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歯ぎしりの原因と歯への影響|寝ている間の歯ぎしりに歯科でできる対処

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結論:寝ている間の歯ぎしり(睡眠時ブラキシズム)は、ひとつの原因では説明できず、睡眠が浅くなる瞬間に起こりやすいことや、ストレス・寝酒・カフェインなど睡眠を妨げる要因が関わると考えられています[2]。歯のすり減りや欠け・割れ、顎や首の痛み、頭痛などにつながることがあります[1][2][3]。睡眠中の歯ぎしりは意識して止めにくいため、歯科では生活習慣の見直しとあわせて、就寝時に装着するマウスピースで歯を守る対処が一般的です[2][3]。

歯ぎしりとは?寝ている間と起きている間の違い

歯ぎしりは、歯を強くかみしめたり上下の歯をこすり合わせたりすることで、医学的には「ブラキシズム」と呼ばれます[1][2]。

ブラキシズムは、起こるタイミングによって次の2つに分けられます[1][2]。

種類 起こるとき 特徴
睡眠時ブラキシズム 寝ている間 本人が気づきにくく、家族に指摘されて分かることが多い[1]
覚醒時ブラキシズム 起きている間 日中のくいしばりなど。意識することで減らしやすい[1][3]

この記事では、主に寝ている間の歯ぎしりについて解説します。「ギリギリ」と音を立ててこすり合わせるタイプのほか、音を立てずに強くかみしめるタイプもあり、睡眠中の歯ぎしりと食いしばりはまとめて睡眠時ブラキシズムと呼ばれます[2]。

寝ている間の歯ぎしりは力が強い

睡眠中は、起きているときのように「強くかみすぎないようにする」体のブレーキが働きにくいため、かみしめる力が最も強くなりやすいとされています[1]。MSDマニュアルでは、睡眠中には約110kgもの力がかかることがあると説明されています[1]。

寝ている間に歯ぎしりが起こる原因

睡眠時の歯ぎしりは、複数の要因が重なって起こる「多因性」のものと考えられています[2]。

睡眠が浅くなる瞬間に起こりやすい

睡眠中には、完全に目は覚めないものの、脳が一時的に覚醒に近い状態になる瞬間が1時間に数回あり、そのときに交感神経が活発になります[2]。昭和大学の馬場一美氏は、睡眠時ブラキシズムの80%以上はこうした短い覚醒のあとに起こると解説しています[2]。子どもを対象にした大阪大学の研究でも、歯ぎしりの約90%が短い覚醒や体の動きを伴って起きていたと報告されています[4]。

睡眠を妨げる生活習慣とストレス

主なリスク因子は睡眠の質を下げるものとされています[2]。

  • ストレス[2]
  • 寝酒(アルコール):寝つきは早くなるが、睡眠の質を下げるとされる[2]
  • コーヒーなどのカフェイン[2]
  • 寝る前のスマートフォン:交感神経の活動を高める要因として、生活指導で控えるよう勧められる[2]

このほか、遺伝的な背景も一部にあるとされますが、大部分は後天的な要因によるものと考えられています[2]。また、逆流性食道炎や閉塞性睡眠時無呼吸症候群がある人では、歯ぎしりの症状が悪化しやすいとされています[1]。

歯ぎしりが歯や顎に与える影響

強い力が長時間くり返しかかるため、歯ぎしりは歯や歯ぐき、顎にさまざまな悪影響を及ぼすことがあります。

北海道歯科医師会は、大人の歯ぎしりが口の中に及ぼす影響として次のようなものを挙げています[3]。

  • 歯のすり減り(エナメル質同士がこすれて削れる)[1][2]
  • 歯の欠け・割れ(破折)[1][3]
  • 詰め物・かぶせ物の破損[1]
  • 歯周病の悪化[3]
  • 歯並びの乱れ[3]
  • 知覚過敏[3]
  • 顎関節の異常、顎や首の痛み、頭痛[1][3]

歯が割れると抜歯になることも

歯の根が割れてしまうと、現状では抜歯以外の治療法がないとされています[2]。すり減りが進むと歯が短くなり、重い場合は神経に近いところまで削れることもあります[2]。痛みなどの自覚がないまま進むこともあるため、早めに歯の状態を確認することが大切です。

顎関節症との関係

日本歯科医師会は、顎関節症に関わる生活上の要因の一つとして睡眠中の歯ぎしりを挙げています[5]。ただし、顎関節症は複数の要因が重なって起こるもので、歯ぎしりだけが原因とは限りません[5]。

自分の歯ぎしりに気づくサイン

寝ている間の歯ぎしりは自分では気づきにくく、家族からの指摘で分かることがよくあります[1]。

次のような症状は、歯ぎしりや食いしばりが関係しているサインの可能性があります[2][3]。

  • 家族に「寝ているときにギリギリ音がする」と言われた[1]
  • 朝起きたときに、歯が浮いたような感じがある[3]
  • 朝、顎の筋肉が疲れている、こわばっている[2]
  • 顎が痛む、食事中に歯が痛む[3]

患者さんは「歯ぎしりはしていない」と言うことが多いものの、実際には歯ぎしりをしていることも多いとされています[2]。こうした症状に心当たりがあれば、歯科医院で原因を調べてもらいましょう[3]。歯ぎしりかどうか、歯にどの程度影響が出ているかは、歯科医師の診察で判断します。

