ホワイトニング薬剤の種類と濃度|過酸化水素・過酸化尿素の違いと選び方
結論:歯科のホワイトニング薬剤の代表的な成分は過酸化水素と過酸化尿素ですが、効果や安全性は成分名や濃度の数字だけでは比べられません[3][4]。使用時間・期間・対象の歯は製品ごとに決められているため、歯科医師の診査を受け、受け取った製品の説明どおりに使うことが基本です[5][6]。
この記事では、成分の違い、濃度の読み方、院内用と自宅用の違い、使う前に伝えたいこと、追加購入や保管の注意、刺激が出たときの対応を整理します。
薬剤を選ぶ前に、何を白くしたいかを確認する
歯の表面の着色を落とすことと、天然の歯の色を漂白することは別の処置です。
日本歯科審美学会は、広い意味でのホワイトニングにはクリーニングなども含まれる一方、狭い意味では歯の漂白を指すと説明しています[1]。製品を比べるときは、「白くする」という言葉だけでなく、着色除去なのか漂白なのかを確認しましょう。
表面の汚れと、歯そのものの色を分ける
お茶やコーヒーなどによる表面の着色なら、歯科医院でのクリーニングで見た目が変わる場合があります。着色を落としても残る天然歯の色については、漂白の適応を検討します。一本だけ急に暗くなった歯や、穴・欠け・痛みのある歯では、まず変色の原因を調べることが必要です[2]。
詰め物や被せ物は白くならない
漂白で色が変わるのは天然の歯で、レジンの詰め物やセラミックの被せ物などは同じようには白くなりません[3]。天然歯が明るくなると、人工物との色の差が目立つことがあります。前歯に治療済みの歯がある方は、薬剤を決める前に、どの部分の色が変わるのかを確認しましょう。
代表的な成分は過酸化水素と過酸化尿素
過酸化水素は着色物質に直接働く成分、過酸化尿素は過酸化水素を供給する成分です[3][4]。
過酸化水素
歯の着色に関わる物質に化学的に働き、色の改善を目指します。歯を白い塗料で覆う方法ではありません[3]。反応する薬剤のため、対象の歯の状態、歯ぐきへの接触、作用させる条件の管理が必要です。
成分名が同じでも、消毒液など別用途の製品は歯科用製品の代わりになりません。手元の別用途の液体を歯に塗る、うがいに使う、トレーに入れるといった転用は避けてください。
過酸化尿素
過酸化尿素10%は、過酸化水素10%と同じではありません。厚生労働省の歯科用漂白材等審査ガイドラインでは、過酸化尿素の濃度に0.36を掛けて過酸化水素に相当する濃度を求める考え方が示されています[4]。
| 表示 | 過酸化水素に相当する濃度(計算上) |
|---|---|
| 過酸化尿素10% | 約3.6% |
これは成分量を読み解くための換算です。効果や使用時間が同じになるという意味ではなく、装着時間を自分で計算する目的には使えません。
添加成分にも役割がある
ジェルには、粘度やpHを調整する成分などが含まれます。たとえば「ティオン ホーム ウィズ」の添付文書には、過酸化水素のほか多価アルコール、粘度調整材、pH調整材などが記載されています[6]。主成分だけでなく、製品全体として使用条件が決められていると考えましょう。過去に歯科材料や化粧品でかぶれた経験がある方は、物質名や症状を伝えてください。
濃度の数字だけで「よく効く」「安全」と決められない理由
結果は、濃度だけでなく、作用時間、使用回数、製品の設計、対象の歯、変色の原因が組み合わさって決まります。
| 確認する項目 | 数字や名称だけでは分からないこと | 相談時に確認したい内容 |
|---|---|---|
| 有効成分と濃度 | 過酸化水素と過酸化尿素では、同じ%でも意味が違う | 何の成分を、どの濃度で含む製品か |
| 使用場所 | 院内での処置と自宅での使用では管理方法が違う | 誰が薬剤を扱い、どこで使うものか |
| 使用時間と期間 | 濃度から自分で計算することはできない | 1回の時間、1日の回数、終了・再診の予定 |
| トレーや保護方法 | 同じジェルでも、歯ぐきへ漏れる状態では使い方が変わる | 指定のトレー、歯ぐきの保護、適合の確認 |
