結論:矯正用のマウスピースを無くしたら、まず治療を受けている歯科医院に連絡し、指示があるまで一つ前の段階のマウスピースを着けておくのが一般的な対応です[2]。自己判断で次の段階に進んだり、何日も装着しないまま放置したりすると、歯が計画どおりに動かなくなるおそれがあります[1]。作り直しの費用は治療契約の内容で大きく変わるため、決まった相場はなく、契約書と医院の説明で確認することが大切です。
マウスピースを無くしたときにまずすること
マウスピースを無くしたと気づいたら、探す・連絡する・前の段階を着けるの3つを、なるべくその日のうちに行いましょう。
- 落ち着いて探す:外食時にナプキンに包んだまま捨てる、ポケットやバッグに入れたまま忘れるといったケースがよくあります。立ち寄った場所に問い合わせるのも一つの方法です。
- 治療中の歯科医院に連絡する:今が何番目の段階か、いつから着けていないかを伝えます。
- 手元にある一つ前の段階を着ける:英国矯正歯科学会の患者向け資料では、今のマウスピースが割れたり無くなったりした場合は一つ前の段階に戻して着けてよいとし、すべて失った場合は担当医に連絡するよう案内しています[2]。
同じ資料では、担当医に診てもらえるまでの間も「マウスピースを着け続けなければならない」と強調しています[2]。ただし、どの段階を着けるかは治療計画によって異なるため、最終的には担当の歯科医師の指示に従ってください。
なぜ装着しない期間をつくってはいけないのか
マウスピース矯正は、1日の大半の時間装着していることを前提に歯を動かす治療だからです。
日本臨床矯正歯科医会のニューズレターでは、マウスピース型の矯正装置は1日20時間以上口の中に装着して歯を動かすものであり、装着時間が短いと歯が動かず治療効果が上がらないと説明されています[1]。
装着しない日が続くと、次のようなことが起こりえます。
- 動かしている途中の歯が、元の位置へ戻ろうとする
- 次の段階のマウスピースがきつく、きちんとはまらなくなる
- 計画とのずれが大きいと、型の採り直しや計画の見直しが必要になる
矯正装置の作製を担う技工所の案内でも、治療途中で無くした場合は、装着していなかった期間の長さに応じて新たにスキャン(口の中のデジタル型採り)が必要かを判断するとされています[5]。
次の段階に進んでもいい?自己判断が危ない理由
手元に次の段階のマウスピースがあっても、指示なく先に進むのは避けましょう。
マウスピースは一枚ごとに、歯をわずかずつ動かすように設計されています。今の段階で歯が十分に動いていないまま次に進むと、マウスピースが浮いたり、歯に無理な力がかかったりすることがあります。
| 手元の状況 | 考えられる対応 |
|---|---|
| 一つ前の段階がある | 担当医に連絡し、指示があるまで前の段階を着ける[2] |
| 次の段階しかない | 自己判断で進まず、担当医に連絡して指示を受ける |
| 手元に一枚もない | 担当医に連絡し、新しいマウスピースの手配を相談する[2] |
| 長期間着けていなかった | 型の採り直し(再スキャン)が必要か診てもらう[5] |
どの対応が適切かは、治療の進み具合や歯の状態によって変わります。歯科医師の診察で判断してもらいましょう。
マウスピース作り直しの流れ
作り直しは、医院に連絡したあと、必要に応じて型を採り、新しいマウスピースが届くまでの間は前の段階でつなぐ流れが一般的です。
- 連絡・受診:紛失した段階と装着していない期間を伝えます。
- 口の中の確認:今の歯の位置が計画どおりかを確認します。
- 型採り(必要な場合):装着していない期間が長い場合などは、改めてスキャンや型採りを行うことがあります[5]。
- 再作製の依頼:医院から作製元へ、作り直しとして依頼します[5]。
- 受け取り・装着の再開:新しいマウスピースの合い方を確認して、治療を続けます。
英国歯科医師会誌の報告では、マウスピース状の装置を無くした場合、古い模型ではなく新しく型を採って作り直すことが勧められています[4]。時間がたつと歯の位置やかみ合わせが変わっている可能性があるためです。
マウスピース作り直しの費用はどう決まる?
