「妊娠中に矯正治療を始めても大丈夫?」「治療中に妊娠が分かったらどうしよう?」このような不安を感じている方は多いのではないでしょうか。
この記事では、妊娠中の矯正治療について、安全性や注意点、おすすめの治療法をご紹介します。正しい知識があれば、安心して治療を受けることができます。
妊娠中の矯正治療は可能なのか?
結論からいうと、妊娠中でも歯列矯正治療は基本的にできますが、妊娠時期や体調に合わせた配慮が必要になります。妊娠による身体の変化やホルモンバランスの変動が、矯正治療に影響を与える可能性があるためです。
妊娠中に矯正治療を行う場合は、以下のような点に注意が必要です。
- ホルモンバランスの変化により歯茎が敏感になり、腫れやすくなる
- つわりによって装置の装着感や違和感が強く感じられることがある
- レントゲン撮影など放射線を使用する検査への配慮
- 妊娠中に使用できる薬が限られる
- 診察時の体勢による負担
これらに気をつければ、多くのケースでは治療を続けることができます。新しく始めることも可能ですが、必ず産婦人科の先生と矯正歯科の先生に相談しましょう。
妊娠期間別:矯正治療の注意点とベストなタイミング
妊娠期間によって体調や安全性の配慮点が異なります。妊娠期間を3つの時期に分けて、それぞれの時期における注意点を見ていきましょう。
妊娠初期(0〜15週)の矯正治療
妊娠初期は胎児の器官形成期であり、つわりで体調も崩れやすいため、新しく矯正治療を始めることはおすすめしません。この時期の特徴と注意点は以下の通りです。
- 胎児の重要な器官が形成される時期なので、できるだけ刺激を避ける
- つわりによる体調不良で治療が負担になりやすい
- 既に矯正治療を行っている場合は、一時的に休むことも考える
- レントゲンなどの検査は極力避け、必要最小限の治療にする
妊娠中期(16〜27週)の矯正治療
妊娠中期は体調が落ち着いてくる時期で、矯正治療を行うのに最も適した期間といえます。
- つわりが落ち着き、体調が安定する時期
- 胎児の主要器官形成が完了している
- おなかがまだそれほど大きくなっておらず、診察椅子での姿勢維持が楽
- 新規の矯正治療を開始するならこの時期が最適
妊娠中期は矯正治療に最も適した時期です。ただし、治療方法は歯科医師とよく相談して、体への負担が少ないものを選びましょう。
妊娠後期(28〜40週)の矯正治療
妊娠後期になると、おなかが大きくなり、診察椅子に長時間座ることが困難になる場合があります。また、出産に向けた体の変化も進むため、新しく治療を始めることはおすすめしません。
- 仰向けの姿勢が取りづらく、診察・治療時間に制限が生じる
- 早産のリスクを避けるため、ストレスとなる新規治療は控える
- 既に行っている治療は、負担が少なければ継続可能
- 装置の調整など、最小限の処置にとどめる
妊娠後期では、特に仰向けでの長時間の診察が難しくなるため、短時間で済む調整や、座った状態でできる治療を中心に進めていきます。
妊娠中におすすめの矯正方法
妊娠中の矯正治療では、体への負担が少なく、口腔ケアがしやすい方法を選ぶことが重要です。代表的な矯正方法とその特徴を比較しましょう。
矯正方法 | おすすめ度 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
マウスピース矯正 (インビザラインなど) |
◎ | ・外して歯磨きができる ・痛みが比較的少ない ・つわり時に一時外せる ・審美性が高い |
・定期的な通院が必要 ・1日20時間以上の装着が理想 |
ワイヤー矯正 (表側) |
△ | ・確実な歯の移動が可能 ・複雑な症例にも対応 |
・口腔ケアが難しい ・装置による口内炎のリスク ・痛みを感じやすい |
舌側矯正 | △ | ・外から装置が見えない ・複雑な症例にも対応 |
・口腔ケアがさらに難しい ・発音障害が起きやすい ・つわり時に不快感増大 |
部分矯正 | ○ | ・治療期間が短い ・体への負担が少ない |
・適応症例が限られる ・全体的な噛み合わせ改善は難しい |
妊娠中は特にマウスピース矯正(インビザラインなど)がおすすめです。つわりがひどい時には一時的に外すことができます。ただし、症例によっては適応できない場合もあるため、歯科医師と相談して最適な方法を選びましょう。
胎児への影響と安全対策
矯正治療を考える時、一番気になるのは胎児への影響ではないでしょうか。主な懸念事項と安全対策について解説します。
レントゲン撮影の影響と対策