| 歯の状態 | 他人の結果やレビューは自分の適応を示さない | 虫歯・ひび・知覚過敏・治療済みの歯への対応 |
しみやすさにも個人差がある
米国歯科医師会は、薬剤の濃度や接触時間などが知覚過敏(しみる症状)に関わる要因になりうると説明しています[3]。成分名だけで「しみない」「必ず痛む」とは分けられません。以前しみた経験があれば、どの歯が、使用中か使用後か、どのくらい続いたかを伝えましょう。
白さの評価は条件をそろえて
ホワイトニングの結果は永久ではなく、飲食や喫煙、清掃状態なども含めた管理が必要です[7]。写真は照明や距離で印象が変わるため、歯科医院で開始時の色を記録し、同じ条件で経過を確認しましょう。評価日を決めることは、薬剤の使い過ぎを防ぐことにもつながります。
院内で使う薬剤と、自宅で使う薬剤の違い
院内用(オフィス)は歯科医療者が保護と観察をしながら使う薬剤、自宅用(ホーム)は診査と指導を受けて自分で使う薬剤です[7][8]。
オフィスホワイトニング
歯科医療者が歯ぐきを保護し、薬剤の準備・塗布・除去、必要な機器の使用を行います。「ティオン オフィス」の添付文書には、複数の構成材料、歯肉保護、指定された光の条件などが定められ、虫歯や知覚過敏、歯根が露出した歯などへの使用制限も記載されています[7]。院内用の製品を自宅用の代わりに使うことはできません。
ホームホワイトニング
NHSの情報では、自宅で行う方法でも、歯に合うトレーを用意し、装着方法や歯ぐきの保護を説明することが示されています[8]。指定の時間を確保できるかを考え、自己判断で回数をまとめたり、時間を延ばしたりしないでください。
組み合わせる場合も一つの計画として
院内と自宅の処置を組み合わせる場合も、どちらをいつ行うか、症状が出たらどう変えるかを一つの計画として確認します。別の医院やサービスを同時に使っている場合は、それぞれに使用中の製品と最終使用日を伝えましょう。
国内製品の添付文書から分かること
使用時間や期間は製品ごとに決まっており、一律ではありません。
厚生労働省の審査ガイドラインでは、患者が使う漂白材に濃度上の管理条件が示されています[4]。海外の記事にある濃度や時間を、国内で受け取った製品に当てはめないでください。
| 製品(例) | 添付文書の主な使用条件 |
|---|---|
| オパールエッセンス10% | 1日1回・最長2時間、治療期間は最長2週間。就寝中の使用は禁止。2〜8℃で冷蔵保存、凍結禁止[5] |
| ティオン ホーム ウィズ(過酸化水素6%) | 1日1回・標準60分、最長90分、処置期間は最長10日間。就寝中は使用しない[6] |
これらは添付文書を読み解くための製品の例で、日本歯科グループでの取扱製品を示すものではありません。実際に使用する製品について、詳しくは各院にお問い合わせください。また、すべての方の使い方を示すものではありません。異常があれば途中でも中止して診察を受けます。白さが足りなくても、上限を超えて続けたり、自己判断で次のコースを始めたりしないでください[5][6]。
ラベルの読み方
- 販売名と製造販売元を確認する(名称の末尾や濃度が違えば別製品の可能性があります)。
- 成分と濃度、使用期限、保管条件を読む。
- 箱と説明書は捨てずに保管し、再診や問い合わせに使う。
医療機器の添付文書は、PMDAの情報検索で販売名から調べられます[11]。ただし、読んだだけで自分への適応が決まるわけではないため、分からない点は歯科医院に確認しましょう。
使う前に伝えておきたい歯・歯ぐき・体の状態
虫歯、ひび、歯ぐきの炎症、妊娠・授乳、アレルギーなどは、薬剤を選ぶ前に伝えるべき情報です。
- 歯と歯ぐきの状態:日本歯科医師会は、ホワイトニングで対処できる変色かどうかと併せて、虫歯、歯周病、知覚過敏の確認を重視しています[2]。治療途中の歯や処置直後の歯ぐきがあれば伝えましょう。詳しくは虫歯がある場合のホワイトニングと治療の順番をご覧ください。
