歯が抜けたときの差し歯の値段|保険・自費の費用の考え方と治療の選び方
歯が抜けたときの差し歯の費用は、被せ物だけが外れたのか、歯根が残っているのか、歯根まで失ったのかで変わります。歯根がなければ差し歯は入れられないため、ブリッジや入れ歯、インプラントを検討します。保険の点数と見積もりの確認点も解説します。
まず確認したいのは「歯根が残っているか」
一般に差し歯と呼ばれる治療は、残っている自分の歯根に土台を立て、その上に冠を被せる方法です。以前は心棒と歯が一体になったものが主流でしたが、現在は土台と冠を別々に作るのが一般的です[1]。差し歯は自分の歯根を利用する治療のため、歯根がない場所には入れられません[1]。
「差し歯が抜けた」と感じても、実際の状態は人によって異なります。何が外れ、何が残っているかで、治療内容も費用も変わります。
| 起きていること | 主な治療 | 費用の考え方 |
|---|---|---|
| 被せ物だけが外れた | 状態がよければ付け直し。合わなければ冠の作り直し | 付け直しなら負担は比較的少ない。作り直しは冠の費用がかかる |
| 土台ごと外れた | 土台の作り直し、必要に応じて根の治療、冠 | 土台・根の治療・冠を合わせた費用になる |
| 歯が折れた・歯根にひびがある | 折れ方を診て、歯を残すか抜くかを判断 | 残せない場合は、失った歯を補う治療の費用になる |
| 歯根がない | ブリッジ、部分入れ歯、インプラント | 方法ごとに費用の構成が大きく異なる |
外れた被せ物は捨てずに持参してください。もう一度使えるかは歯科医院で確認します。市販の接着剤などで自分ではめ直すことは避けましょう。
前歯の差し歯が外れたときの応急対応は、前歯の差し歯が欠けた・外れたときの対処法で詳しく説明しています。
ぶつけて歯が丸ごと抜けたときは、費用より受診が先
転倒や衝突で大人の歯が根元から抜けた場合は、元の歯を戻せる可能性があるため、すぐに歯科へ連絡してください[2]。歯は白い頭の部分を持ち、根には触れないようにします。乾かさないように牛乳などに入れて持参してください[2]。子どもの乳歯は元に戻さないため、無理に戻そうとせずに受診します[2]。
顔の腫れ、止まらない出血、強い痛みがある場合も、費用を調べる前に早めに受診しましょう。
保険の差し歯はいくら?点数の見方
保険診療の費用は、国が定める診療報酬点数表の点数を合計して計算します。1点は10円で、窓口ではその合計に自己負担割合(1〜3割)を掛けた額を支払います[3]。
例えば令和8年度の点数表では、前歯のレジン前装金属冠(ブリッジの支えにしない場合)は1歯1,170点です[3]。ただし、これは冠を作る技術の部分の点数です。金属の材料料は別に加わり、金属の価格に合わせて定期的に見直されています。さらに、診察・検査、土台、型取り、装着の費用、根の治療が必要ならその費用も合計されます。
保険で使える白い冠(CAD/CAM冠)もあります。ただし、歯の部位、残っている歯の量、かみ合わせなどの条件を満たす場合に使われます[4]。「保険で白い歯にできますか」と、ご自身の歯で使えるかを具体的に確認しましょう。
保険診療は医院による料金の差が小さい一方、必要な処置の数で総額が変わります。治療を始める前に、終わるまでのおおよその総額と、1回ごとの支払いの目安を聞いておくと安心です。
自費の差し歯は、何が含まれた金額かを確認する
自由診療の料金は医院ごとに決められていて、全国共通の価格はありません。同じセラミックの冠でも、土台や仮歯、根の治療を含むかどうかで金額の見え方が変わります。
日本歯科グループの公式サイトでは、セラミック・ジルコニアの被せ物は1本88,000円〜、詰め物は1本33,000円〜と掲載しています(症例により別途費用あり)。根の治療や土台の作り直しが必要な場合は、別に費用がかかることがあります。詳しくはセラミックやジルコニアのページをご覧ください。
見積もりを比べるときは、次の点をそろえて確認しましょう。
- 土台(支台築造)の費用が含まれているか
- 仮歯の費用が含まれているか
- 根の治療が必要か、必要ならその費用はいくらか
- 保証の有無と、保証の対象・条件
- 治療期間と通院回数
歯根を失った場合は、歯を補う治療を選ぶ
歯根まで失った場所では、差し歯ではなく、失った歯を補う治療を選びます[1]。
