全部の歯をインプラントにすることはできるの?費用やメリットについても解説
インプラント治療で“全部の歯を新しく”と考えると、ハードルが高そうに思えます。しかし適切な検査や手術計画を行い、経験豊富な医師による施術を受けることで、想像以上に快適で、自然な噛み心地と美しい口元を手に入れることが可能です。特に「全部インプラント」(All-on-4やAll-on-6などのフルアーチインプラント)であれば、総入れ歯では得られない安定感と機能性を実感しやすくなります。
全部インプラント(フルアーチインプラント)とは?
「全部インプラント」の基本的な概念
歯がほとんど残っていない、もしくはすべて失ってしまった場合の治療方法のひとつとして、少ない本数のインプラントを用いて上下の顎の歯全体を支える手法が「フルアーチインプラント」です。All-on-4やAll-on-6は代表的な例で、4本または6本のインプラントを顎に埋め込み、その上に複数本の人工歯(上部構造)を固定します。
従来であれば、失った歯の本数に応じてインプラントを1本ずつ埋め込むため、費用や手術回数が増える傾向にありました。しかしAll-on-4であれば最小4本で、All-on-6でも最小6本で全顎を支えることができるため、費用面や身体的な負担が大幅に軽減されるのが特長です。
総入れ歯との違い
総入れ歯では、どうしても「ずれ」や「外れやすさ」が気になりがちです。さらに歯肉への負担が大きく、長期使用で顎の骨がやせる(吸収される)リスクもあります。一方、フルアーチインプラントは骨と結合したインプラントを支点に人工歯を固定するため、入れ歯に比べて見た目も機能も安定しやすく、咀嚼力が向上しやすいメリットがあります。
インプラント治療に伴う神経損傷リスクとは
神経損傷の概要
インプラント手術のリスクのひとつに挙げられるのが「神経損傷」です。特に下顎の奥歯周辺には下歯槽神経などの重要な神経が通っており、埋め込み位置が神経に近すぎると痛みや麻痺、痺れなどの症状が発生する可能性があります。歯科用CTやサージカルガイドなどを用いた綿密な計画が必須となるのは、こうした神経を守るためです。
どこに神経損傷が起きやすいか
一般的に神経損傷が起きやすい部位は「下顎」です。下顎の骨内部には下顎管という神経や血管が通る管があり、特に
- 下顎奥歯周辺
- オトガイ神経付近
- 下歯槽神経付近
でリスクが高まります。一方、上顎では大きな神経幹が通過する位置が異なるため、神経損傷リスクは相対的に低い傾向にあります。
神経損傷が起きる原因と症状
神経損傷が発生する主な要因
神経損傷には大きく分けて「直接的な損傷」と「神経の圧迫」の2種類があります。
原因 | 内容 |
---|---|
直接的な神経損傷 |
|
神経の圧迫 |
|
特にドリル操作時のミスや、インプラント埋め込み位置のズレが大きな原因となるため、神経保護には高精度な診断技術とガイドシステムの使用が重要です。
痛み・麻痺・痺れの特徴
神経損傷が起きると、手術後に以下のような症状が現れる場合があります。
- 数日経っても強い痛みが続く、または悪化していく
- 下唇や顎先(オトガイ付近)が触っても感覚が薄い、もしくは完全に麻痺する
- 舌や歯茎にピリピリした痺れが持続する
麻酔が切れた後しばらく違和感や軽い痺れを感じることは珍しくありませんが、数週間たっても改善しない場合は早めに受診することが大切です。
神経損傷の治療法と予防策
神経損傷が疑われる際の対処
もし神経損傷が疑われる症状が出た場合、まずは担当医にすぐ相談しましょう。神経が切断または激しく損傷している場合は、以下のような処置が行われることがあります。
- インプラント体を一度取り、神経が回復するか経過を観察
- 神経修復手術(縫合や神経移植など)
- 神経ブロック治療や近赤外線照射などの補助療法
特に神経修復は、発覚から時間が経過しすぎると成功率が下がるため、症状があれば早急にクリニックを受診することが望ましいです。
神経損傷の予防策
神経損傷のリスクを極力回避するためには、以下のポイントを押さえておくと良いでしょう。
- 歯科用CT撮影による三次元的な神経位置の把握
- サージカルガイドを用いた正確なドリル操作と埋め込み
- 豊富なインプラント症例を持つ医師の選択
