インプラント矯正とは、顎の骨に小さなネジ(アンカースクリュー)を埋め込み、それを支えとして歯を効率的に動かす最新の矯正技術です。抜歯回避や治療期間短縮などのメリットがある一方で、外科的処置が必要となる特徴もあります。
この記事では、従来の矯正法と比較しながら、インプラント矯正の仕組みや適応症例について詳しく解説します。
インプラント矯正とは?基本的な仕組みと特徴
インプラント矯正は、従来のワイヤー矯正やマウスピース矯正とは異なるアプローチで歯並びを改善する方法です。「アンカースクリュー」と呼ばれる小さなチタン製のネジを顎の骨に埋め込み、それを支え(アンカー)として利用することで効果的に歯を動かします。
このアンカースクリューは直径1.4〜2.0mm、長さ6〜10mm程度と非常に小型で、顎の骨へ直接埋め込むことでしっかりとした支えとなります。これにより、動かしたい歯だけを狙って力を加えることが可能になり、従来の矯正法では難しかった複雑な歯の移動も実現できるようになりました。
アンカースクリューの埋入は通常、局所麻酔下で行われ、切り開く必要がなく、短時間(約10分前後)での処置が可能です。痛みや出血もほとんどなく、治療終了後にはアンカースクリューを取り除くので、体内には残りません。
従来の矯正法との違い
インプラント矯正と従来の矯正法には、いくつかの重要な違いがあります。以下の表で主な違いを比較してみましょう。
比較項目 | インプラント矯正 | 従来型ワイヤー/マウスピース矯正 |
---|---|---|
歯を動かすための支え | 顎の骨に埋め込んだアンカースクリュー | 周りの天然歯 |
抜歯の可能性 | 回避できるケースが増える | 必要になることも多い |
難しい症例への対応 | 開咬(前歯が噛み合わない)・ガミースマイルなどにも有効 | 対応困難な場合あり |
治療期間 | 短縮しやすい | 症例によって長期化することも |
手術が必要かどうか | ネジ埋入の処置が必要 | 基本的に不要 |
従来の矯正法では周りの歯を支えとして使うため、「動かしたくない歯まで動いてしまう」という課題がありました。インプラント矯正では顎の骨に固定されたアンカースクリューを支えとして使うため、動かしたい歯だけを効果的に移動させることができます。
インプラント矯正の主なメリット
インプラント矯正には以下のようなメリットがあります。
- 治療期間の短縮が期待できる
- 抜歯を回避できる可能性が高まる
- 従来では困難だった複雑な症例でも治療できる
- 治療による身体への負担が比較的小さい
治療期間の短縮
インプラント矯正では、動かしたい歯だけを狙って効果的に動かせるため、治療にかかる期間が短くなる傾向があります。これまでの矯正では歯を動かす力が周りの歯にも伝わってしまい、効果が弱くなることがありましたが、アンカースクリューを使うことでこの問題を解決し、より短期間での治療完了が期待できます。
抜歯回避の可能性
従来の矯正法では、歯並びのスペース確保のために健康な歯を抜歯する必要がある場合がありました。しかし、インプラント矯正では奥歯ごと後方に移動させることができるため、スペースを確保しやすく、抜歯せずに済む可能性が大幅に高まります。これにより、健康な歯を残したまま美しい歯並びを実現できるケースが増えています。
難症例への対応力
開咬(前歯が噛み合わない)、ガミースマイル、前歯の突出など、従来の矯正法では対応が難しかった症例に対しても、インプラント矯正は効果的です。骨に固定されたアンカースクリューを利用することで、複雑な歯の移動パターンを実現できるようになりました。
インプラント矯正のデメリット・注意点
メリットが多いインプラント矯正ですが、いくつかのデメリットや注意点も理解しておく必要があります。
- 手術が必要
- 費用が高額になりやすい
- スクリューが外れるリスクあり
- 対応可能な医院が限られている
外科的処置の必要性
インプラント矯正では、アンカースクリューを顎の骨に埋め込む外科的処置が必要です。切開は不要な場合が多いものの、「顎の骨にネジを入れる」という処置に不安や抵抗感を感じる方もいるでしょう。また、まれではありますが感染などのリスクも完全にゼロではありません。
