リテーナーの作り直し|紛失・破損・合わないときの流れと注意点
リテーナーの作り直しは、紛失・破損の有無だけでなく、歯並びと装置の適合を確かめて決めます。合わない装置を無理に押し込まず、矯正を担当した歯科医院へ連絡しましょう。再作製までの過ごし方、修理や再矯正との違い、費用と転院時の確認点を解説します。
リテーナーを作り直すときに、最初に押さえたいこと
矯正治療が終わってから使うリテーナーは、整えた歯並びを保つための装置です。なくした、割れた、以前のように入らなくなったときには、新しい装置が必要になることがあります。ただし、同じ形のものを注文すれば、どの状態でも解決するわけではありません。歯の位置が変わったのか、装置が傷んだのか、別の歯科治療で歯の形が変わったのかによって、必要な対応が違います。
作り直しを考えた段階では、「いつまでに注文できるか」に加えて、「今の状態で何を使ってよいか」を歯科医院に聞くことが大切です。装置のない期間が長くなると歯の位置が変わる可能性がある一方、合わない装置を力任せに入れることも適切ではありません。連絡の際には、最後に問題なく装着できた日と、現在困っていることを具体的に伝えましょう。[1][2]
この記事では、すでにリテーナーを使っている方が再作製を相談する場面を中心に説明します。初めて保定装置を選ぶ際の種類や基本については、リテーナーの種類・装着期間・手入れの解説も参考にしてください。ここでいう「保定」とは、矯正で動かした歯の位置を維持する段階のことです。
作り直し・修理・再矯正は目的が違う
再作製は、新たなリテーナーを作って歯並びを保持するための対応です。修理は、使っている装置の一部を補修したり調整したりする対応を指します。再矯正は、歯をあらためて動かして位置やかみ合わせを整える治療です。見た目が似た透明な装置を使う場合でも、何を目的としているかは同じではありません。
例えば、今の歯並びを受け入れて保持するのか、以前の状態へ近づけてから保持するのかでは、相談の進め方が変わります。「新しく作れば元どおりになる」と考えて注文する前に、今回の装置が保つ歯の位置を確認しましょう。後戻りの程度によっては、再作製だけでなく治療を追加する選択肢が説明されることもあります。[3]
紛失・破損・合わないときの受診の目安
リテーナーの異常に気づいたら、次の定期受診まで何週間も待つのではなく、まず担当医院に連絡しましょう。「急いで連絡すること」と「必ず夜間救急を受診すること」は別です。装置の紛失だけなのか、強い痛みや傷があるのか、破片を飲み込んだ可能性があるのかを分けて伝えると、対応の優先順位を相談しやすくなります。
| 気づいた状態 | 最初の対応 | 医院へ伝える情報 |
|---|---|---|
| 装置を紛失した | 早めに連絡し、再作製と待機中の対応を相談 | 上下のどちらか、最後に使った日、予備の有無 |
| 透明な装置に亀裂・変形がある | 傷んだ装置を無理に使わず、状態を確認してもらう | 割れた場所、破片の有無、熱や衝撃の心当たり |
| 奥まで入らない、強く痛む | 強く噛んで押し込まず、適合を相談 | いつから合わないか、使っていなかった期間 |
| 固定式ワイヤーが外れた・浮いた | 自分で曲げ直さず、修理の受診を相談 | 外れた位置、舌への接触、歯の位置の変化 |
| 破片の後に息苦しさ・強い咳がある | 歯科の予約を待たず救急へ相談。呼吸が苦しい場合は119 | 部品の種類、起きた時刻、呼吸や飲み込みの状態 |
表は診断の代わりではありません。痛みが強い、口の中の出血が止まりにくい、飲み込みづらいといった症状があれば、装置の不具合だけと決めつけずに相談してください。破片が見当たらなくても、単に外で落とした場合と、口の中で欠けた場合では確認したいことが異なります。口の奥へ指や道具を入れて探すことは避けます。
部品を飲み込んだか吸い込んだか分からないときは、その不確かさもそのまま伝えてください。気道へ入った可能性がある場合は医療機関での評価が必要です。症状がないから自分で必ず便に出ると判断したり、吐いて出そうとしたりせず、破片の大きさや形が分かる残りの装置を持って相談しましょう。[4]
「まだ使えそう」に見えても確認したい変化
透明な装置の亀裂、穴、ゆがみ