- 体の状態:国内の添付文書には、妊娠・授乳中、年齢、病歴、特定成分へのアレルギー、無カタラーゼ症(過酸化物を分解する酵素が少ない体質)などに関する制限が記載された製品があります[5][6]。「低濃度なら制限がなくなる」とは考えないでください。
受付で話しにくい場合は、診療室で相談したいと伝えて構いません。体調や必要な治療を優先し、開始を延期することも選択肢です。
「白くならない」と感じたら、薬剤を強くする前に
期待した変化が出ない理由は、表面の汚れと歯の色の取り違え、計画どおりに使えていない、評価の条件が違うなど、さまざまです。
- 使用日、装着時間、薬剤名、しみた歯や歯ぐきの変化を簡単に記録しましょう。予定より短い日や中断した日もそのまま書きます。
- 強い変色や人工物との境目では、薬剤の追加だけでは希望を満たしにくいことがあります。クリーニングや修復治療など漂白以外の方法も比べましょう。
- 白い斑点やまだらな部分に薬剤を厚く塗ることは避け、どこを評価しているかを歯科医師と共有してください。
薬剤が残っていることは、追加で使う必要がある根拠にはなりません。
追加の薬剤を購入するときの確認点
前回と同じ製品でも、口の状態やトレーの合い方が変わっていないかを先に確認します。
トレーも一緒に確認する
詰め物を入れた、歯並びが変わった、歯ぐきが下がったなどの変化があれば、同じ使い方でよいとは限りません。トレーが浮く、歯ぐきに当たる、ひびがある場合は、自分で熱を加えたり切ったりせず、持参して相談しましょう。
通販や個人輸入の注意
厚生労働省は、個人輸入される医薬品や医療機器などについて、国内法に基づく品質・有効性・安全性の確認がないことや、偽造品、表示・説明の不備などのリスクを挙げています[9]。
- 販売名・期限・保管条件が分からない小分け品や、説明書のないものは使わないでください。
- 他人が余らせたジェルを譲り受けることも避けましょう。
- 家族が同じ医院に通っていても、トレーと薬剤は本人のものとして管理します。
自宅で使うときの注意
決められた量・時間・回数を守ることが、使い過ぎを防ぐ基本です。
- ジェルは示された量と位置を守ります。トレーをいっぱいに満たしても白さは増しません。
- 歯磨き粉や洗口液、水などを混ぜて薄めたり延ばしたりしないでください。
- 使えなかった日があっても、翌日に2回分使うなどの埋め合わせはしません。
- 眠り込みそうな時間帯など、予定どおりに外せない状況では使わないようにします。
- 矯正用マウスピース、リテーナー、スポーツ用マウスガードを、指示なく薬剤のトレーとして代用しないでください。
保管・持ち運び・残った薬剤の扱い
保管温度や期限は、受け取った製品の表示で確認します。
- 製品ごとに条件が異なり、たとえば「オパールエッセンス10%」は2〜8℃での冷蔵保存と凍結禁止が示されています[5]。
- 元の容器と包装のまま、子どもの手の届かない場所に保管します。別の容器への詰め替えはしないでください。
- 車内に置き忘れた、凍らせたかもしれないなど温度管理ができなかった場合は、使う前に歯科医院に確認します。
- 開封後の扱いや処分方法も、製品の説明や歯科医院で確認してください。
痛み・歯ぐきの白化・誤飲が起きたときの対応
痛みや強い刺激が出たら、我慢せず使用を中止し、トレーを外して薬剤をすすぎ、歯科医院へ連絡します[6]。
| 起きたこと | その場での対応 | 連絡時に伝えること |
|---|---|---|
| 歯がしみる、痛む | 使用を中止し、再開前に歯科医院へ相談する | どの歯か、何に反応するか、使用時間と症状の続き方 |
| 歯ぐきの刺激、白い部分、ただれ | 薬剤との接触を止め、すすいで相談する | 薬剤の漏れ、入れた量、トレーが当たる場所 |
| 皮膚に付いた | 流水で洗い流し、症状があれば医療機関へ相談する | 製品名、付いた場所、赤みや痛み |
| 目に入った | こすらず直ちに流水で洗い、医療機関へ連絡・受診する | 製品名、入った時刻、見え方や痛み |
| 飲み込んだ、子どもが口にした | 自分で吐かせず、製品情報をそろえて専門窓口へ相談する | 年齢、製品名、濃度、量、時刻、現在の症状 |
