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歯を失うとどうなる?放置で起こるリスクと治療法の選び方

Tooth extraction with a dental instrument with forceps.

結論:歯を失ったまま放置すると、周りの歯が動いて噛み合わせが乱れたり、残った歯に負担が集中したり、顎の骨がやせたりすることがあります。よく噛めない状態が続くと、食事の内容が偏り、全身の健康や生活の質にも影響する可能性があります[1][2]。歯を失ったら、入れ歯・ブリッジ・インプラントなどの方法を早めに歯科医師と相談しましょう。

本記事では、歯を失った後に起こり得る変化、全身の健康との関わり、生活の質への影響、治療法の比較と選び方を解説します。どの治療が合うかは、歯科医師の検査と診察で判断します。

歯を失うことで口の中に起こる変化

歯を1本失うだけでも、口の中のバランスが崩れ、周りの歯や噛み合わせ、骨に変化が起こることがあります。主な変化を表にまとめました。

変化 起こる理由 起こり得る影響
周りの歯の移動 すき間に向かって歯が動く 噛み合わせの乱れ、将来の治療が難しくなる
残った歯への負担 噛む力が特定の歯に集中する 歯の摩耗・破折、歯周病の悪化
顎の骨がやせる 歯を失った部分の骨が吸収される 口元の印象の変化、治療の選択肢が狭まる
噛む力の低下 噛める歯が減る 食事の偏り、栄養バランスの乱れ

噛み合わせの乱れ

歯を失ったすき間を放置すると、周りの歯がすき間に向かって動くことがあります[3]。日本歯科医師会は、永久歯が抜けたままの放置を、噛み合わせを悪くする要因の1つに挙げています[4]。

噛み合わせが悪くなると、噛む効率が下がり、特定の歯に負担が集中します[4]。発音や見た目、口の乾きなどに影響する場合もあります[4]。歯が動いた後では、ブリッジなどの治療が難しくなることもあります[3]。

残った歯への負担

食事のときは、本来すべての歯で噛む力を分け合っています。歯を失うと、残った歯に力が集中しやすくなります[4]。

力が集中した状態が続くと、歯のすり減りやひび、割れの原因になることがあります。日本歯周病学会は、噛み合わせや歯ぎしりは歯周病の直接の原因ではないものの、歯に過度な力がかかって悪化させることがあると説明しています[5]。

顎の骨がやせ、口元の印象が変わる

歯を抜いた後に放置すると、顎の骨が吸収される(やせる)ことがあります[6]。複数の歯を失った場合は、口元がへこんだり、口角が下がったりして、顔の印象が変わることもあります。

骨がやせると、後からインプラントを希望しても、骨を増やす処置が必要になる場合があります。見た目の変化は、自信の低下など気持ちの面にも影響することがあります。

食事の質の低下と栄養の偏り

歯が減ると、硬いものや繊維の多い食品が噛みにくくなります。その結果、やわらかい食品に偏りやすく、野菜や肉などの摂取が減ることで、栄養バランスが乱れるおそれがあります。

北海道歯科医師会は、食事を楽しむのに必要な歯の数の目安を約20本以上としています[2]。よく噛むことは唾液の分泌を促し、食べ物を飲み込みやすくすることにも役立ちます。

歯の喪失と全身の健康との関わり

歯の数や噛む力は、認知症や転倒、全身の病気との関連が研究で報告されています。ただし、多くは「関連がある」という報告で、歯を失ったことが直接の原因と確定しているわけではありません。

認知症との関連

65歳以上の約4,400人を4年間追跡した調査では、歯がほとんどなく入れ歯を使っていない人は、20本以上歯がある人に比べて、認知症のリスクが最大1.9倍高いことが示されました[1]。

一方で、歯がほとんどなくても入れ歯を使っている人では、リスクが下がる可能性があると報告されています[2]。歯を失った後に、噛む機能を補うことが大切だと考えられます。

転倒との関連

北海道歯科医師会は、歯が19本以下で入れ歯を使っていない人は、20本以上の人に比べて転倒のリスクが2.5倍高いという調査結果を紹介しています[2]。入れ歯を使っている場合は、そのリスクが低くなる傾向がみられました[2]。高齢者の転倒や骨折は、要介護の原因の1つとされています[2]。

