近年、目立たない矯正治療として人気のマウスピース矯正。従来のワイヤー矯正に比べて審美性に優れていますが、気になるのは費用面です。「保険は適用される?」「医療費控除は使える?」といった疑問をお持ちの方も多いでしょう。この記事では、マウスピース矯正にかかる費用の負担を減らす方法を分かりやすく説明します。
マウスピース矯正と保険適用の基本
まず押さえておきたいのが、歯科矯正治療における保険適用の基本的な考え方です。健康保険は病気やケガの治療が対象で、審美目的の治療には原則として使えません。
マウスピース矯正は一般的に見た目や噛み合わせの改善を目的とするため、多くの場合「自由診療」として全額自己負担となります。しかし、特定の条件を満たす場合には例外的に保険が適用されることもあるのです。
マウスピース矯正が保険適用される例外的なケース
歯列矯正が保険適用される条件は非常に限定的です。以下のような特別な症状がある場合に限り、保険診療として認められています。
- 先天性疾患(唇顎口蓋裂など)による歯並びの異常
- 顎変形症による著しい咬合異常
- 埋伏歯(正常に生えてこない歯)があるため、手術が必要な場合
- 厚生労働省が指定する特定の疾患に伴うもの
これらの条件に該当する場合でも、保険適用されるのは従来型のワイヤー矯正が基本で、マウスピース矯正が自動的に保険適用されるわけではありません。マウスピース矯正は歯科医師の判断で治療の一部として使える場合もありますが、通常は保険の対象外となります。
保険診療の対象となる症状と条件
保険適用となる可能性がある具体的な疾患と条件をさらに詳しく見てみましょう。
対象となる疾患・状態 | 保険適用の条件 |
---|---|
唇顎口蓋裂 | 生まれつき唇や上あご、口の中に隙間があり、歯並びに影響がある場合 |
ゴールデンハー症候群 | 生まれつき顔の左右差や耳の形に特徴がある症状 |
鎖骨頭蓋異形成症 | 生まれつき頭の骨や鎖骨の発達に特徴がある症状 |
顎変形症 | 顎の手術が必要な症状 |
埋伏歯開窓術を必要とするケース | 歯が正しく生えてこず、手術が必要な場合 |
これらの条件に該当するかどうかは、歯科医師の診断に基づいて判断されます。自己判断せず、専門医の診断を受けることが大切です。
マウスピース矯正にかかる費用の内訳
保険適用外となる一般的なマウスピース矯正の費用相場を把握しておきましょう。治療範囲や期間によって大きく異なりますが、一般的な費用の内訳は以下の通りです。
矯正治療本体の費用
治療タイプ | 費用相場 | 特徴 |
---|---|---|
全体矯正(フルマウス) | 60万円~100万円 | 上下の歯全体を矯正 |
部分矯正 | 10万円~40万円 | 前歯など限られた部分のみを矯正 |
軽度矯正 | 20万円~50万円 | 軽い歯並びの乱れを直す短期間の治療 |
治療に必要なその他の費用
- 初診料・検査料:5,000円~60,000円
- 精密検査(レントゲン、歯型採取等):10,000円~30,000円
- リテーナー(保定装置):50,000円~100,000円
- 定期的な調整料:治療費に含まれる場合と別料金の場合あり
- 治療後のメンテナンス費用:クリニックによって異なる
マウスピース矯正は一度の支払いではなく、治療開始時、治療中、治療終了時など段階的に費用が発生することが一般的です。そのため、総額だけでなく支払いの時期や方法も事前に確認しましょう。また、クリニックによっては分割払いやデンタルローンなどの支払い方法を用意している場合もあります。
マウスピース矯正と医療費控除
保険適用が難しいマウスピース矯正ですが、医療費控除を利用することで税金の負担を減らせる可能性があります。
医療費控除の仕組みと計算方法
医療費控除とは、1年間(1月~12月)に支払った医療費が一定額を超えた場合に、確定申告を行うことで所得税の一部が還付される制度です。計算方法は以下の通りです。
控除される金額 = 1年間の医療費の合計- 保険金などで戻ってきた金額 – 10万円(所得が200万円未満の場合は所得の5%)
マウスピース矯正に支払った費用が医療費控除の対象となれば、税金の還付を受けられる可能性があります。例えば、治療費が80万円で他に医療費が30万円あった場合、合計110万円から10万円を引いた100万円が控除対象額となります。
マウスピース矯正が医療費控除の対象となる条件
マウスピース矯正が医療費控除の対象となるかどうかは、治療を行う目的によって決まります。
- 医療上の必要性:単なる美容目的ではなく、噛み合わせの改善や顎関節症の予防・治療など医療目的であること
- 歯科医師による診断:歯科医師が治療の必要性を認めていること
- 書類の準備:医療費の領収書や医師の診断書など、必要な証明書類がそろっていること