透明なリテーナーは、薄い亀裂が光の反射に紛れて気づきにくいことがあります。以前と違う方向に外れやすい、いつも同じ場所が舌に触れる、着けると一部だけ浮く、といった変化も伝えたい情報です。亀裂の大きさだけで寿命を決めることはできません。どの部分が歯を覆っているか、形が保たれているか、口の中を傷つけていないかを合わせて確認します。
熱湯につけたあとに形が変わった場合、冷やせば元に戻るとは限りません。見た目がわずかな変形でも、歯への当たり方が変わることがあります。家庭で温めて成形し直したり、割れ目を接着剤でつなげたりせず、変形前後の状況を説明してください。熱や強い薬品を避けることは、日常の管理でも基本になります。[5]
ワイヤーの曲がりや固定部の外れ
取り外し式のワイヤー付き装置と、歯の裏側へ接着する固定式装置では、修理の方法が異なります。前者は装置全体を持参して確認できますが、後者では口の中に残ったワイヤーと接着部を診てもらいます。「ワイヤーがあるから保定できている」とは限らず、一部の歯だけ接着が外れていることもあります。[6]
自分でペンチを使って曲げたり、残っている接着部を引っ張って剥がしたりすると、状態を悪くするおそれがあります。舌に引っ掛かる場合は、尖った部分の位置を伝えて応急対応の指示を受けましょう。受診時に全部が外れていなくても、「何となく違う」と感じた段階で相談して構いません。装置の種類が分からない場合には、取り外せるものか、歯の裏側に接着されているものかを伝えると、相談のきっかけになります。
汚れと破損は分けて考える
白く曇った、色が付いた、においが残るといった状態は、すべてが再作製の理由になるわけではありません。清掃方法の見直しで対応できる場合と、表面の傷みや装置の適合を調べたい場合があります。見た目だけで「新品に交換すれば歯ぐきの問題も解決する」と考えず、装置と歯・歯ぐきを一緒に見てもらうことが役立ちます。
落ちない汚れを金属の針で削る、濃い漂白剤へ長時間つけるなどの自己流の処置は避けましょう。清掃剤には対象となる材質や使用条件があります。医院で指示された方法と製品表示を確認し、分からなければ装置の名称と洗浄剤の名前を伝えます。洗い方を変えてもにおいや違和感が続くときは、その経過自体が診察の手掛かりになります。[7]
リテーナーが入らない原因は、後戻りだけではない
しばらく使わなかったあとに入らなくなると、歯が元へ戻ったのではと心配になるでしょう。装着が不十分な期間に歯の位置が変わることはありますが、装置の変形や破損が原因のこともあります。歯が動いた場合も、どの歯がどちらへ動いたか、かみ合わせに問題があるかによって対応は変わります。「何日なら大丈夫」という一律の日数で判断しないことが大切です。[1]
一方、軽い密着感があることと、途中で止まって入らないことも同じではありません。以前と同じ位置まで装着できるか、強い力が必要か、鋭い痛みがあるかを分けて伝えてください。痛みを我慢して噛み込めば戻ると考えたり、長く着けるほどよいと判断して装着時間を独自に増やしたりせず、担当医の評価を受けます。[2]
むし歯治療や被せ物の変更があった場合
保定中に歯の詰め物や被せ物を作り替える予定があるときは、一般歯科の担当医にもリテーナーを使用していることを伝えてください。歯の形が変わったあとに装置の入り方が違うと感じたら、直前に受けた治療の内容を記録します。治療前の装置と、現在の歯の形を照らして相談するためです。新しい被せ物を自分の判断で削ってもらうよう依頼するのではなく、双方の治療目的を共有しましょう。
例えば「昨日、右上の奥歯の被せ物が入り、その日から上のリテーナーの奥が浮く」という伝え方なら、確認する箇所が具体的になります。いつから入らないかが曖昧な場合も、最後の矯正受診日、一般歯科の治療日、装置を外していた期間を並べると整理しやすくなります。原因を決めつけるための記録ではなく、診察で比べる材料として用意してください。
以前の歯並びへ戻したい場合
今の位置で新しいリテーナーを作ることと、矯正終了時の位置へ歯を動かし直すことには違いがあります。保定装置の再作製を相談する際に、「今の見た目は受け入れられる」「このすき間だけが気になる」「以前より噛みにくい」など、困りごとを分けて伝えましょう。希望が伝わっていないと、患者さんは再矯正を望んでいるのに、装置の交換だけを相談している形になることがあります。
再治療が必要かどうかは、写真だけで断定できません。歯の位置に加えて、歯ぐきの状態や上下の歯の接触なども確認するためです。再作製、経過観察、再矯正のそれぞれについて、何が改善できて何が残るのかを聞きましょう。治療の追加を希望しない場合にも、現在の状態を安全に維持できるかを相談する余地があります。[3]
