結論:インプラント手術の前には、レントゲン検査が必要です。歯ぐきの下にある骨の量や形、神経や上顎洞(じょうがくどう:上あごの奥にある空洞)の位置は、目で見ても分かりません。パノラマ・デンタル(口内法)レントゲンにCT検査を組み合わせて調べ、安全な治療計画を立てます。
この記事では、レントゲンが必要な理由、検査の種類と違い、検査でわかること、治療後の経過観察での役割を、患者さん向けに分かりやすく説明します。
インプラント手術にレントゲンが必要な理由
インプラント手術にレントゲンが必要なのは、骨の中の構造を見ないと、安全な位置と深さを決められないからです。インプラントは顎の骨に直接埋め込むため、骨の内部を事前に把握することが前提になります。
術前の画像検査では、主に次の点を確認します[2]。
- 残っている骨の高さ・幅・形
- 下顎管(かがくかん:下あごの神経と血管の通り道)やオトガイ孔の位置
- 上顎洞の位置と骨との距離
- 歯や骨の病変(病気の部分)の有無
神経や上顎洞の位置を確認するため
下あごの奥歯の治療では、神経の位置の確認がとても大切です。手術時のトラブルの代表例として、神経が傷つくことによる下唇のしびれが挙げられています[1]。しびれは数か月で回復することが多いものの、まれに長く残る場合もあるとされています[1][4]。
上あごの奥歯では、上顎洞までの骨の厚みを確認します。骨が薄い場合は、骨を補う処置が検討されることがあります。どの方法が適するかは、検査結果をもとに歯科医師が判断します。
骨の量と形を確認するため
インプラントを支えるには、十分な骨の量が必要です。画像検査で骨の幅と高さ、骨の外形の傾きなどを確認します[2]。骨が足りない場合は、骨造成(こつぞうせい:骨を増やす処置)などの追加治療を検討します。
なお、骨の「硬さ(骨質)」は画像だけでは評価しきれない面があります。CTの数値で骨質を評価できる根拠は乏しいとされています[2]。手術中の感触なども含めて総合的に判断します。
歯周病や虫歯など、治療の妨げを見つけるため
レントゲンでは、周りの歯の歯周病や見えない虫歯も確認できます。重い歯周病のまま歯を放置すると、骨の形が悪くなり、その後のインプラント治療に不利になるとされています[3]。治療が必要な病気があれば、インプラントの前に治療を行います。
インプラント治療で使うレントゲン・CTの種類
インプラント治療では、目的に応じて複数の画像検査を組み合わせます。初診時にはパノラマと口内法(デンタル)レントゲンを撮影し、術前にはCTと組み合わせることが勧められています[2]。
| 検査の種類 | 撮影範囲 | 主にわかること |
|---|---|---|
| パノラマレントゲン | 上下の顎全体(1枚) | 顎の骨全体の形、残っている歯の状態、顎関節を含む全体像 |
| デンタル(口内法)レントゲン | 1〜数本の歯の範囲 | 1本ずつの歯や周りの骨の細かい状態 |
| CT(歯科用CTなど) | 顎の骨を立体的に | 骨の幅・高さ、神経や上顎洞との距離を三次元で把握 |
パノラマレントゲン:お口全体を1枚で確認
パノラマレントゲンは、上下の顎全体を1枚で撮影する検査です。顎関節を含めた顎の骨の状態を把握できます[3]。治療を始める前の全体チェックに使います。一方で、画像に拡大率があるため、位置を測る精度には限界があります[2]。
デンタルレントゲン:細かい部分を詳しく確認
デンタルレントゲン(口内法)は、小さな範囲を詳しく撮影する方法です。1本1本の歯や、その周りの骨の状態を細かく見ることができます[3]。インプラントを入れる場所の周辺や、隣の歯の根の状態の確認に役立ちます。
CT検査:骨を立体的に確認
CT検査は、顎の骨を三次元(立体)で確認できる検査です。手術前にCTで顎の骨の形を立体的に診断しておくことが有用とされています[1]。CTによる距離の計測は、臨床的に十分な精度があるとされています[2]。
CTとレントゲンは、どちらか一方で足りるものではありません。それぞれの特性を活かして組み合わせます。どの検査をどこまで行うかは、治療部位やお口の状態によって歯科医師が判断します。
レントゲンの被ばくは心配いりませんか?
