インプラントのトラブル-2
インプラントは安全性の高い治療法ですが、必ずしも100%安全だとは言い切れません。
正しい治療が行われなければ、トラブルは起こりやすくなります。
ここでは、主なトラブルの事例とその原因、安全な治療を実現するための方法をご紹介しています。
インプラントのトラブルにつながる主な5つの原因
①ドリルの摩擦熱によるオーバーヒート
インプラントを埋入する際、ドリルの操作や注水に不手際があると、発生する摩擦熱によってオーバーヒートが起こりやすくなります。
オーバーヒートが起こると骨が火傷を負ったような状態になり、インプラントが骨とうまく結合しなくなる可能性があります。
②位置や角度が不適切
インプラント治療の安全性は、治療計画に従い実行することで高まります。
計画通りに実行されないと事故が起こる可能性があります。
③インプラント周囲炎
インプラントの周囲が細菌に感染することで、歯ぐきの炎症やインプラントが脱落につながるインプラント周囲炎が起こります。
インプラント周囲炎は、インプラント専用オペ室以外の不衛生な環境で手術を行ったことによる感染や、治療後の不十分な歯磨きが原因としてあげられます。
④喫煙による術後の治癒の阻害
タバコに含まれるニコチンの影響により血管が収縮することで、術後の治癒不全につながります。
最終的にインプラントと骨の結合が妨げられる、インプラント周囲炎のリスクが高まる、といったことが起こりやすくなります。
⑤外部からの強い刺激
手術の後、治療部分に外圧が加わると骨との結合の妨げとなります。
硬い食べ物や無理な歯磨きは、手術後しばらく避ける必要があります。
歯ぎしりや食いしばり、舌先で押したり触れたりする等の悪習癖がある方は、担当の医師と術後の対策を検討しておく必要があります。
安全性の高い治療のために必要なこと
インプラントは決して危険な治療ではありません。
正しい治療を行うことで、トラブルを回避することは十分に可能です。
トラブルを防ぐためには、治療する医師側に実績や経験、技術力が必要とされます。
また患者さまにも、インプラントを正しく使うための知識を持つことが求められます。
●歯科用CTやインプラント専用オペ室
インプラント治療の安全性を高めるために重要となるのが、治療をサポートする装置や機器です。
安全性の高いインプラント治療のためには、3D画像が得られる歯科用CTが必須です。
歯科用CTは非常に高額な機器なため、歯科医院の保有率は10%程度と言われています。
またインプラント治療は感染を防ぐため、インプラント専用オペ室が必要となります。
一般的な歯科医院にある治療台ではなく、隔離されたクリーンルームで治療を行います。
メンテナンスと悪習癖
インプラントは治療すれば、それで終わりというわけではありません。
治療後のメンテナンスを行うかどうかがインプラントの寿命に大きく影響します。
メンテナンスでは、歯ぐきの腫れや出血などのインプラント周囲炎の症状の有無や、インプラントの動揺などを確認します。
口腔内の清掃状況を確認し、汚れがひどい部分や清掃が難しい部分はTBI(歯磨き指導)を行い、通常の歯磨きでは落とし切れない汚れをクリーニングします。
喫煙は代表的なインプラントのトラブル要因となることから、インプラント治療の成功には禁煙が大きく関係します。
タバコのリスクをきちんと理解し、可能な限り禁煙を行うことが重要です。
しかしそれが難しい場合は、医師の指示に従って一定期間の禁煙に取り組むことが望ましいです。
舌癖や歯ぎしり、食いしばりはインプラントと骨の結合を妨げるので、日中は意識的に止めることを心がけ、就寝時はナイトガードを使用するなどの対策が必要です。
さらにリスク要因である歯周病や糖尿病、高血圧などの既往歴がある場合は、定期的に検査を受けて症状をコントロールすることが重要です。