インプラント治療で骨造成を行うと腫れが出る?トラブルを防ぐためのポイント
インプラント治療の中でも、骨造成という手術に対して不安を感じる方は少なくありません。実際に骨造成が必要なのか、自分は治療を受けても大丈夫なのか、あるいは「腫れ」や「痛み」がどの程度続くのかといった疑問もあるでしょう。
骨造成はなぜ必要?インプラントと骨の関係
インプラント治療を成功させるためには、インプラントを支える「顎の骨」が欠かせません。顎の骨がしっかりとしているとインプラントが安定し、長期にわたって機能しやすくなります。一方、歯周病や加齢、抜歯後の経過が長い場合などで顎の骨が吸収されていると、インプラントを打ち込むための骨量が不足することがあります。このような場合「骨造成」という処置を行い、人工骨や自家骨(自分の骨)などを使って顎の骨を補強する必要があります。
骨造成を検討する際は、腫れや痛み、治療期間が長くなるなど、多くの不安要素がつきまといます。しかし不十分な骨量のままインプラントを入れるすると、固定が弱くなり、インプラントの脱落や上顎洞(頬の内側にある副鼻腔)へ入り込むリスクが高まるため、医師とよく相談の上で適切な治療方法を選択することが大切です。
骨造成の主な方法と特徴
インプラント治療における骨造成は、以下の3つの方法が代表的です。どの方法を選ぶかは、顎の骨の状態や不足の程度、患者さんの体調や希望によって異なります。
方法 | 特徴 | 治癒期間 | 腫れ・痛みの程度 |
---|---|---|---|
GBR法 | 人工膜で骨補填材や自家骨を覆い、新しい骨の再生を促す | 6~10ヶ月 | 腫れは2週間前後で落ち着くことが多い |
サイナスリフト | 上顎洞の粘膜を挙上し、大きく骨量を増やす | 6~12ヶ月 | 切開範囲が広いため、腫れ・痛みが出やすい |
ソケットリフト | 上顎洞底を押し上げる比較的負担が少ない処置 | 3~6ヶ月 | サイナスリフトより軽度 |
GBR法(骨誘導再生法)
GBR法は、骨を再生させたい部分に自家骨や人工骨を詰め、その上を人工膜(メンブレン)で覆うことで、骨を再生・増生させる方法です。広範囲から骨を採取する必要がある場合は、別の採取部位が痛むこともあります。治癒期間は長め(6~10ヶ月)ですが、比較的さまざまな部位に応用できるのが特徴です。
サイナスリフト
上顎洞(頬の内側にある副鼻腔)の底部を大きく持ち上げて、そこに人工骨や自家骨を入れる方法です。骨量が大きく不足している場合に適していますが、歯茎を大きく切開するため術後の腫れや痛みが発生します。また、治癒期間も比較的長く、6~12ヶ月程度要します。
ソケットリフト
同じく上顎洞に対して行う治療法ですが、サイナスリフトよりも小さな範囲で行うため、負担が軽度で済むのが特徴です。歯茎に小さな穴を開けて、インプラント埋入部位の上顎洞粘膜を少しずつ押し上げることで骨を増やす方法で、骨の不足がそこまで深刻でない場合に採用されやすいです。治癒期間は3~6ヶ月程度と比較的短くなります。
骨造成に伴う腫れ・痛みの原因と術後経過
骨造成では、顎骨や歯茎を切開したり、骨補填材を入れたりといった外科処置を行うため、腫れや痛みが発生します。特に上顎洞を扱うサイナスリフトは範囲が広いため、頬から目の下あたりまで腫れるケースも珍しくありません。
一般的に術後3日目をピークに腫れが増し、10日ほどで徐々に落ち着いていくと言われていますが、個人差が大きく、中には2週間程度痛みが続く場合もあります。上顎は血流が豊富で腫れやすく、下顎よりもダウンタイム(痛みや腫れがおさまるまでの期間)が長くなる傾向があります。
ただし、強い痛みが長期化したり、腫れが引かずに悪化している場合は感染の可能性もありますので、自己判断で様子を見ずに、担当の歯科医師へ早めに相談しましょう。
術後のケアが重要!トラブルを防ぐための注意点