| 方法 | 仕組み | 費用の考え方 |
|---|---|---|
| ブリッジ | 両隣の歯を支えにして、つながった人工歯を固定する[1] | 支えの歯を含めた複数本分の費用。支えの歯を削る必要がある |
| 部分入れ歯 | 取り外し式の人工歯を、残っている歯にばねなどで留める | 保険と自費があり、設計や材料で変わる。調整のための通院も必要 |
| インプラント | 顎の骨に人工歯根を埋め、その上に人工歯を付ける[5] | 原則自由診療。検査・手術・人工歯を含めた総額で確認する |
インプラントは、病気や事故で顎の骨を大きく失った場合など限られたケースを除き、保険が適用されません[5]。手術を伴うため、全身の状態や骨の量を調べる検査が必要です。治療後も、清掃と定期的な診察が欠かせません[5]。
日本歯科グループの公式サイトでは、インプラント1本あたりの費用を、保証期間により3種類(保証10年:35万〜45万円、保証5年:25万〜35万円、保証1年:15万〜25万円)と掲載しています(税込。人工歯の材質により異なり、レントゲン・CTスキャン・手術代を含む)。骨を増やす処置などが必要な場合は別に費用がかかります。詳しくはインプラント治療のページをご覧ください。
抜歯したばかりの場合の治療時期は歯を抜いた後すぐ差し歯はできる?、差し歯とインプラントの違いは差し歯とインプラントの違いと値段で解説しています。
医療費控除の対象になることがある
治療のために必要な歯の治療費は、自由診療のセラミックなどでも医療費控除の対象になることがあります。ただし、一般的な水準を大きく超える高価な材料の費用は、対象にならない場合があります[6]。領収書は保管しておきましょう。
よくある質問
歯根がない場所に、差し歯を1本だけ入れられますか?
入れられません。差し歯は自分の歯根を使う治療です[1]。歯根がない場合は、ブリッジ、入れ歯、インプラントから選びます。
外れた差し歯を持って行けば、安く済みますか?
付け直しができれば、作り直すより負担は抑えられます。ただし、冠が変形していたり、中でむし歯が進んでいたりすると使えません。持参して確認してもらいましょう。
痛くなければ、しばらく放置してもよいですか?
痛みがなくても、外れた原因がむし歯や歯のひびのことがあります。放置すると歯根を残せなくなるおそれがあるため、早めに受診してください。
保険と自費は、どちらを選べばよいですか?
見た目、強さ、費用、残っている歯の状態によって向き不向きがあります。材料の名前だけで決めず、ご自身の歯に使える方法と、それぞれを勧める理由を説明してもらいましょう。
まとめ
差し歯の費用は、被せ物だけが外れたのか、土台や歯根に問題があるのか、歯根まで失ったのかで変わります。外傷で歯が丸ごと抜けた場合は、費用より受診を優先してください。保険の点数は項目ごとの金額で、総額ではありません。自由診療は含まれる範囲が医院ごとに違うため、見積もりの内訳を確認して、納得できる方法を選びましょう。
参考文献
- 日本歯科医師会「さし歯・冠・ブリッジ」テーマパーク8020 https://www.jda.or.jp/park/lifestage/BK/index18.html
- NHS「Knocked-out tooth」 https://www.nhs.uk/conditions/knocked-out-tooth/
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」(歯科点数表) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
- 日本歯科医学会「CAD/CAM冠に関する基本的な考え方」(令和8年3月) https://jads.jp/assets/pdf/basic/r08/document-260415-1.pdf
- 日本口腔インプラント学会「よくあるご質問」 https://www.shika-implant.org/min-implant/faq/
- 国税庁「No.1128 医療費控除の対象となる歯の治療費の具体例」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1128.htm