費用面の課題
インプラント矯正は、通常の矯正装置代に加えてアンカースクリューの費用が追加されるため、一般的に費用が高額になりやすい傾向があります。アンカースクリュー1本あたり数万円~10万円程度で、症例によっては複数本必要になる場合もあります。
スクリューが外れるリスク
顎骨の状態や骨量不足などの条件によっては、アンカースクリューが外れてしまうリスクがあります。その場合、再設置などの追加処置が必要となることもあるため、事前の詳細な検査が重要です。
インプラント矯正とマウスピース矯正の比較
インプラント矯正は素晴らしい技術ですが、当院で専門としているマウスピース矯正と比較してみましょう。
比較項目 | インプラント矯正 | マウスピース矯正 |
---|---|---|
見た目の良さ | ワイヤーと併用するため目立つ | 透明で目立たない |
手術の必要性 | ネジ埋入が必要 | 不要 |
痛み | ネジを入れるときや調整時に痛みがある | 比較的痛みが少ない |
着脱 | 固定式で取り外し不可 | 自由に着脱可能 |
食事制限 | 硬いものなど制限あり | 着脱可能で制限少ない |
口腔衛生 | 装置周りの清掃が難しい | 取り外して通常通り歯磨き可能 |
マウスピース矯正は透明な装置を使用するため目立ちにくく、自由に着脱できるという大きなメリットがあります。外科的処置も不要で、痛みも比較的少ないため、多くの方が抵抗なく始められる矯正法と言えます。
特に見た目を気にする方や、食事の制限を避けたい方、歯磨きなどの口腔ケアを通常通り行いたい方には、マウスピース矯正がより適している場合が多いでしょう。
マウスピース矯正の進化
近年のマウスピース矯正技術は飛躍的に進化しており、以前は治療が難しいとされていた複雑な状態でも治療できるようになってきています。3Dシミュレーションや最新のマウスピース素材の開発により、インプラント矯正に頼らなくても効果的な治療が可能なケースが増えています。
また、マウスピース矯正は装置の着脱が可能なため、重要な会議やイベントの際に一時的に外せるという生活スタイルに合わせて使える点も大きなメリットです。
インプラント矯正の治療の流れ
インプラント矯正は、次のような順序で治療を進めていきます。
- カウンセリング・精密検査(レントゲン撮影、口腔内の写真、模型作成など)
- 治療計画の立案と説明
- アンカースクリューの埋め込み(部分麻酔をして専用ドライバーを使用、約10分)
- 矯正装置装着と定期的な調整(1~2ヶ月ごとの通院)
- 歯並びが良くなった後、アンカースクリューを除去する
- 保定装置の装着へ移行
インプラント矯正では、矯正装置としてワイヤー矯正を併用することが多いですが、一部の症例ではマウスピース矯正と組み合わせて行うケースもあります。
インプラント矯正とマウスピース矯正、どちらを選ぶべき?
どちらの矯正法が最適かは、患者さんの症例や希望によって異なります。以下のような方はそれぞれの矯正法が向いているかもしれません:
インプラント矯正が向いている可能性がある方
- 歯並びの状態が複雑で、しっかりとした支えが必要な方
- 手術に抵抗がなく、できるだけ早く治療を終えたい方
- 抜歯を避けたいものの、従来の矯正法では抜歯が必須だと言われた方
マウスピース矯正に適している方の特徴
- 目立たない矯正装置を希望する方
- 外科的処置を避けたい方
- 食事や歯磨きの制限を避けたい方
- 自由に装置を外し付けできることを重視する方
まとめ
インプラント矯正は、アンカースクリューを固定源とする革新的な矯正技術で、抜歯回避や治療期間短縮など多くのメリットがあります。しかし、外科的処置が必要となるため、全ての患者さんに適しているわけではありません。
マウスピース矯正は手術が不要で目立ちにくい上に自由に外せるため、多くの方に負担の少ない矯正治療法です。近年の技術向上により対応できる症例も広がっています。そのためインプラント矯正を検討される前に、まずはマウスピース矯正について専門家に相談することをおすすめします。
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