- 治療前のカウンセリングでリスクや保証内容を明確に確認
これらを徹底することで、安全性が格段に高まるインプラント治療が可能となります。
All-on-4(オールオン4)の特徴とメリット
最小限のインプラント本数でフルブリッジを支える
「All-on-4」とは、その名の通り4本のインプラントで上下いずれかの顎の歯列全体(最大12本相当)を支える治療法です。抜歯やインプラントの埋め込み、そして仮歯の装着が同日に完結するため、手術当日から見た目が大きく変わる利便性の高さが注目されています。
通常、フルブリッジを作る場合は8本以上のインプラントが必要と考えられる場合も多かったのですが、All-on-4では本数を抑えながら十分な支持力を得られます。これにより、手術の傷や負担、費用負担が軽減できるのが魅力です。
即時負荷と仮歯装着
All-on-4の大きなメリットとして、即時負荷が挙げられます。骨の状態や埋め込み時の安定度によっては、手術後すぐに仮歯を装着可能で、その日から食事を開始できます。従来のインプラント治療に比べて治療期間が短縮される点も、多くの患者さんから支持を集める理由のひとつです。
静脈内鎮静や全身麻酔の活用
複数本のインプラントを同時に埋め込むため、手術時間は比較的長めになります。ただし、静脈内鎮静法や全身麻酔を併用できるクリニックが増えており、術中の痛みや不安感を大幅に軽減することが可能です。痛みに弱い方や恐怖感が強い方でも、リラックスした状態で手術を受けられます。
All-on-6(オールオン6)の選択肢と比較
「骨の状態」による施術選択
All-on-4よりも2本多いインプラントを埋め込む「All-on-6」も存在します。骨がやわらかい、または吸収が大きい場合などで安定性を高めたい場合は、All-on-6が適することもあります。4本ではなく6本の柱を立てることで、力の分散や支えが増すため、長期的な耐久性が高まると考えられています。
治療コストと難易度
インプラントが増える分、費用はAll-on-4よりも高くなる傾向にあります。また、手術の難易度や時間もやや上がるため、医師の経験と技術力がさらに重要です。担当医としっかり相談し、自分の骨量や全身状態に最適な方法を選びましょう。
費用面・保証とクリニック選びのポイント
インプラント治療の費用と内訳
フルアーチインプラントの場合、片顎で200万円以上の費用がかかることが一般的です。
- インプラント本体の費用
- 上部構造(仮歯・最終義歯)の費用
- 手術に伴う静脈内鎮静費用など
ただし総入れ歯と異なり、「使い心地」や「メンテナンス性」、「長期的なメリット」が得られやすいので、長期的な視点でコストパフォーマンスを考えることが重要です。
保証制度やアフターケアの有無
クリニックによっては、インプラント治療後のトラブルに対する保証制度を設けているところがあります。万が一の神経損傷やインプラント周囲炎などのリスクに備え、術後のアフターケアをきちんと提供してくれるかを必ず確認しましょう。また、治療プランを立てる際に保証の範囲や適用条件、費用負担についても細かく把握しておくことが大切です。
まとめ
全部インプラント(フルアーチインプラント)は、総入れ歯のズレや外れ、咀嚼力の低下といった悩みを大きく解消できる治療法です。特にAll-on-4やAll-on-6などは、少ない本数で最大限の安定と即時性を実現できるため、多くの患者さんの笑顔と生活の質向上に貢献しています。
一方で、神経損傷などのリスクもゼロではありません。しかし、事前の精密検査やガイドシステム、経験豊富な医師の手技によって、そのリスクを最小限に抑え、安全かつ効率的な治療を受けることが可能になっています。もし一度断られた経験がある方も、ぜひセカンドオピニオンを活用し、自分に合った最適な治療プランを探してみてください。
日々の食事や会話が楽しくなるだけでなく、心から笑える快適な口元ライフを目指して、一歩踏み出してみましょう。
日本歯科グループのクリニックでは、豊富な治療実績と先端の技術力を活かし、患者さまの希望に沿ったオーダーメイドのインプラント治療を提供しています。専門スタッフのチーム医療と充実したサポート体制で、術前の疑問や不安をしっかりと解消しながら、安全・安心の治療を目指します。まずはお気軽にご相談ください。