矯正治療では診断や経過観察のためにレントゲン撮影が必要になることがありますが、妊娠中は放射線への配慮が必要です。
- 歯科用レントゲンの放射線量は非常に少なく、適切な防護があれば安全とされている
- それでも妊娠初期は可能な限り撮影を避ける
- 必要不可欠な場合は防護エプロンの使用を徹底
- デジタルレントゲンなど低線量の機器を選択
- 大きな検査(CTなど)は産後への延期を検討
妊娠中のレントゲン撮影については、その必要性を慎重に判断し、可能であれば産後まで延期するか、必要最小限の範囲に留めることが大切です。
薬剤使用の注意点
矯正治療中に痛みが生じた場合や、関連処置で薬剤を使用する可能性がありますが、妊娠中は使える薬が限られています。
- 麻酔:歯科で使う麻酔の多くは、適切な量なら安全に使用可能
- 鎮痛剤:市販の鎮痛剤でも妊娠中に使えないものがあるため、必ず医師に相談
- 抗生物質:必要な場合は妊娠中でも使用可能なものがあるが、医師と相談が必須
- 抗不安薬:基本的に使用を避けるべき
矯正治療中に何らかの薬剤が必要となった場合は、必ず矯正医と産婦人科医の両方に相談し、胎児への影響が最小限となる選択をすることが重要です。自己判断での服薬は絶対に避けましょう。
妊娠中の矯正治療での口腔ケア
妊娠中はホルモンバランスの変化により、歯茎が腫れやすくなる「妊娠性歯肉炎」が起こりやすくなります。矯正装置を装着している場合は、特に注意深い口腔衛生管理が必要です。
妊娠中に気をつけたい口腔トラブル
- 妊娠性歯肉炎:ホルモン変化により歯茎が腫れて出血しやすくなる
- むし歯の増加:つわりによる歯磨き不足や、食習慣の変化によるリスク上昇
- 口腔乾燥:妊娠によるホルモン変化や呼吸の変化で口が乾燥しやすくなる
- 矯正装置の周りの歯茎が腫れやすい:装置の周りが磨きにくいため
効果的な口腔ケア方法
妊娠中の矯正治療では、普段以上に丁寧な口腔ケアが必要です。効果的な方法を紹介します。
- 歯ブラシ:やわらかめの歯ブラシを使い、優しく丁寧に磨く
- 歯間ブラシ・フロス:矯正装置の周りや歯と歯の間の清掃に必須
- マウスウォッシュ:アルコールフリーのものを選ぶ
- 電動歯ブラシ:手磨きが難しい時期は電動歯ブラシの利用も検討
- 定期的な歯科クリーニング:3ヶ月に1回程度の専門的クリーニングを受ける
妊娠中は特に丁寧な口腔ケアが重要です。矯正装置を装着している場合は、歯間ブラシやフロスで細かい部分まで清掃することにより、歯肉炎や虫歯のリスクを低減できます。つわりがひどい時期は無理をせず、うがいだけでもこまめに行うようにしましょう。
妊娠中に矯正治療を受ける方へのアドバイス
妊娠中に矯正治療を検討している方や、治療中に妊娠が分かった方へのアドバイスをまとめました。
矯正歯科医と産婦人科医との連携
妊娠中の矯正治療では、矯正歯科医と産婦人科医の連携が非常に重要です。以下の点に注意しましょう。
- 矯正歯科医には必ず妊娠について伝える
- 産婦人科医にも矯正治療中であることを伝える
- 処方される薬や治療内容について両医師の見解を確認する
- 治療スケジュールは産婦人科の定期検診と調整する
妊娠中に新たに矯正を始める場合
妊娠中に矯正治療を始める場合は、次の点に注意して計画を立てましょう。
- 妊娠中期(16〜27週)が最も適した時期
- マウスピース矯正など負担の少ない方法を優先的に検討
- 治療計画は妊娠・出産スケジュールを考慮して立てる
- 出産後の生活変化も見据えた計画を立てる
矯正中に妊娠が分かった場合
矯正治療中に妊娠が分かった場合は、すぐに矯正歯科医に相談しましょう。
- 現在の矯正段階と妊娠期間を考慮して治療計画を再検討
- 必要に応じて装置の調整や一時的な治療休止を相談
- ワイヤー矯正からマウスピース矯正への変更可能性を確認
- 妊娠に伴う体調変化に合わせて通院頻度を調整
妊娠中の矯正治療は、母体と胎児の健康を最優先に考え、無理のない範囲で進めることが何よりも大切です。体調の変化があればすぐに医師に相談し、必要に応じて治療ペースの調整や一時中断を検討してください。
まとめ
妊娠中の矯正治療は基本的に可能で、特に体調が安定する妊娠中期(16~27週)が適しており、取り外し可能で口腔ケアが容易なマウスピース矯正が推奨されています。ただし、レントゲン撮影や薬剤使用には慎重な判断が必要です。矯正歯科医と産婦人科医の両方に相談しながら、母体と胎児の健康を第一に考えた治療計画を立てましょう。
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