過蓋咬合の矯正は保険適用できる?深い噛み合わせ治療の条件と費用
「過蓋咬合の矯正治療に保険が適用できるのか?」気になる方も多いのではないでしょうか。深く噛み合う前歯の状態は見た目だけでなく機能面の問題も引き起こすため、治療を検討される方は多いです。
この記事では、過蓋咬合の矯正治療における保険適用条件や治療費用、治療方法について詳しく解説します。
過蓋咬合(深い噛み合わせ)とは
過蓋咬合とは、上の前歯が下の前歯を深く覆いかぶさる状態を指します。正常な咬合では上の前歯が下の前歯を1〜2mm程度覆う程度ですが、過蓋咬合では3mm以上、時には下の前歯が完全に隠れてしまうほど深く被さることがあります。
放置すると顎関節症や歯の過度な摩耗、歯周病リスクの上昇など、口腔内の健康に様々な悪影響をもたらす可能性がある深刻な不正咬合です。
過蓋咬合の主な症状
過蓋咬合には以下のような症状があります。
- 下の前歯が上の前歯に当たって痛みを感じる
- 上の前歯が見えすぎる(ガミースマイル)
- 噛み合わせが不安定で咀嚼効率が悪い
- 前歯の過度な摩耗
- 顎関節に負担がかかりやすい
過蓋咬合の矯正治療に保険は適用される?
過蓋咬合の矯正治療において、保険適用されるかどうかは症状の程度や原因によって異なります。
保険適用となる主な条件
基本的に、以下のような条件に当てはまる場合は保険適用の可能性があります。
- 厚生労働省が定めた先天性疾患に起因する場合
- 外科的処置を必要とする顎変形症と診断された場合
- 重度の過蓋咬合で、明らかな機能障害が認められる場合
2022年4月からの診療報酬改定により、一部の過蓋咬合については保険適用の範囲が拡大され、以前よりも保険診療で矯正治療を受けられる可能性が高くなっています。
保険適用される具体的なケース
症状・状態 | 保険適用 | 備考 |
---|---|---|
顎変形症(手術併用矯正が必要な場合) | ○ | 大学病院等の特定医療機関での治療が条件 |
口唇口蓋裂などの先天性疾患がある | ○ | 厚生労働省が指定する疾患に限る |
著しい咬合異常による機能障害がある | △ | 医師の判断により適用可能性あり |
審美目的のみの矯正 | × | 自費診療となる |
保険適用の可否は個々の症状や状態によって異なるため、必ず矯正歯科医による診断を受け、詳細な説明を聞くことが重要です。
保険適用のための施設条件
保険適用での矯正治療を受けるには、「厚生労働省指定の施設基準」を満たした医療機関である必要があります。一般的な歯科医院では、保険適用の治療を受けられないことが多いため、大学病院や特定の矯正歯科専門クリニックの受診をおすすめします。
過蓋咬合の矯正の治療費用
過蓋咬合の矯正治療にかかる費用は、保険適用か自費診療かで大きく異なります。
保険適用の場合の費用目安
保険適用の場合は、一般的に以下のような費用がかかります。
- 初診料・検査費用:約1〜3万円
- 装置費用:約3〜5万円
- 調整料:1回あたり約3,000〜5,000円
- 総額:約10〜20万円(3割負担の場合)
※外科手術併用の場合は別途費用がかかります
自費診療(保険適用外)の場合の費用目安
自費診療の場合は、一般的に以下のような費用がかかります。
治療内容 | 費用目安 | 治療期間 |
---|---|---|
従来型ブラケット矯正(全顎) | 60〜80万円 | 約2〜3年 |
マウスピース矯正(全顎) | 70〜100万円 | 約1〜2年 |
部分矯正(前歯のみ) | 30〜50万円 | 約6ヶ月〜1年 |
手術併用矯正 | 100〜150万円 | 約2〜3年 |
矯正治療費用は医院によって差があり、症状の重症度や治療法、地域差などによっても変動します。そのため、治療を検討する際は、複数の医院でカウンセリングを受け、比較することをおすすめします。
過蓋咬合の矯正治療法
過蓋咬合の矯正方法は症状の原因や程度によって異なります。主な治療法をご紹介します。
小児期の治療