再作製の相談から受け取りまでの流れ
1.連絡時に装置と歯の状態を伝える
最初の連絡では、紛失なのか、装置が手元にあるのかを明確にします。装置がある場合は捨てずに保管し、破片も分かる範囲で残してください。電話だけで状況が伝えにくいときは、医院が案内する方法で写真を共有できるか確認できます。写真の送信先は医院から案内されたものを使い、患者情報を含む画像を公開の場へ載せる必要はありません。
「いつもの予約が来月なので、それまで装置なしでよいか」と自分で決めるより、予約日を待てる状態かを先に尋ねるほうが具体的です。診察できる日と、新しい装置を受け取れる日は同じとは限りません。受診の予約を取った時点で、受診までの対応も聞いておくと、帰宅後や休日の迷いを減らせます。
2.現在の歯並びと装置を診察する
診察では、装置の破損箇所だけを見て終わるとは限りません。歯にきちんと適合するか、以前の状態から変化しているか、痛みや歯ぐきの問題がないかを確認します。矯正終了時の記録があれば比較の助けになりますが、現在の状態を直接確認することにも意味があります。記録があることと、同じ装置をそのまま再注文できることは別です。
修理で使える見込みがあるか、再作製が必要か、先に別の処置を行うかを説明してもらいましょう。費用を抑えたい場合にも、「一番安い方法だけ」ではなく、「その方法で維持できる状態」と「後から追加対応が必要になる条件」を聞くと判断しやすくなります。説明が複数あるときは、その場で選択肢を書き分けて確認して構いません。
3.必要に応じて型取りや口腔内スキャンを行う
新しい装置のために、歯型を取ったり、口の中を機器で読み取る口腔内スキャンを行ったりする場合があります。以前の模型やデータを使えるか、新しい資料が必要かは、保存されている情報と現在の状態によって異なります。「データが残っているから診察は不要」とは限りません。歯の位置が変化していれば、以前の形に合わせた装置が今は合わない可能性があるためです。
過去のデータを使って装置を作り、郵送する対応が可能な場合もありますが、すべての医院や症例に当てはまる方法ではありません。郵送を希望するときは、診察の要否、適合しなかった場合の対応、返送や来院の条件まで聞きます。受け取り方法の便利さだけでなく、合わなかったときに誰が確認するかを含めて相談しましょう。[8]
4.受け取った装置の入り方と外し方を確認する
受け取り時には、装置を渡されたことだけで完了にせず、口の中での適合を確認します。上下の取り違えがないか、奥まで収まるか、歯ぐきや舌へ強く当たる場所がないかを伝えてください。装置の種類を変えた場合は、以前と同じ外し方では扱いにくいこともあります。自分で着脱するところを見てもらうと、帰宅後の困りごとを具体的に減らせます。
新しい装置になったからといって、装着時間が自動的に短くなるわけではありません。現在の歯並びと保定の段階に合わせて、いつ、どの程度使用するかを改めて確認します。複数の装置を渡された場合には、交互に使うのか、一つを予備として保管するのかも聞きましょう。取り違えを避けるため、ケースへ上下や使用開始時期を記録する方法もあります。[9]
受け取り後の違和感を伝えるとき
医院では入ったのに自宅で外しにくい、朝に外すと特定の歯だけ痛む、歯ぐきの同じところが擦れるなど、使い始めて分かることもあります。「新しいから当然」と考えて我慢せず、どの動作でどこに症状が出るかを記録して連絡しましょう。使用を継続してよいかは、症状と適合によって判断が変わります。
相談の際には、装着直後か、数時間使ったあとか、外すときかを分けます。装置自体を削ってから相談すると、調整前の形が分からなくなることがあります。どこが気になるかを写真や言葉で伝え、修正は医院の指示に沿って行ってください。特に、以前と違う強い痛みや、奥まで収まらない状態を「慣れるまでの問題」と決めつけないことが大切です。
長期の出張や旅行を控えている場合は、受け取り予定日だけでなく、出発前に適合を確かめる機会があるかを相談します。旅先で不具合が起きた場合の連絡先も控えておきましょう。予備を作ることにした場合には、実際に問題なく使えることを確認してから保管します。未確認の装置が手元にあるだけでは、困ったときに使えるとは限らないためです。
新しい装置ができるまで、何を使えばよい?