作り直しの費用は、治療契約に再作製が含まれているかどうかで変わり、一律の相場はありません。
マウスピース矯正は原則として公的医療保険が使えない自由診療です。費用の内訳や、紛失・破損時の扱いは医院ごとに異なります。確認したいポイントは次のとおりです。
- 治療費に、紛失・破損時の再作製が含まれているか
- 含まれている場合、回数や期間に上限があるか
- 含まれていない場合、1枚ごとの作製費か、再スキャン・計画変更の費用もかかるか
- 保定期間に使うマウスピース(保定装置)の扱い
日本臨床矯正歯科医会は、矯正歯科を選ぶ際の指針として、治療計画と費用について詳しい説明を受けることを挙げています[6]。治療を始める前に、紛失時の扱いも含めて確認しておくと安心です。具体的な費用は、治療を受けている医院にお問い合わせください。
なお、医療費控除については、国税庁が「成長期の子どもの発育を妨げないための矯正など、年齢や目的からみて必要と認められる場合は対象」「容姿を美化するための費用は対象外」と示しています[3]。作り直しの費用が対象になるかは治療の目的によるため、領収書を保管しておきましょう。
マウスピース矯正の主なリスクと注意点
マウスピース矯正は取り外せる便利さがある一方、装着時間を守れないと効果が出にくく、適応できる歯並びにも限りがあります[1]。
- 標準的な使い方:1日20時間以上装着し、段階ごとに交換していく[1][2]
- 適応の限界:適応できる不正咬合は軽度のものに限られるとされる[1]
- 主なリスク:適応外の歯並びに使うと、かみ合わせが悪化して別の装置で治療し直すことがある[1]
- 費用:自由診療のため、医院によって異なります。日本歯科グループのマウスピース矯正は治療完了までの通院費込みのパッケージ料金で、4回コース107,800円〜30回コース880,000円です(税込・公式サイト記載の料金、症例により別途費用あり)。紛失・破損による再作成や追加の装置が必要な場合は、別途費用がかかる場合があります
治療前には、頭部X線規格写真(セファログラム)を含む精密検査と、診断・治療計画の説明を受けることが大切とされています[1]。紛失をきっかけに治療が長引くこともあるため、日ごろの管理も治療の一部と考えましょう。
マウスピースを無くさないための習慣
紛失の多くは「外したあと、どこに置いたか」で起こるため、外したら必ずケースに入れる習慣が最も役立ちます。
- 外したらティッシュやナプキンに包まず、専用ケースに入れる
- ケースは目立つ色のものを選び、いつも同じ場所に入れて持ち歩く
- 外食時は、食事が終わったらすぐに着け直す
- 自宅ではペットの届かない場所に保管する
- 一つ前の段階のマウスピースは、医院の指示に従って捨てずに保管しておく[2]
前の段階を手元に残しておくと、万が一無くしたときにすぐつなぐことができます[2]。保管方法は医院の指示を確認してください。
よくある質問
矯正用のマウスピースを無くしたら、何日くらい着けなくても大丈夫ですか?
何日なら大丈夫という目安はありません。マウスピース矯正は1日20時間以上の装着が前提とされており、着けない期間が長いほど歯が計画からずれやすくなります[1]。気づいた時点で、すぐ医院に連絡しましょう。
無くしたら次の番号のマウスピースに進んでもいいですか?
自己判断で進むのは避けてください。一般的には、指示があるまで一つ前の段階を着けて待つよう案内されています[2]。どうするかは担当の歯科医師の判断に従いましょう。
マウスピースの作り直しの費用はいくらですか?
治療契約に再作製が含まれているかなどで変わるため、決まった金額はありません。日本歯科グループのマウスピース矯正では、紛失・破損による再作成は別途費用がかかる場合があると公式サイトに記載されています。マウスピース矯正は自由診療のため、契約書を確認し、治療を受けている医院にお問い合わせください。
作り直しで型を採り直すことはありますか?
装着していない期間が長い場合などは、改めてスキャンや型採りが必要になることがあります[4][5]。歯の位置が変わっている可能性があるためです。
保定期間中のマウスピースを無くした場合も連絡が必要ですか?
はい。保定装置は、動かした歯が元に戻るのを防ぐためのものです。無くした場合は早めに医院に連絡し、作り直しについて相談してください[4]。
マウスピースを無くしたときの対応は、治療の段階や歯の状態によって変わります。詳しくは歯科医師にご相談ください。
参考情報
- 日本臨床矯正歯科医会「歯と歯並びのニューズレター Vol.8『アライナー矯正』って、どんなもの?」
- British Orthodontic Society「Advice if you are being treated with Clear Aligners」
- 国税庁「No.1128 医療費控除の対象となる歯の治療費の具体例」
- British Dental Journal「Unintended changes to the occlusion following the provision of night guards」(2018)
- ODL「I lost or broke my aligners, what do I do?」
- 日本臨床矯正歯科医会「歯と歯並びのニューズレター Vol.7『後悔しない矯正歯科へのかかり方』」