結論:大人の永久歯が転倒などで抜けたときは、歯の白い部分(歯冠)だけを持ち、根に触れず、牛乳や唾液に入れて乾燥させないようにし、できるだけ早く歯科を受診してください[1][2]。歯が口の外にある時間が短いほど、元の位置に戻す「再植」の見通しがよいとされています[2]。歯が見つからない場合でも、早めの受診が勧められます[1]。
この記事では、歯が抜けたときの応急処置、受診までの流れ、再植ができない場合の治療法を解説します。
大人が転んで歯が抜けたときの応急処置
応急処置の基本は「止血する」「抜けた歯を正しく持つ」「乾燥させずに保存する」「すぐに歯科を受診する」の4つです。
応急処置の基本ステップ
- 落ち着いて、けがの状況を確認する
- 出血していれば、清潔なガーゼなどで止血する
- 抜けた歯を探し、白い部分(歯冠)だけを持つ[1]
- 歯を牛乳や唾液に入れて乾燥させない[1]
- すぐに歯科医院へ連絡し、受診する[1]
止血の方法
- 清潔なガーゼやハンカチを、歯が抜けた部分に当てて軽く噛む、または押さえる
- しばらく押さえ続けると、多くの場合は出血が落ち着く
- 強いうがいは、傷口の血のかたまりがはがれて出血が続く原因になるため避ける
頭を強く打った、意識がぼんやりする、出血が止まらない、顔の骨が痛むなどの場合は、歯科より先に救急医療機関の受診や救急要請を検討してください。
抜けた歯の正しい扱い方
歯の根の表面には、再植に大切な「歯根膜(しこんまく)」という組織が付いています。これを傷つけると予後が悪くなるとされています[2]。
| してよいこと | 避けること |
|---|---|
| 白い部分(歯冠)だけを持つ[1][2] | 根の部分に触る[1][2] |
| 汚れていれば、牛乳や唾液で軽くすすぐ[1] | 歯をこする、消毒する[2] |
| 牛乳や唾液に入れておく[1] | 乾燥させる、ティッシュで包む |
抜けた歯の保存方法
抜けた歯は、乾燥させないことが大切です。保存に使えるものは次のとおりです。
- 歯の保存液:専用の保存液(ハンクス平衡塩溶液など)が最も望ましいとされています[2]
- 牛乳:保存液がない場合の次善の方法です[1][2]
- 唾液:容器に唾液を出し、その中に入れます[1]
水は使わないようにします[2]。なお、意識がはっきりしている大人であれば、抜けた歯を元の穴にそっと戻し、清潔な布を軽く噛んで固定してから受診する方法もあります[1]。ただし無理に押し込まず、戻らない場合は牛乳や唾液に入れて持参してください[1]。歯を口の中に入れておく場合は、飲み込まないよう注意が必要です[2]。
子どもの乳歯の場合
乳歯は元の位置に戻さないでください。下で育っている永久歯を傷つけるおそれがあります[1]。乳歯か永久歯か分からない場合も、そのまま保存して歯科を受診しましょう。
歯科を受診するまでの流れ
歯が抜けたら、見つからない場合も含めて、できるだけ早く歯科を受診します[1]。
歯科医院への連絡
- かかりつけの歯科医院があれば、まず連絡する
- 休日・夜間は、地域の休日歯科診療所などを探す
- 電話で「転んで永久歯が抜けた」「歯は牛乳に入れてある」など、状況を具体的に伝える
歯科医院での検査
- エックス線撮影による、歯の根や顎の骨の状態の確認[1]
- 抜けた歯と、歯が入っていた穴の状態の確認
- ほかの歯や唇、歯ぐきのけがの確認
- 全身の状態や持病、服薬の確認
検査の結果をもとに、再植ができるかどうか、ほかの治療法について説明を受けます。
歯が抜けた後の治療の選択肢
条件がそろえば、まず抜けた歯を元に戻す再植を検討し、難しい場合は入れ歯・ブリッジ・インプラントなどで補います[1]。
再植(抜けた歯を元に戻す治療)
再植では、歯をきれいにして元の位置に戻し、隣の歯と固定します[1][2]。
- 時間の目安:口の外にあった時間が短いほど望ましく、時間がたつほど見通しは悪くなるとされています[2]
- 固定:やわらかい材料で隣の歯とつないで固定します[2]
- 経過観察:およそ2週間後の受診で、根の治療や固定の除去を行うことがあります[1]
- 根の治療:再植がうまくいっても、多くの場合は最終的に根の治療(根管治療)が必要です[2]
長期的には、歯の根が溶ける「歯根吸収」や、根と骨がくっつく「アンキローシス」が起こることがあります[2]。そのため、再植後も定期的な経過観察が必要です。
再植が難しい場合の治療法
歯が見つからない、保存状態や時間の経過から再植が難しい場合などは、傷が治る間に仮の入れ歯を使い、その後ブリッジやインプラントを検討することがあります[1]。