作製にかかる時間は、装置の種類、医院や技工所の体制、診察で必要となる処置などで変わります。「透明な装置なら当日」「どの医院でも数日」と一律には言えません。予約時には最短日数だけでなく、自分の場合の診察日、型取りの日、完成予定日を分けて確認してください。工程が分かれば、旅行や仕事の予定との調整もしやすくなります。
予備のリテーナーがある場合
担当医から予備として渡され、現在の状態に合っている装置があるなら、使用できるかを確認します。何年も前の装置や、以前の治療段階の装置を、見た目が似ているという理由だけで代用するのは避けましょう。連絡の際に「予備がある」だけでなく、「いつ作ったものか」「今も無理なく最後まで入るか」を伝えると、指示が具体的になります。
予備にも亀裂がある、きつくて収まらない、使うと痛い場合は、その状態を隠さず伝えてください。主な装置が壊れたために、合わない予備を使い続けるという判断はできません。手元に複数あるときは、すべて持参し、どれを使用してよいかを確認してから整理すると安全です。[7]
最後の矯正用マウスピースが残っている場合
マウスピース矯正の最後の装置が、一時的な保定に利用できる場合があります。しかし、治療用のマウスピースは歯を動かす計画に沿って作られているため、どの番号でも代用品になるわけではありません。自己判断で数段階前のものに戻したり、強く噛んで入れたりせず、担当医に装置番号と現在の適合を伝えて使用の可否を確認します。[8]
取り外し式リテーナーと歯ぎしり用のマウスピースも、用途が異なります。歯ぎしり用装置を持っている場合には、そのことを情報として伝えられますが、保定の代わりになると自分で決めないでください。装置の目的を確認する際は、矯正・歯ぎしり・保定用マウスピースの違いも参考になります。
使える装置が何もない場合
代用できる装置がないときは、歯科医院にその事実をはっきり伝えます。「作り直したい」という依頼だけでは、患者さんが予備を使用できているか分からないことがあるためです。受診を早められるか、再作製の手配をどの順で行うかを相談してください。市販の材料で自作した装置や、他人の装置を使って埋め合わせることはできません。
待っている間に歯の位置やかみ合わせの変化を感じたら、完成予定日まで黙って待つのではなく追加で連絡します。もとの予定でよいか、診察が必要かの判断材料になるからです。毎日何度も力をかけて確認する必要はありません。普段の生活で気づいた変化を、起きた日とともに短く記録しておきましょう。
再作製の費用は、何を含むかで比較する
費用を問い合わせるときは、装置そのものの料金だけでなく、診察、検査、型取りやスキャン、受け取り時の調整、修理中の対応などが含まれるかを確認します。上下セットの料金か、片側だけの料金かによっても比較は変わります。具体的な費用や保険適用は、今回の処置内容と契約を踏まえて受診先で確認しましょう。
矯正治療の契約に保定管理や再作製が含まれている場合でも、対象期間や紛失・破損の扱いは契約により異なります。以前の説明書、見積書、保証に関する案内を持参すると確認しやすくなります。「以前は無料だった」という記憶だけでなく、今回の状態と時期が同じ条件かを確認しましょう。海外の公的病院が示す料金や負担制度を、日本の医院へそのまま当てはめることはできません。[10]
| 項目 | 確認すると分かりやすいこと |
|---|---|
| 装置の再作製 | 上・下・上下のどれが対象で、何個作るのか |
| 診察・資料採取 | 診察、型取り、スキャンなどが別料金か |
| 修理との比較 | 修理できる範囲と、再作製へ変更する条件 |
| 保定の再評価 | 歯並びをそのまま保つ費用か、再矯正を含むか |
| 受け取り後 | 適合確認や調整、再受診の費用が含まれるか |
| 予備と配送 | 予備作製、郵送、合わない場合の対応の扱い |
再矯正の費用が別に提示されたときは、保定装置の費用と一つにまとめず、目的ごとに説明してもらいましょう。再矯正を受ける場合、受けない場合、それぞれの今後の管理がどうなるかも確認します。支払う前に、今回の見積もりが装置の交換だけを対象としているのか、歯を動かす治療まで含んでいるのかを書面で確認すると、後の行き違いを防ぎやすくなります。