成長期の子どもの場合、顎の発育を誘導する機能的矯正装置を用いることで、骨格的な問題も改善できる可能性があります。
- 機能的矯正装置(バイオネーター、ツインブロックなど)
- 拡大床装置による上顎の拡大
- 早期治療後の経過観察と必要に応じた本格矯正
小児期に過蓋咬合を発見した場合は、成長を利用した治療ができるため、早期に矯正歯科を受診することが望ましいでしょう。
成人の治療
成人の過蓋咬合治療では、以下のような方法が用いられます。
- ブラケット矯正(歯に直接装置を付ける従来型矯正)
- マウスピース矯正(透明なマウスピースで段階的に歯を動かす)
- 外科手術併用矯正(重度の骨格的問題がある場合)
主な原因が歯の傾斜の場合、治療は比較的容易ですが、骨格的な問題がある場合は治療期間が長くなったり、外科手術が必要になったりすることがあります。
過蓋咬合の矯正における医療費控除
矯正治療は高額になることが多いため、医療費控除の対象になるかどうかも重要なポイントです。
医療費控除の適用条件
以下のような条件に当てはまる場合、医療費控除が適応される場合があります。
- 機能改善目的の矯正治療であること
- 歯科医師による「治療目的の証明書」が発行されていること
- 年間の医療費総額が10万円を超えること(または所得の5%を超えること)
純粋に審美目的のみの矯正治療は、医療費控除の対象とならない場合がありますが、過蓋咬合は機能的な問題を伴うことが多いため、医師の証明があれば控除対象となる可能性が高いです。
医療費控除の申請方法
医療費控除は、以下のような方法で申請することが可能です。
- 医療機関から証明書を発行してもらう
- 矯正治療費の領収書を保管する
- 確定申告期間中に必要書類を揃えて申告する
詳細は税務署や税理士に相談することをおすすめします。
過蓋咬合の矯正の効果と治療後の生活
適切な矯正治療によって過蓋咬合が改善されると、以下のような効果が期待できます。
- 噛み合わせの安定と咀嚼効率の向上
- 顎関節への負担軽減
- 歯の異常摩耗の防止
- 歯周病リスクの低減
- 審美性の向上
治療後は保定装置(リテーナー)の着用が必要で、医師の指示に従った管理を継続することで、治療結果を長期間維持することができます。
過蓋咬合の矯正を検討する際のポイント
過蓋咬合の矯正治療を検討する際に、押さえておきたいポイントを紹介します。
医院選びのポイント
医院選びは、治療の成功に大きく関わってきます。以下のようなポイントを参考に選びましょう。
- 経験豊富な歯科医師がいるか
- 過蓋咬合の治療実績が豊富かどうか
- 保険診療が可能な医療機関かどうか(必要な場合)
- 複数の治療オプションを提案してくれるか
- 治療計画や費用について明確な説明があるか
カウンセリング時の確認事項
カウンセリング時には以下のような項目を確認しておくとよいでしょう。
- 自分の過蓋咬合の原因と程度
- 保険適用の可否とその理由
- 治療期間の見込みと通院頻度
- 治療中の痛みや不快感への対処法
- 治療費の総額と支払い計画
過蓋咬合の矯正治療は長期にわたるため、信頼できる医師との良好な関係性が治療成功の鍵となります。十分な情報収集と相談を行った上で治療を開始しましょう。
まとめ
過蓋咬合の矯正治療は、保険適用できる場合と自費診療になる場合があります。保険適用の条件としては、先天性疾患に起因する場合や顎変形症で外科手術が必要な場合、重度の機能障害がある場合などが挙げられます。
2022年4月からは保険適用の範囲が拡大され、より多くの患者さまが保険診療で矯正治療を受けられる可能性が高まっています。しかし、審美目的のみの矯正は原則として自費診療となるため、費用面での準備も必要です。
過蓋咬合は見た目の問題だけでなく、顎関節症や歯の摩耗など様々な機能的問題を引き起こす可能性があるため、早期の治療が推奨されます。まずは矯正歯科医によるカウンセリングを受け、自分の症状に合った最適な治療法を見つけることが大切です。
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