歯周病と全身の病気

歯を失う大きな原因は歯周病です[2]。日本歯周病学会は、歯周病と呼吸器疾患、心疾患、糖尿病などとの関連を指摘しており、特に糖尿病との関係は深いとしています[5]。重い歯周病では、細菌が血液や呼吸器に入り込み、心筋梗塞や動脈硬化、肺炎などを引き起こしやすくなるとされています[5]。

糖尿病は歯周病を悪化させる大きな要因の1つです[5]。喫煙も歯周病の重要なリスク要因で、治りを悪くします[5][7]。歯を失った原因が歯周病の場合は、残っている歯を守るためにも、歯周病の治療と管理を続けることが大切です。

誤嚥性肺炎の予防と口のケア

口の中の管理は、誤嚥性肺炎(食べ物や唾液が気管に入って起こる肺炎)の予防につながると指摘されています[1]。歯の本数に関わらず、毎日の口のケアと定期的な歯科受診が、全身の健康を保つうえでも役立ちます。

歯の喪失による生活の質(QOL)への影響

歯を失うと、食事・会話・見た目など、日常生活のさまざまな場面に影響が出ることがあります。

食事の楽しみの低下

食事は栄養をとるだけでなく、家族や友人と過ごす楽しみの時間でもあります。噛みにくさや痛みがあると、食べられるものが限られ、外食や会食を避けるようになることもあります。食事の満足感が下がると、毎日の生活の質にも影響します。

会話・発音への影響

前歯を失うと、「サ行」や「タ行」などの発音が不明瞭になることがあります。口元を見られることへの抵抗感から、会話を控えるようになる方もいます。噛み合わせの乱れは発音にも影響する場合があります[4]。

見た目や気持ちへの影響

目立つ場所の歯を失うと、笑顔に自信が持てなくなることがあります。写真を避ける、人前で笑わないようにするなど、行動が制限されることもあります。人との交流が減ると、生活の張り合いにも影響しかねません。気になることがあれば、早めに相談してください。

歯を失った後の治療法と選び方

歯を失ったときの主な治療法は、入れ歯・ブリッジ・インプラントの3つです[8]。それぞれにメリットとデメリットがあり、口の状態、全身の状態、ご希望によって選びます。

治療法 主なメリット 主なデメリット
入れ歯 保険適用なら比較的安価、治療期間が短め、手術が不要 取り外しの手間、噛む力が弱くなりやすい、バネをかける歯に負担
ブリッジ 取り外し不要、治療期間が比較的短い、保険適用なら費用を抑えられる 両隣の健康な歯を削る、支える歯への負担が大きい
インプラント 隣の歯を削らない、取り外し不要、しっかり噛める 原則自由診療で費用が高め、治療期間が長め、手術が必要

表は日本口腔インプラント学会の説明をもとにした一般的な比較です[8]。

入れ歯

入れ歯は、取り外し式の装置で失った歯と歯ぐきを補う方法です。部分入れ歯は、残っている歯と歯ぐきの両方で噛む力を支えるため、歯が少ない場合でも作ることができます[9]。歯ぐきの形が変わって合わなくなっても、調整や裏打ち(内側の作り直し)で対応できます[9]。

ブリッジ

ブリッジは、失った歯の両隣の歯を支えにして、橋をかけるように人工歯を固定する方法です。取り外す必要がなく、噛み心地は自分の歯に近いとされています[8]。ただし、支えにする歯を削る必要があり、その歯の神経の治療が必要になったり、境目からむし歯や歯周病になったりすることがあります[3]。

インプラント

インプラントは、顎の骨にチタンなどの人工歯根を埋め込み、その上に人工の歯を取り付ける方法です。骨に固定されるため、しっかり噛めることがメリットです[10]。抜歯と同時にインプラントを埋め込むと、骨や歯ぐきがやせるのを避けられる可能性があるとされています[6]。

治療は、検査と計画、局所麻酔での埋入手術、骨と結合するまでの治癒期間、人工歯の装着の順に進みます[11]。日本口腔インプラント学会は、埋め込んでから歯を作るまでの目安を下顎2〜3か月、上顎4〜6か月程度としています[12]。

インプラントの主なリスクと注意点

インプラントには、手術に伴う痛み・腫れ・出血・合併症の可能性があります[10]。天然の歯より感染に弱く、お手入れ次第でインプラントの周りに炎症が起こることもあります[10]。喫煙者や歯周病の方では、インプラントの残存率が低いことが知られています[12]。

長く使うには、毎日のお手入れと、3か月〜半年ごとが一般的とされる定期的なメンテナンスが欠かせません[13]。インプラントは原則として健康保険が使えない自由診療です[12]。