引っ越しや医院の閉院で、別の歯医者へ相談するとき
元の医院へ通えなくなった場合は、受診先に「矯正治療が終了して保定中で、装置の再作製を相談したい」と伝えます。一般歯科で対応できる範囲と、矯正歯科での評価が必要な範囲は医院によって異なります。予約前に目的を伝えることで、装置だけを作る対応が可能なのか、資料を確認してから判断するのかを知ることができます。
元の医院から入手できるなら、治療終了時の写真や模型・スキャンに関する情報、保定装置の種類、最後に診察を受けた日、装着の指示をまとめておきます。ただし、資料をすべてそろえるまで連絡を遅らせる必要はありません。装置を使えない状態であれば、現時点で持っている情報を伝えて先に相談してください。
受診先では、以前の治療費に含まれていた対応がそのまま引き継がれるとは限りません。再作製を受け付けるか、診察費はいくらか、保定の管理も継続して受けられるかを分けて聞きましょう。新しい医院が現在の状態を確認することは、以前の治療を否定することではありません。今の歯並びをどのように維持するかを決めるための情報整理です。
説明するときのメモの例
問い合わせ用のメモは、「矯正終了は〇年〇月ごろ、上は透明な取り外し式、下は固定式です。上を〇日に紛失しました。予備はなく、最後に使ったのは〇日です。元の医院は遠方で、再作製と今後の管理を相談したいです」といった形で十分です。年月や装置の種類など、分かる範囲で書き込んでおくと、短い電話でも状況を伝えやすくなります。
治療終了の年月が曖昧なら「数年前で正確な日付は不明」と伝えて構いません。分からないことを埋めるために推測して答えるより、分かる情報と不明な情報を分けたほうが、受診先も確認しやすくなります。装置をなくしたことを責められるのではとためらっている場合も、連絡を先延ばしにせず、現在の困りごとから話してみてください。
再作製を繰り返さないために見直せること
紛失した場面から保管方法を決める
食事の際にティッシュへ包んで捨ててしまったなら、外した場所で直ちにケースへ入れる仕組みに変えます。机や洗面台へ一時的に置く習慣があるなら、ケースの置き場所を一つ決めると管理しやすくなります。外出先で使う場合は、家のケースを毎回持ち出すか、予備のケースを用意するか、自分の生活に合わせて決めましょう。
家族やペットの手が届かない場所へ保管することも役立ちます。ケースに入っていても高温の車内や暖房器具の近くは避けてください。破損の原因が保管中の熱なのか、持ち運び中の圧力なのか、着脱時の扱いなのかを分けると、同じ失敗を防ぐ具体策を選べます。[5]
歯と装置の清掃方法を混同しない
歯には歯の、装置には装置の清掃方法があります。歯磨き粉を装置へ使ってよいかについては材質や指示で扱いが異なるため、一般的な紹介だけで判断しないでください。歯を磨く道具と装置用の道具を分け、どの洗浄剤をどの条件で使うかを受け取り時に確認しましょう。
固定式の場合は、装置を外して洗うことができません。ワイヤーの周りをどのように清掃するか、補助用具が必要かを実際の口の中で教わると続けやすくなります。磨きにくい場所の汚れを取り除くだけでなく、接着部に問題がないかを定期的に確認してもらうことが大切です。[6][11]
装着しづらい理由を一緒に解決する
装置の扱いが面倒、仕事中に外す場面が多い、口の中が気になって眠りにくいなど、続けにくさにはさまざまな理由があります。再作製の機会にその理由を話すと、装置の適合の問題なのか、使い方を整理すればよいのか、装置の種類を検討する余地があるのかを相談できます。単に「もっと頑張る」と決めるだけでは、同じ場面で困る可能性があります。
ただし、装置の種類を変更すればすべて解決するわけではありません。固定式にすれば点検が不要になるわけでも、透明な取り外し式ならどの方でも同じ使い方になるわけでもありません。自分の歯並びの状態、清掃のしやすさ、通院できる条件を共有し、長く維持できる管理方法を考えましょう。[12]
再作製についてよくある質問
片側だけなくした場合、上下とも作り直す必要がありますか?