| 治療法 | 特徴 | 主な利点 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| 部分入れ歯 | 取り外し式。隣の歯に留め具をかけて支える[3] | 保険内であれば比較的安価[3] | 着脱や手入れの手間、留め具をかけた歯への負担[3] |
| ブリッジ | 両隣の歯を削り、一体型の人工歯を固定する[3] | 治療期間が比較的短く、噛み心地が自分の歯に近い[3] | 支えになる歯を削り、負担が大きい[3] |
| インプラント | 顎の骨に人工の歯根を埋め、その上に歯を作る[3] | 隣の歯を削らず、取り外し不要[3] | 保険適用外で費用が比較的高額、治療期間が長め[3] |
インプラントを検討する場合
インプラントは、隣の歯を削る必要がなく、残っている歯への負担が少ない方法です[3]。一方で、次の点を理解しておく必要があります。
- 自由診療:保険適用外で、費用は比較的高額です[3]。日本歯科グループのインプラント治療費用は、インプラント1本あたり15万円〜45万円(インプラントの種類と人工歯の素材により異なり、レントゲン・CTスキャン・手術代を含む)、保証期間はストローマン10年・ネオデント5年・バイオテム1年です(税込・公式サイト記載の料金、症例により別途費用あり)。
- 標準的な流れ:検査→インプラント埋入手術→骨との結合を待つ期間→人工歯の装着→定期メンテナンス
- 主なリスク:手術による痛み・腫れ・出血・合併症、インプラント周囲の感染など[4]
- 前提:埋める場所に十分な骨があること、定期的なメンテナンスを続けること[4]
けがの直後は、まず歯や歯ぐき、骨の回復を優先します。どの方法が適しているかは、年齢、骨の状態、ご希望などをふまえて歯科医師と相談しましょう。
治療後のケアと、歯のけがの予防
どの治療を選んでも、治療後の清掃と定期的な経過観察が大切です。
治療後のケア
- 歯科医師の指示に沿った歯みがきと清掃
- 治療した部分に負担をかけない食事の工夫
- 定期的な歯科受診による経過観察
- 喫煙を控える(インプラントの場合、喫煙者は残存率が低いとされています[5])
歯のけがを防ぐために
- 接触の多いスポーツでは、マウスガードを使う
- 滑りやすい場所や暗い階段では足元に注意する
- 自転車に乗るときは、ヘルメットなどで頭や顔を守る
- 高齢の方は、手すりの設置や段差の解消など転倒しにくい環境を整える
まとめ
- 永久歯が抜けたら、白い部分を持ち、根に触れず、乾燥させないことが大切です。
- 保存には専用の保存液、なければ牛乳や唾液を使います。水は避けます。
- 歯が見つからない場合も含め、できるだけ早く歯科を受診しましょう。
- 再植が難しい場合は、入れ歯・ブリッジ・インプラントなどから検討します。
日本歯科札幌では、保険診療からインプラント治療まで幅広く対応しています。受付時間は月・火・水・金・土の10:00〜13:30/14:30〜18:00で、完全予約制です。休日・夜間の急患対応については、詳しくは医院にお問い合わせください。インプラントを含め、治療内容やリスクについて疑問や不安があれば、まずはお気軽にご相談ください。詳しくは日本歯科グループのインプラントのページをご覧ください。
よくある質問
抜けた歯は水道水で洗ってもいいですか?
水は使わないことが勧められています[2]。汚れている場合は、牛乳や唾液で軽くすすぐ程度にとどめ、根の部分はこすらないでください[1][2]。
抜けた歯が見つからない場合も受診したほうがいいですか?
歯が見つからない場合も、早めに歯科を受診することが勧められています[1]。ほかの歯や歯ぐき、骨のけがの確認も必要です。
抜けた歯は自分で元に戻してもいいですか?
大人の永久歯で、簡単に戻る場合は、元の穴に戻して清潔な布を軽く噛んで固定し、すぐに受診する方法があります[1]。無理に押し込まず、戻らない場合は牛乳や唾液に入れて持参してください。乳歯は戻してはいけません[1]。
再植した歯はずっと使えますか?
再植がうまくいっても、多くの場合は根の治療が必要で、長期的に歯根吸収などが起こることもあります[2]。定期的な経過観察を続けることが大切です。
歯が欠けただけの場合も受診すべきですか?
欠けた歯や、ぐらついている歯も、見た目以上に根や神経が傷ついていることがあります。欠けた破片があれば保存して、早めに歯科を受診してください。