結論:インプラントの人工歯(上部構造)の付け方には、ネジで留める「スクリュー固定」と、歯科用セメントで接着する「セメント固定(セメント合着)」があります。スクリュー固定は取り外しやすくメンテナンスしやすいこと、セメント固定は見た目を整えやすいことが主な特徴です。どちらが適しているかは、部位・噛む力・見た目の希望などをふまえて歯科医師が判断します。
インプラントの構造と「上部構造」とは
上部構造とは、インプラントのうちお口の中に見える人工歯の部分です。インプラントは、顎の骨に埋める人工歯根(インプラント体)、その上に付ける連結部品(アバットメント)、人工歯(上部構造)からなります。
インプラントは入れ歯と比べてしっかり固定でき、隣の歯を削る必要がないといった利点があります[1]。一方で、手術が必要で、治療期間が比較的長く費用も比較的高額といったデメリットもあります[1]。人工歯をどう固定するかは、治療後のメンテナンスや見た目に関わる大切なポイントです。
スクリュー固定とセメント固定の違い
2つの方法の違いは、人工歯を「ネジで留めるか」「接着材で付けるか」です。
スクリュー固定とは
スクリュー固定とは、人工歯をネジ(スクリュー)でインプラントに留める方法です。人工歯にネジを通す穴(アクセスホール)があり、そこから専用のネジを締めて固定します。穴はレジン(歯科用の樹脂)などで塞いで見た目を整えます。
噛む力が強くかかる奥歯や、取り外して点検する機会が多いと見込まれる場合に選ばれることがあります。
セメント固定(セメント合着)とは
セメント固定とは、歯科用セメントで人工歯をアバットメントに接着する方法です。天然の歯に被せ物を付けるのと似た方法で、人工歯にネジ穴が要りません。そのため見た目を整えやすく、前歯など見た目が重視される部位で用いられることがあります。
スクリュー固定のメリット・デメリット
スクリュー固定は、取り外して点検や修理がしやすい一方、ネジのゆるみに注意が必要な方法です。
メリット
- 取り外しやすい:ネジを外せば人工歯を外せるため、点検や修理を行いやすい
- 調整し直しやすい:噛み合わせや人工歯の調整が必要なときに、外して対応できる
- セメントが残る心配がない:接着材を使わないため、歯ぐきの中にセメントが残るリスクがない
デメリット
- 見た目への影響:ネジ穴を塞ぐ材料が変色したり、わずかな段差ができたりすることがある
- ネジのゆるみ:時間とともにネジがゆるむことがあり、締め直しが必要になる
- 製作の難しさ:ネジ穴の位置や締める力の管理など、精密な製作と処置が必要
国内の大学病院で単独のインプラント冠536本を調べた報告では、約15%に技術的なトラブルがみられ、最も多かったのはスクリューのゆるみでした[3]。ゆるみの約75%は装着後1年以内に起きていたとされます[3]。装着後しばらくは特に、定期的な点検が大切です。
セメント固定のメリット・デメリット
セメント固定は、見た目を整えやすい一方、取り外しが難しくセメントの取り残しに注意が必要な方法です。
メリット
- 見た目を整えやすい:ネジ穴がないため、人工歯の形を天然の歯に近づけやすい
- 形がシンプル:人工歯にネジ穴を設けないため、形の自由度が高い
- 人工歯を留めるネジがない:人工歯を固定するスクリューのゆるみを考えなくてよい
デメリット
- 取り外しが難しい:トラブルの際に人工歯を簡単には外せず、壊して外す必要が生じることもある
- セメントの取り残し:歯ぐきの中にセメントが残ると、炎症の原因になることがある
- トラブル時の負担:修理に時間や費用がかかる場合がある
インプラントの根元に汚れがたまると、周りの歯ぐきに炎症が起き、進むと支える骨が失われる「インプラント周囲炎」につながります[2]。歯ぐきの下にある接合部は炎症反応を起こしやすいという報告もあり[4]、取り残しを防ぐ丁寧な処置と定期的な確認が欠かせません。
スクリュー固定とセメント固定の比較表
ご自身が優先したい点を整理し、歯科医師の説明と照らし合わせるとわかりやすくなります。
| 項目 | スクリュー固定 | セメント固定 |
|---|---|---|
| 見た目 | ネジ穴を塞ぐ必要がある | ネジ穴がなく整えやすい |
| 取り外し | ネジを外せば可能 | 難しい |
| 注意点 | ネジのゆるみ | セメントの取り残し |
| 選ばれやすい場面 | 奥歯、点検・修理のしやすさを重視する場合 | 前歯、見た目を重視する場合 |
実際には、骨の中のインプラントの角度や噛み合わせ、清掃のしやすさなども考慮して決めます。
治療の流れ・期間・リスクと費用
インプラント治療は自由診療です。日本歯科グループのインプラント費用は1本あたり150,000円〜450,000円(税込・公式サイト記載の料金、症例により別途費用あり)で、インプラントの種類と人工歯の素材(銀・プラスチック、ジルコニア、セラミック)によって異なります。詳しくは日本歯科グループのインプラント治療ページをご覧ください。標準的には、相談・検査、埋入手術、骨と結合するまでの治癒期間、仮歯での確認を経て最終的な人工歯を装着します[5]。期間は骨の状態やインプラントの種類によって異なります[5]。
主なリスクには、手術に伴う痛み・腫れ・出血や合併症、人工歯の破損、メンテナンスを怠ると長持ちしないことなどがあります[1]。固定方法にかかわらず、治療後は3か月〜半年ごとを目安に定期メンテナンスを受けましょう[6]。
まとめ
スクリュー固定は取り外しやすく点検や修理がしやすい方法、セメント固定は見た目を整えやすい方法です。それぞれに注意点があるため、部位やご希望に合わせて選ぶことが大切です。
不安や疑問は遠慮なく歯科医師に伝え、納得できるまで相談しましょう。日本歯科札幌では、検査結果をもとに固定方法を含む治療の選択肢とリスクを説明し、患者さまのご希望をうかがいながら治療計画を一緒に考えています。インプラントの初回相談は0円です。お気軽にご相談ください。
よくある質問
スクリュー固定とセメント固定は、どちらが良いですか?
どちらが一律に優れているということはありません。取り外しやすさを重視するならスクリュー固定、見た目を重視するならセメント固定が選ばれることが多いです。部位や噛み合わせなどをふまえて歯科医師が判断します。
スクリュー固定のネジがゆるんだらどうすればいいですか?
人工歯がぐらつく、カチカチ音がするなどの変化があれば、早めに歯科医院を受診してください。ネジのゆるみであれば締め直しで対応できることが多いです。放置すると部品が壊れることがあります。
スクリュー固定のネジ穴は目立ちますか?
ネジ穴は歯の色に近い材料で塞ぐため、目立ちにくいことが多いです。ただし、材料が変色したり、前歯では位置によって目立ったりすることがあります。気になる場合は事前に相談しましょう。
固定方法によってお手入れは変わりますか?
毎日のお手入れの基本は同じで、歯ぐきとの境目を丁寧に磨き、フロスや歯間ブラシを使います。どちらの方法でも、歯科医院での定期的なメンテナンスが大切です。