純粋に見た目の改善だけを目的とした矯正は、医療費控除の対象外となる可能性が高いです。しかし、噛み合わせの不具合改善、将来的な歯周病予防など医学的な必要性がある場合は、医療費控除の対象となる可能性があります。
医療費控除を受けるための手続き
医療費控除を受けるためには、以下の手順を踏む必要があります。
- 治療費の領収書を保管する(電子保管も可能)
- 必要に応じて医師の診断書を取得する
- 確定申告期間(翌年2月16日~3月15日)に確定申告を行う
- 必要な書類を税務署に提出(e-Taxでの電子申告も可能)
2017年からは「医療費の明細書」を提出すれば領収書を出す必要はなくなりましたが、領収書は5年間保管しておく必要があります。
マウスピース矯正の治療費を抑える方法
マウスピース矯正は保険適用が難しく費用が高くなりがちですが、以下のような方法で費用負担を軽減できる可能性があります。
医院選びのポイントと費用の比較方法
同じマウスピース矯正でもクリニックによって料金体系は大きく異なるため、複数の歯科医院で相談・見積もりを取ることで適切な価格がわかります。ただし、単に価格だけでなく、医師の経験や技術力、アフターケアの充実度なども含めて検討することが大切です。
- 複数のクリニックで無料相談を受ける
- 治療の内容と費用を細かく比べる
- 追加費用の有無を確認する
- 治療後のケアや保証について確認する
分割払いやデンタルローンの活用
多くの歯科クリニックでは、高額な矯正治療のために分割払いやデンタルローンを用意しています。
支払い方法 | 特徴 | メリット・デメリット |
---|---|---|
クリニック独自の分割払い | 医院が独自に提供する分割払いプラン | 手数料が低めのことが多いが、支払い期間が限られることも |
医療ローン・デンタルローン | 提携金融機関による専用ローン | 最長60回払いなど長期の分割が可能。金利負担あり |
クレジットカード分割払い | クレジットカードの分割払い機能を利用 | 手続きが簡単だが、金利が高めのことが多い |
支払い方法を選ぶ際は、金利や手数料を含めた総額を比べ、ご自身の家計に合った無理のない方法を選びましょう。
職場の福利厚生や保険の活用
勤務先の福利厚生や民間保険によっては、歯科治療に対する補助や給付金がある場合があります。
- 企業の福利厚生制度(医療費補助、健康保険組合の付加給付など)
- 民間の医療保険(特約によっては歯科治療も対象になる場合がある)
- 生命保険の医療特約(入院を伴う歯科治療の場合)
勤務先の福利厚生制度や加入している保険の補償内容を確認し、適用できる制度がないか調べてみることをおすすめします。わずかでも補助があれば、費用負担の軽減につながります。
マウスピース矯正を検討する際の注意点
費用面以外にも、マウスピース矯正を検討する際には以下の点に注意が必要です。
保険適用の可能性を正しく判断する
保険適用の可能性があるかどうかは、専門医による診断と判断が必要です。一般的な情報だけで判断するのは避けましょう。
- 複数の専門医に相談し、保険適用の可能性を確認する
- 保険適用条件に該当するか正確な診断を受ける
- 保険適用と自由診療の併用治療についても相談する
保険適用の可能性があるケースでは、必要書類や申請手続きについても詳しい説明を受け、適切に手続きを進められるよう準備しておくことが大切です。
医療費控除を最大限活用するためのポイント
医療費控除をより効果的に活用するためのポイントをご紹介します。
- 他の医療費と合わせて申告を検討する
- 家族全員の医療費をまとめて申告できる
- 通院時の交通費も医療費として認められる
- 治療に関連する薬代も対象となる
年間の医療費が10万円の基準に届かない場合でも、家族全員の医療費を合算することで基準を超える可能性があります。また、マウスピース矯正と同時期に他の医療費がかかる予定がある場合は、同じ年に治療を集中させることで、より多くの還付を受けられる場合があります。
まとめ
マウスピース矯正は通常、保険が使えない自費診療です。特定の症状がある場合に限り保険が適用されることもありますが、ほとんどの場合は全額自己負担となります。
治療費の負担を減らすには、医療費控除の利用がおすすめです。矯正治療が医学的に必要と認められる場合には、確定申告によって税金の一部が還付される可能性があります。また、複数のクリニックでの相談・見積もり比較や、分割払い・デンタルローンの利用なども検討しましょう。
いずれにしても、マウスピース矯正を検討する際は、単に費用だけでなく、医師の経験や技術力、アフターケアの充実度なども総合的に評価し、自分に最適な治療選択をすることが大切です。不明点があれば、専門医に相談し、十分な情報を得た上で治療を決断しましょう。
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