歯科のレントゲン検査の被ばく量は、問題のない範囲とされています[3]。歯科医師は、診断に必要な範囲で撮影を行います。妊娠中またはその可能性がある方は、撮影前に必ずお申し出ください。
検査結果をもとにした治療計画
検査結果は、インプラントの位置・角度・深さ・サイズを決める基礎になります。あわせて、骨造成の必要性や、先に行うべき歯周病治療・根管治療の有無も判断します。
- 初診・カウンセリング(お悩みや希望の確認)
- パノラマ・デンタルレントゲンでお口全体を確認
- CT検査で骨の量や神経・上顎洞の位置を立体的に確認
- 検査結果をもとに治療計画を説明(期間・回数・リスク・費用)
- 必要に応じて歯周病などの治療を先に実施
- インプラント手術
なお、心筋梗塞・糖尿病・骨粗しょう症などの全身の病気によっては、治療を受けられない場合や配慮が必要な場合があります[1]。服用中のお薬や持病は、事前にお知らせください。
治療後の経過観察でもレントゲンは重要
レントゲンは、インプラントを入れた後の経過観察にも使います。治療後は、デンタルレントゲン(平行法)でインプラント周りの骨の状態を確認することが勧められています[2]。
インプラントの周りに炎症が起こる「インプラント周囲炎」が進むと、インプラントの撤去が必要になる場合があります[1]。毎日のセルフケアと定期検診を続けることが、インプラントを長く使うために大切です[1]。
インプラント治療を検討中の方へ(自由診療について)
インプラント治療は、原則として健康保険が適用されない自由診療です。標準的な流れは、検査・診断、インプラント手術、骨とインプラントが結合するまでの治癒期間、被せ物の装着です。治療期間はおおむね数か月から1年程度で、骨造成の有無などにより異なります。
主なリスクとして、手術後の腫れや痛み、出血、感染、神経の損傷によるしびれ、インプラント周囲炎などがあります[1][4]。費用は、日本歯科グループのインプラントは1本あたりバイオテム15万円〜、ネオデント25万円〜、ストローマン35万円〜(税込・公式サイト記載の料金、症例により別途費用あり)で、レントゲン・CTスキャン・手術代を含みます。
静岡歯科では、レントゲン・CTによる検査結果をもとに治療内容をご説明し、ご納得いただいてから治療を進めます。インプラント治療の初回相談は0円です。詳しくは日本歯科グループのインプラント治療のページをご覧のうえ、お気軽にご相談ください。
よくある質問
インプラントの検査はレントゲンだけで十分ですか?
パノラマやデンタルレントゲンで全体を確認し、術前にはCTを組み合わせることが勧められています。CTでは骨の幅や高さ、神経との距離を立体的に確認できます。必要な検査の範囲は、お口の状態に応じて歯科医師が判断します。
歯科のレントゲンやCTの被ばくは大丈夫ですか?
歯科のレントゲン検査の被ばく量は、問題のない範囲とされています。撮影は診断に必要な範囲で行います。妊娠中または妊娠の可能性がある方は、事前にお知らせください。
レントゲンで骨が少ないと言われたら、インプラントはできませんか?
骨が少ない場合でも、骨造成などの処置を組み合わせて治療できることがあります。ただし、骨の状態や全身の健康状態によって適否は異なります。インプラント以外の方法も含めて、歯科医師と相談して決めましょう。
インプラントを入れた後もレントゲンを撮りますか?
はい。治療後の経過観察では、レントゲンでインプラント周りの骨の状態を確認します。インプラント周囲炎などを早めに見つけるため、定期検診を続けることが大切です。