日本歯科グループの公式サイトでは、インプラント1本あたりの費用(レントゲン・CTスキャン・手術代を含む)を、インプラントの種類と上部構造(人工歯)の材質ごとに次のように掲載しています(税込・公式サイト記載の料金、症例により別途費用あり)。

インプラントの種類(保証) 銀・プラスチック ジルコニア セラミック
ストローマン(10年保証) 35万円 40万円 45万円
ネオデント(5年保証) 25万円 30万円 35万円
バイオテム(1年保証) 15万円 20万円 25万円

骨が不足している場合の骨造成(GBR 10万円、サイナスリフト15万円)、コンピューターガイド(6万円)、静脈麻酔(9万円)は別途費用です(税込・公式サイト記載の料金、症例により別途費用あり)。初回相談は0円で、詳しくは日本歯科グループのインプラント治療のページをご覧ください。

まとめ

歯を失ったまま放置すると、噛み合わせの乱れ、残った歯への負担、顎の骨がやせるなどの変化が起こることがあります。歯の数や噛む力は、認知症や転倒、全身の病気との関連も報告されています。入れ歯を使うことでリスクが下がる可能性も示されており、失った歯を補うことが大切です。

入れ歯・ブリッジ・インプラントには、それぞれメリットとデメリットがあります。歯を失ったら早めに歯科医院で相談し、ご自身の状態と希望に合う方法を選びましょう。

静岡歯科(日本歯科グループ)では、検査結果と患者さまのご希望を踏まえ、入れ歯・ブリッジ・インプラントを含めた治療法をご説明し、治療計画をご提案しています。歯を失ってお困りの方は、まずはご相談ください。

よくある質問

奥歯が1本抜けたままでも問題ありませんか?

1本でも、周りの歯がすき間に向かって動き、噛み合わせが乱れることがあります。歯が動いてしまうと、後から治療する際に選択肢が狭まる場合もあります。痛みがなくても、早めに歯科医院でご相談ください。

歯がないと認知症になりやすいのですか?

65歳以上を4年間追跡した調査では、歯がほとんどなく入れ歯を使っていない人は、20本以上歯がある人に比べて認知症のリスクが最大1.9倍高いと報告されています。ただし、これは関連を示したもので、原因が確定したわけではありません。入れ歯を使うことでリスクが下がる可能性も示されています。

歯を失ったら、どのくらいで治療を始めるべきですか?

時期は一律ではありませんが、放置期間が長いほど歯の移動や骨の吸収が進むことがあります。抜歯後の傷の治り方や、選ぶ治療法によって適した時期が異なります。抜歯が決まった段階で、その後の治療計画も相談しておくと安心です。

入れ歯・ブリッジ・インプラントのどれを選べばよいですか?

口の中の状態、全身の状態、費用、通院のしやすさ、ご希望によって適した方法は異なります。それぞれのメリットとデメリットを比べたうえで選ぶことが大切です。歯科医師が検査結果をもとに選択肢をご説明します。

インプラントは保険が使えますか?

原則として健康保険は使えない自由診療です。外傷や腫瘍で顎の骨を失った場合など、一部に保険が適用される例外があります。入れ歯やブリッジは保険診療で作れる場合があります。

参考情報

  1. 厚生労働省委託事業 在宅医療関連講師人材養成事業「在宅医療における歯科の役割」(日本歯科医師会)
  2. 全国健康保険協会北海道支部「北海道歯科医師会:高齢者の残存歯数は全身の健康に影響」
  3. Leeds Teaching Hospitals NHS Trust「Bridges」
  4. 日本歯科医師会「咬合、かみ合わせ」(テーマパーク8020)
  5. 日本歯周病学会「歯周病の原因」
  6. 日本歯科医師会「インプラント」(テーマパーク8020)
  7. National Institute of Dental and Craniofacial Research「Periodontal (Gum) Disease」
  8. 公益社団法人日本口腔インプラント学会「入れ歯やブリッジとの違いは」
  9. 日本歯科医師会「入れ歯」(テーマパーク8020)
  10. 公益社団法人日本口腔インプラント学会「インプラントのメリット・デメリット」
  11. 公益社団法人日本口腔インプラント学会「相談から治療の流れ」
  12. 公益社団法人日本口腔インプラント学会「よくあるご質問」
  13. 公益社団法人日本口腔インプラント学会「インプラントのお手入れ」