骨造成を含むインプラント手術後に、腫れや痛みなどのトラブルを最小限に抑えるには、いくつかのポイントがあります。
1. 飲酒・喫煙を控える
飲酒は血行を促進し、喫煙は血管を収縮させるなど、どちらも術後の治りに悪影響を及ぼします。傷口が開いたり、感染が起こるリスクが高まるため、少なくとも術後1~2週間は飲酒・喫煙を避けるようにしましょう。
2. 適切な口腔ケア
術後は患部が非常にデリケートな状態です。歯磨き自体は重要ですが、傷口を強く刺激しないようやわらかい歯ブラシで優しく磨く必要があります。また、歯科医院で指示されたうがい薬などを使用し、感染を防ぐようにしましょう。
3. 刺激物を避ける
辛い食べ物や硬い食べ物など、患部を刺激しやすいものは控えるのがおすすめです。軟らかい食品を中心に食事をとり、顎の骨や歯茎に負担をかけないよう心がけましょう。
4. 処方薬を守って服用する
痛み止めや抗生物質などの薬は、歯科医師の指示通りにきちんと服用します。痛みがないからといって勝手に中断すると、感染や痛みのぶり返しを起こす可能性があるため注意が必要です。
5. 強い力を加えない
傷口を舌や指で触ったり、歯ブラシを強く当てたりすると、傷口の回復が遅れるだけでなく感染リスクが高まります。術後しばらくは、患部への刺激を最小限に抑えましょう。
「これって大丈夫?」と思ったら要注意な症状
術後の腫れや痛みはある程度の範囲であれば自然な反応ですが、以下のような症状が出た場合は、すぐ担当医へ相談することが大切です。
- 痛みや腫れが10日以上強く続く、あるいは増している
- 鎮痛剤を飲んでも痛みが治まらない
- 悪臭や膿が出ている、発熱が続く
- 出血がなかなか止まらない
これらの症状がある場合は感染や骨補填材の排除反応など、何らかのトラブルが発生している可能性があります。時間が経てば治るだろうと自己判断せず、早めに相談しましょう。
骨造成を回避できるインプラント治療の選択肢
どうしても骨造成に抵抗がある方や、体質的に大きな外科処置が困難な方には、骨造成をなるべく回避できる治療法を検討する場合もあります。例えば、短めのインプラント(ショートインプラント)や細いインプラント(スリムインプラント)を使用することで、骨量が少ない部位に対応することができる場合があります。また、口腔内を3Dスキャンすることで、最適な角度や位置でインプラントを入れ、骨量の少ない部分を避ける方法も開発されています。
ただし、こうした選択肢が必ずしもすべての方に適応できるわけではありません。ショートインプラントやスリムインプラントは対応できる症例が限られることもあります。骨造成を行わずにインプラントを入れた結果長期的な安定が得られず、結局やり直しが必要になるリスクも否定できません。必ず歯科医師と十分に相談し、メリットとデメリットを把握したうえで最適な選択をすることが重要です。
まとめ
骨造成は、顎の骨が不足している方にとっては成功率を高めるために重要なステップとなります。また、術後の腫れや痛みが生じることがあり、治癒期間が長期化する点などデメリットもあります。しかし適切な術後ケアを行うことで、ほとんどの場合はトラブルなく回復していきます。最近では短いインプラントを使ったり、骨造成を軽減できる技術も進んでいるため、骨造成自体が困難な方でも様々な選択肢を検討してみてください。
インプラント治療は長期的に自分の歯と同じような感覚で噛めるメリットがありますが、体質や骨の状態によってはリスクも伴います。最終的に後悔しないためにも、疑問点や不安は医師に遠慮なく相談し、納得した上で治療方針を決めましょう。
日本歯科グループのクリニックでは、豊富な治療実績と先端の技術力を活かし、患者さまの希望に沿ったオーダーメイドのインプラント治療を提供しています。専門スタッフのチーム医療と充実したサポート体制で、術前の疑問や不安をしっかりと解消しながら、安全・安心の治療を目指します。まずはお気軽にご相談ください。