NHSは、歯ぐきの白い斑点や歯ぐき・のどの痛みを、ホワイトニングで起こりうる副作用として挙げています[8]。歯ぐきの白い部分は「効いている」反応ではないため、強くこすらず相談してください。
日本中毒情報センターは、化学製品が目に入ったときは直ちに流水で10分間以上洗い、洗いにくい場合などは無理をせず受診するよう案内しています[10]。呼吸が苦しい、意識がおかしい、腫れが急に広がるといった重い症状では、救急対応が必要です。
治療内容・リスク・費用について
ホワイトニングは保険外診療(自由診療)で、費用は方法などによって異なります[2]。
- 標準的な流れ:診査と必要な治療・清掃の後、院内または自宅で薬剤を使い、再診で色と症状を確認します。期間や回数は製品と歯の状態で異なります[5][6][7]。
- 主なリスク・副作用:知覚過敏、歯ぐきの刺激や白い斑点、のどの痛みなどがあります[3][8]。白さには個人差があり、人工物は白くなりません[3]。
- 費用:自由診療で全額自己負担です。日本歯科グループのホームホワイトニングの費用は1回40,000円です(公式サイト記載の料金、症例により別途費用あり)。詳しくはホームホワイトニングのページをご覧ください。見積もりでは、診査、クリーニング、トレー作製、薬剤の本数、経過確認、追加ジェル、症状が出た場合の診察などが含まれるかを確認しましょう。
よくある質問
どのホワイトニング薬剤がおすすめですか?
全員に共通する一製品はありません。漂白の対象になる歯か、治療済みの前歯があるか、使用時間を確保できるか、過去にしみたかで選択は変わります。「この方法を選ぶ理由」を歯科医師に確認しましょう。
ポリリン酸が入っていれば、過酸化物がなくても同じ漂白ができますか?
同じものとは考えません。配合成分の名前と、製品全体で何を目指しているかを分けて確認します。表面の着色への対応と天然歯の漂白は別です。詳しくはポリリン酸ホワイトニングの効果と白くならない理由で解説しています。
「歯科医院専用」と書いてあれば、自分で買って使ってよいですか?
その表示だけでは自宅で使えるかは決まりません。院内で医療者が扱う製品も、指導のうえで自宅で使う製品もあります。院内用の薬剤を薄めたり、少しだけ試したりすることは避けてください。
痛くなければ、予定より長く使ってもよいですか?
痛みがないことは、時間を延ばしてよい目印にはなりません。指定の時間を守り、目標の色にならない場合は評価を受けて計画を見直します。就寝中の使用を禁止している製品もあります。
昔のジェルが冷蔵庫に残っています。使えますか?
見た目だけでは判断できません。販売名、期限、開封後の扱い、保管条件を確認し、再開前に歯科医院へ相談してください。歯やトレーの状態が変わっている可能性もあります。
参考情報
- 一般社団法人日本歯科審美学会「歯のホワイトニングについて」
- 日本歯科医師会「お口のなんでも相談:ホワイトニング」
- American Dental Association「Whitening」
- 厚生労働省「歯科用漂白材等審査ガイドラインについて」
- 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)掲載「オパールエッセンス10%」添付文書
- 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)掲載「ティオン ホーム ウィズ」添付文書
- 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)掲載「ティオン オフィス」添付文書
- NHS「Teeth whitening」
- 厚生労働省「医薬品等を海外から購入しようとされる方へ」
- 公益財団法人日本中毒情報センター「中毒事故が起こったら」
- 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)「医療機器 添付文書等情報検索」