糖尿病でもインプラントはできる?血糖コントロールとリスク・注意点
結論:糖尿病があっても、インプラント治療を受けられる場合があります。ただし、血糖がコントロールされていない糖尿病は、感染やインプラントがうまくいかないリスクを高めるとされています[1]。治療できるかどうかは、血糖の状態や全身の状態をふまえ、歯科医師が内科の主治医と連携して判断します[2]。
この記事では、糖尿病の方がインプラントを検討するときに知っておきたいリスクと注意点を解説します。
糖尿病とインプラントの基礎知識
糖尿病は血糖値が慢性的に高くなる病気で、口の健康とも深く関わっています。
糖尿病とはどんな病気?
糖尿病は、血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)が高い状態が続く病気です。血糖のコントロールがうまくいかない状態が続くと、血管や神経に負担がかかり、さまざまな合併症の原因になります。大きく1型と2型に分けられます。
糖尿病と歯周病の関係
糖尿病は、喫煙と並んで歯周病の二大危険因子とされています[3]。反対に、歯周病が血糖コントロールを悪くする可能性も指摘されています[3]。歯周病の治療を行うと血糖コントロールが改善する可能性があるとされています[3]。
インプラント治療とは?
インプラント治療は、歯を失った部分のあごの骨に人工歯根を埋め、その上に人工歯を装着する治療です。しっかり噛みやすく、隣の歯を削らずに済む一方、手術が必要で、全身状態が整っていないとうまくいかないことがあります[4]。
糖尿病の方のインプラント治療で注意したいリスク
糖尿病の方は、感染、傷の治りの遅れ、インプラント周囲の炎症、低血糖に特に注意が必要です。
1. 感染のリスク
米国食品医薬品局(FDA)は、コントロールされていない糖尿病は全身の感染やインプラントの失敗のリスクを高める可能性があると説明しています[1]。手術では歯ぐきを切開するため、傷口から細菌が入るおそれがあります。
2. 傷の治りが遅れやすい
血糖が高い状態が続くと血管がダメージを受け、傷の治りに必要な栄養や酸素が届きにくくなります。治療後の回復に時間がかかり、経過をより慎重に見る必要があります。
3. インプラント周囲の炎症や骨の吸収
2型糖尿病の方の研究をまとめた報告では、インプラントの失敗率は糖尿病のない方と同程度だった一方、インプラント周囲の出血や骨の吸収は多かったとされています[5]。同じ報告では、口の清掃が十分に保たれていれば、血糖値の高さとインプラント周囲の状態に関連はみられなかったとしています[5]。治療後の口腔ケアが特に大切だといえます。
4. 低血糖のリスク
インスリンや飲み薬で治療している方は、手術の前後に食事がとりにくくなると低血糖を起こすおそれがあります。低血糖になると、冷や汗・動悸・手のふるえなどが現れ、重くなると意識がもうろうとすることもあります。薬の量は自己判断で変えず、主治医の指示に従いましょう。
糖尿病でもインプラント治療は受けられる?
血糖がコントロールされていれば、インプラント治療を検討できる場合があります。
日本口腔インプラント学会は、糖尿病がある場合は注意が必要で、全身状態や服薬状況を歯科医師に正確に伝えるよう求めています[2]。治療の可否は、HbA1c(過去1〜2か月の血糖の平均を反映する検査値)などの検査結果をもとに、歯科医師と内科医が連携して判断します。
また、インプラント手術の前に、歯周病やむし歯の治療を済ませておくことが大切です[6]。歯周病がある場合は先に治療することが勧められています[2]。
治療を受ける際の5つの注意点
糖尿病の方がインプラントを受けるときは、血糖管理・内科との連携・術後の管理の3つが柱になります。
1. 血糖のコントロール状況を確認する
治療の可否を左右する大きな要素は、血糖がどれだけ安定しているかです。食事療法・運動療法・薬物療法を主治医の指示どおり続け、手術前には最新の検査値を歯科医師に伝えましょう。
2. 内科の主治医に事前に相談する
インプラント治療を受けることを主治医に伝え、相談しておきましょう。手術では局所麻酔や薬を使うため、服用中の薬との関係を確認することが大切です。
3. 低血糖に備える
過去に低血糖を起こしたことがある方は、主治医と相談し、ブドウ糖などを用意しておきましょう。手術の時間帯や当日の食事・薬についても、事前に確認しておくと安心です。