歯科でできる歯ぎしりの治療と対処

睡眠中の歯ぎしりは意識して抑えるのが難しいため、歯科では「睡眠の質を高める生活指導」と「マウスピースで歯を守ること」が中心になります[2][3]。

1. 生活習慣の見直し

治療の第一歩として、睡眠の質を上げるための生活指導が行われます[2]。寝る前のスマートフォンを控える、寝酒やコーヒーを避けるなど、交感神経の活動を抑える工夫です[2]。これらは全身の健康にもよい習慣とされています[2]。

2. マウスピース(スプリント)療法

就寝時に、上あごまたは下あごのどちらか片方に樹脂製のマウスピースを装着し、歯と歯が直接こすれ合うのを防ぎます[1][2]。マウスピースは歯科医師が型をとって作製し、一人ひとりに合わせて調整します[1]。日本では保険診療として行われている治療です[2]。

項目 内容
主な目的 歯のすり減りや割れを防ぐ(マウスピースが歯の代わりに削れる)[2]
歯ぎしりへの効果 短期的には約90%の人で歯ぎしりの回数が半分以下に減るが、長く使うと約1か月で効果が弱まり、ほぼ元に戻るとされる[2]
使い続ける理由 歯ぎしり自体はなくならなくても、歯を守る効果が期待できる[2]
注意点 削れたり壊れたりしたら作り直す。装着に違和感が出ることもある[2]

つまりマウスピースは「歯ぎしりを治す装置」というより、「歯ぎしりの力から歯を守る装置」と考えると分かりやすいでしょう。すり減ったマウスピースを見て、自分の歯ぎしりの強さに気づく方もいます[2]。

市販の、お湯で形を整えるタイプのマウスガードが勧められる場合もありますが、使う前に歯科医師の診察を受ける必要があるとされています[1]。

自分でできる歯ぎしり対策

睡眠中の歯ぎしりは意識では止められませんが、睡眠環境を整えることと、日中のくいしばりを減らすことは自分でもできます。

  • 寝る前にスマートフォンを長時間見ない[2]
  • 寝酒や、夕方以降のコーヒーを控える[2]
  • 日中、必要以上に歯を食いしばらないよう意識する[1][3]
  • 口を閉じているときも、上下の歯を離しておく習慣をつける[5]

食事で上下の歯が接触している時間は1日に約15分程度とされ、それ以上に長く強い力がかかると、歯や歯を支える組織を傷めるおそれがあります[3]。日中に気づいたら歯を離す習慣は、歯や顎への負担を減らすことにつながります。

子どもの歯ぎしりは心配いらない?

子どもの歯ぎしりは珍しくなく、大きな問題になることは少ないとされています[3]。

子どもの約20%が睡眠中に歯ぎしりをするとされ、大阪大学の研究でも、明らかな睡眠の病気がない6〜15歳の子どもの27.3%に歯ぎしりが認められました[4]。一方で、ひどい歯ぎしりでは乳歯が大きくすり減ったり、顎が痛んだりすることもあります[4]。歯のすり減りや痛みが気になる場合は、歯科医院で相談しましょう。

よくある質問

寝ている間の歯ぎしりは治りますか?

睡眠時の歯ぎしりは複数の要因が関わるため、歯ぎしりそのものを確実になくす方法はまだないと考えられています。睡眠の質を高める生活習慣の見直しと、マウスピースで歯を守る対処が中心になります。

歯ぎしりはストレスが原因ですか?

ストレスは主なリスク因子の一つとされています。ただし、寝酒やカフェインなど睡眠を妨げる要因も関わり、ストレスだけが原因とは限りません。原因はひとつに絞れない「多因性」のものと考えられています。

マウスピースを着けると歯ぎしりはなくなりますか?

使い始めは歯ぎしりの回数が減ることが多いものの、約1か月で効果が弱まるとされています。マウスピースの主な目的は、歯のすり減りや割れを防ぐことです。削れたり壊れたりした場合は、歯科医院で作り直してもらいます。

歯ぎしりの音がしなければ心配ありませんか?

音を立てずに強くかみしめるタイプもあり、睡眠時ブラキシズムに含まれます。朝の歯の浮いた感じや顎の疲れ、歯の痛みなどがある場合は、音がなくても歯科医院で確認してもらいましょう。

市販のマウスピースを使ってもいいですか?

市販のマウスガードが勧められる場合もありますが、使う前に歯科医師の診察を受けることが必要とされています。歯ぎしりの状態や歯への影響を確認したうえで、合った装置を選ぶことが大切です。

歯ぎしりの影響や対処法は、人によって異なります。日本歯科札幌を含む日本歯科グループでは、歯ぎしり・食いしばりの診療として、歯や顎への負担を軽減するマウスピース(ナイトガード)の作製などを行っています。保険適用の可否や費用は症状や装置によって異なるため、詳しくは各院にお問い合わせください(日本歯科札幌のクリニック紹介)。

参考情報

  1. MSDマニュアル家庭版「歯ぎしり」
  2. 馬場一美(昭和大学歯学部)「睡眠中の歯ぎしりの治療について」ドクターサロン67巻8月号(2023)
  3. 全国健康保険協会 北海道支部(執筆:北海道歯科医師会)「『歯ぎしり』『くいしばり』」
  4. 大阪大学 加藤隆史「子どもの眠りを解析して歯ぎしりの原因を探る」
  5. 日本歯科医師会 テーマパーク8020「顎関節症」