片側の紛失だけで、必ず上下の再作製が必要になるとは限りません。残っている装置の状態や歯並び、今後の保定方法を確認して判断します。問い合わせでは、上と下のどちらをなくしたか、残った装置を使えているかを伝えましょう。受診時には残った側も持参し、使用を続けてよいかを確認します。
割れた部分だけを接着剤で直してもよいですか?
家庭用接着剤での補修は避けてください。つながったように見えても、装置の形や適合が変わっている可能性があります。口の中で使う装置として適切な材料かも確認できません。破片を保管して医院へ持参し、専門的な修理が可能か、作り直しが必要かを相談しましょう。
作り直したリテーナーで、後戻りした歯は戻せますか?
通常の保定を目的とした再作製と、歯を動かす治療は区別します。現在の歯並びに合わせて作る装置が、過去の歯並びへ戻す装置になるわけではありません。気になる変化を説明し、今の状態を保持するのか、必要な治療をしてから保持するのかを決めましょう。
何年ごとに交換すればよいですか?
全員に共通する交換年数だけで管理することはできません。材質、使い方、破損や変形、歯との適合などにより判断が変わります。年数が短くても不具合があれば確認が必要で、長く使っているという理由だけで自己判断で捨てる必要もありません。定期受診の際に現物を持って相談してください。[9]
前の歯型があれば、来院せずに注文できますか?
対応できる場合もありますが、以前の記録の状態と現在の適合を確認する必要があります。歯の位置や被せ物が変わっていれば、古い形で作った装置が合わないことがあります。記録の保存状況、診察や新しいスキャンの要否、受け取り後の確認方法を医院へ尋ねましょう。
固定式が付いているので、取り外し式がなくても大丈夫ですか?
二つを併用する指示がある場合、固定式だけで同じ管理ができるとは限りません。固定式で保持する歯の範囲と、取り外し式を使う目的を確認する必要があります。片方をなくしたことを担当医へ伝え、残っている固定式の状態と今後の対応を相談してください。[12]
忙しくて受診できないときは、どう伝えればよいですか?
通える候補日をいくつか用意し、「使える装置がない」「予備は使えている」など現在の状態と一緒に伝えます。写真での相談が可能か、診察と受け取りをどう組めるかも確認できます。ただし、遠隔でできることには限界があります。強い痛み、破損、歯並びの変化があるときは、対面での確認が必要になる可能性を踏まえて調整してください。
受診前に整理しておくとよい確認事項
リテーナーの再作製では、装置を新しくすることと、その後の歯並びを保てる状態を整えることを一緒に考えます。紛失や破損に気づいた時期、最後に無理なく使えた日、予備の有無、最近受けた歯科治療、現在の痛みやかみ合わせの違和感をまとめておくと、診察につながりやすくなります。
- 今回必要なのは、修理・再作製・再矯正のどれか。
- 新しい装置ができるまで、何を使用してよいか。
- 作製に必要な診察と資料は何か。
- 費用は上下のどちらを対象とし、どこまで含まれるか。
- 受け取り後に合わない場合、どこへ連絡するか。
- 装着時間と定期確認の予定をどうするか。
歯並びの変化を感じたときも、装置をなくしただけのときも、まず状態を共有することが出発点です。合わない装置を無理に使って解決しようとせず、現在の歯と装置を確認し、作り直し後まで見通せる保定の計画を相談しましょう。
参考情報
- British Orthodontic Society:Retainers
- American Association of Orthodontists:My Retainer Feels Tight or Doesn’t Fit. Should I Force It?
- 日本臨床矯正歯科医会:保定期間中に後戻りが起きてしまいました。どうしたらいいですか?
- Guy’s and St Thomas’ NHS Foundation Trust:Swallowing or breathing in an object during dental treatment
- American Association of Orthodontists:How to Clean and Care for Your Retainer
- British Orthodontic Society:Everything you need to know before having your teeth straightened
- American Association of Orthodontists:How to Clean Retainers: AAO’s Guide to Retainer Care
- British Orthodontic Society:Clear Aligner Fact Sheet(COVID-19流行期の受診制限に関する資料)
- Leeds Teaching Hospitals NHS Trust:Essix Orthodontic Retainers
- Dorset County Hospital:Looking after your Retainer
- Nottingham University Hospitals NHS Trust:Retainers
- Nationwide Children’s Hospital:Dental: Wearing a Retainer