4. お口の環境を整えておく
手術の前に歯周病やむし歯の治療、歯石の除去を行い、歯ぐきを健康な状態にしておきます[6]。
5. 術後の食事と生活習慣に注意する
手術後は一時的に食事がとりにくくなることがあります。治療計画の段階で術後の食事の見通しを立て、必要に応じて主治医に薬の調整を相談しましょう。
インプラント治療の流れ・期間・費用
インプラント治療は手術を伴う自由診療です。内容とリスクを理解したうえで検討しましょう。
- 標準的な流れ:相談・検査(レントゲン・CT・血液検査など)→ 歯周病などの事前治療 → 埋入手術 → 骨と結合するまでの治癒期間 → 人工歯の装着 → 定期メンテナンス[6]
- 期間:骨の状態や骨造成の必要性によって大きく変わります[2]。
- 主なリスク:痛み・腫れ・出血・感染、神経の損傷によるしびれ、インプラントが骨と結合しないことなどがあります[1][4]。
- 費用:原則として健康保険が適用されない自由診療です[2]。日本歯科グループの公式サイトでは、インプラント1本あたりの費用を15万〜45万円(税込・公式サイト記載の料金、症例により別途費用あり。レントゲン・CTスキャン・手術代を含む)としています。詳しくは日本歯科グループのインプラント治療ページをご覧ください。
治療後のケアが長持ちのポイント
インプラントを長く使うには、毎日のセルフケアと定期的なメンテナンスが欠かせません。
- 歯ブラシで歯ぐきとの境目を丁寧に磨き、歯間ブラシやフロスも使う[7]
- 3か月〜半年ごとを目安に定期健診を受ける[7]
- 食事・運動などの生活習慣を整え、血糖のコントロールを続ける
- 喫煙している方は禁煙または減煙を検討する[2]
インプラント周囲の歯ぐきに炎症が起こる「インプラント周囲炎」は、早めに見つけて対処することが大切です[8]。
まとめ
糖尿病があっても、血糖がコントロールされ、お口の環境が整っていれば、インプラント治療を検討できる場合があります。一方で、感染や傷の治りの遅れ、低血糖などのリスクがあるため、内科の主治医と歯科医師の連携が欠かせません。
糖尿病をお持ちでインプラントを検討している方は、まずは主治医と歯科医院にご相談ください。日本歯科静岡では、インプラントの初回相談(0円)を受け付けています。糖尿病の方の治療の可否や判断の目安は、詳しくは各院にお問い合わせください。
よくある質問
糖尿病だとインプラントは断られますか?
必ず断られるわけではありません。血糖のコントロール状態や全身の状態を確認し、治療できるかを判断します[2]。コントロールが不十分な場合は、まず血糖の改善を優先することがあります[1]。
HbA1cがいくつならインプラントができますか?
一律の基準で決まるものではなく、検査値や合併症の有無、服薬状況などを総合して判断します。内科の主治医と歯科医師が連携して判断しますので、最新の検査結果をお持ちください。
糖尿病の人はインプラントが長持ちしませんか?
2型糖尿病の方でも、インプラントの失敗率は糖尿病のない方と同程度だったという報告があります[5]。ただしインプラント周囲の炎症は起こりやすいとされるため、毎日の清掃と定期健診が大切です[5][7]。
手術の日は糖尿病の薬を飲んでもよいですか?
薬の飲み方は自己判断で変えず、事前に内科の主治医と歯科医師に確認してください。手術前後は食事がとりにくくなることがあり、低血糖を防ぐための調整が必要な場合があります。
参考情報
- U.S. Food and Drug Administration「Dental Implants: What You Should Know」
- 公益社団法人日本口腔インプラント学会「インプラントQ&A」
- 愛知県医師会・愛知県歯科医師会・愛知県薬剤師会「糖尿病と歯周病との関係」
- 公益社団法人日本口腔インプラント学会「インプラントのメリット・デメリット」
- ADA News「March JADA finds implant failure rates similar in diabetic, nondiabetic patients」(2021年2月)
- 公益社団法人日本口腔インプラント学会「相談から治療の流れ」
- 公益社団法人日本口腔インプラント学会「インプラントのお手入れ」
- 日本歯周病学会 ペリオブック「インプラントの歯周病『インプラント周囲炎』について」