部分があれば、その都度質問することが重要です。ワイヤー矯正、マウスピース矯正など、種類によっては費用や治療期間も異なります。さらに装置の特徴や注意点についても、不安をそのままにしないようにしましょう。納得できない状態で治療を進めることが大きなトラブルの元になります。
定期的なコミュニケーションで問題を早期解決
矯正治療には長期間がかかるため、歯科医師とのコミュニケーションは定期的かつ継続的に行う必要があります。検診や調整などの通院時に、歯並びの変化や痛みの度合い、装置の違和感などをこまめに共有し、早期に問題点を解決していく姿勢が大切です。
また、途中解約の可能性が出てきた場合には、できるだけ早めに相談し、治療をどこまで進めるか、費用がどの程度発生するかを確認しておくと、返金トラブルのリスクを減らせるでしょう。
まとめ
矯正治療をはじめたものの、引っ越しや転勤、出産、あるいは精神的な理由などで継続が難しくなることも少なくありません。治療を中断するとしても、法律的には「すでに完了している治療費は返金しなくてよい」仕組みになっているため、全額返金は難しい場合が多いと言えるでしょう。ただし、完了していない治療部分に関しては返金される可能性がありますので、まずはクリニックに相談することが大切です。
医師による明らかな医療ミスがあった場合や、準委任契約の性質上、中途解約を行う場合は、返金請求が認められる場合もあります。まずはクリニックとの話し合いで十分に交渉し、それでも解決が難しい場合は第三者機関や専門家に相談してみましょう。契約内容の理解や定期的なコミュニケーションを怠らず、疑問や不安は早期に解消することで、返金トラブルを未然に防ぐことができます。
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