上顎にインプラントオーバーデンチャーを入れる場合の費用は?治療の流れと注意点もチェック
インプラントと入れ歯それぞれの利点を組み合わせた「インプラントオーバーデンチャー」は、歯が抜けてしまったあごへの負担を抑えながらも、高い安定性を実現できる治療として注目されています。特に上顎は骨が薄い傾向があり、下顎に比べてインプラントの本数が多く必要となりやすいことから、治療費や手術計画の面で気になる点も多いかもしれません。
この記事では、上顎にインプラントオーバーデンチャーを導入するときに押さえておきたい費用の目安や医療費控除のポイント、治療の特徴や手術の流れ、治療後のメンテナンスまでを詳しく解説していきます。インプラント治療を検討している方や他院で断られてしまった方、あるいはインプラント治療を始めることに不安を感じている方に向けて、わかりやすくまとめました。
ぜひ最後までお読みいただき、治療を検討するうえでの参考にしてみてください。
上顎にインプラントオーバーデンチャーを入れる場合の費用
上顎にインプラントオーバーデンチャーを導入しようと考える際、まず意識しておきたいのが費用面です。インプラント治療は保険適用外の自由診療であることが多く、医院によっても価格設定に幅があるため、費用は低く見積もっても数十万円ほどで、状況によっては百万円を超える場合もあります。上顎の場合、骨が薄いためにインプラントがしっかり固定されにくく、必要となるインプラント本数が増えてしまう傾向にあります。
例えば、下顎であれば2本のインプラントで支えられる症例が上顎では4本、あるいはそれ以上必要になることがあり、結果的に治療費がより高額になる傾向があります。また、インプラント費用の見積もりには、実際に骨に埋入するインプラント代のみでなく、外科処置の手術費やアバットメントと呼ばれる連結パーツの費用、そしてオーバーデンチャーそのものを製作する技工費などが別途かかることが一般的です。
例えば2本のインプラントだけを埋め込む場合であっても、トータルで80万円程度になる場合も多々あります。それが4本や6本になると、治療費は150万円を超えることも珍しくありません。素材によっても費用は上下し、一般的にはチタンがベースとなりますが、ジルコニアなど審美性を重視した素材を選択するケースではさらに費用がかさむ可能性があります。
費用を正確に把握するためには、カウンセリングの段階で歯科医師と十分に相談したうえで、治療内容の詳細や見積もりを確認しておくことが大切です。同時に、自分のあごの骨の量や質に応じた治療計画をしっかり聞き、その分だけ費用がどう変化するのかを事前に把握しましょう。もし費用面が大きな懸念であれば、医療費控除などの制度も視野に入れながら、無理のない治療計画を立てることが望ましいです。
インプラント本数 | 費用の目安 |
---|---|
2本 | 80万円程度 |
4本~6本 | 150万円以上になる場合あり |
医療費控除は使える?
インプラントオーバーデンチャーは多くの場合、保険適用外の自由診療となるため、治療費の高さが大きな懸念点となるでしょう。しかしながら、年間の医療費が10万円を超える場合、医療費控除の対象となる可能性があります。
医療費控除を受けることで所得税が還付されるだけでなく、翌年度の住民税も減額されることがあり、実質的な負担を軽減することができます。
ただし、医療費控除を受けるためには確定申告時に領収書をはじめとした必要書類をきちんと揃えておく必要があります。インプラント治療の場合、外科手術にかかった費用やCTスキャンなどの検査費用、そして通院に要した交通費なども条件を満たせば控除の対象となる場合があります。確定申告の手続きを円滑に進めるには、治療の途中からでもレシートや領収書を整理しておくことが重要です。
また、歯科医院によっては医療費控除について詳しいスタッフが在籍していることもあります。高額治療だからこそ、手続きに不慣れな方でも安心して手配できるようサポートしてくれる医院を選ぶと、煩雑な準備や書類の不備によるトラブルを防ぎやすいです。手間を惜しまず、しっかりと制度を活用することは、長期的な金銭的負担の軽減に非常に役立つでしょう。
インプラントオーバーデンチャーの特徴
インプラントオーバーデンチャーとは、数本のインプラントを土台にして取り外し可能な入れ歯を安定させる治療法です。従来の入れ歯は歯茎の粘膜に吸着させる設計なので、噛むときに動いてしまったり、食事中にずれてしまったりという不満が生じることがあります。
一方で、インプラントオーバーデンチャーでは、インプラントという“固定源”があるため、入れ歯がずれたり外れたりしにくく、高い安定感が得られることが大きな利点です。ここではインプラントオーバーデンチャーのメリットとデメリットを整理してみましょう。
メリット
最大のメリットは、最大の魅力は噛みやすさと安定感です。インプラントが入れ歯を支える構造なので、硬い食べ物でも比較的しっかり噛むことができます。
一般的な総入れ歯では苦手とされる硬めの野菜やお肉、硬めのせんべいなども無理なく噛めるため、食生活の幅が広がりやすいです。
また、フルインプラント(全てをインプラントで補う治療)と比較すると、必要とされるインプラント本数が少なくて済むことが多い点も魅力です。その結果、費用負担もある程度抑えられ、治療期間や体への負担も軽減しやすくなります。さらに、インプラントオーバーデンチャーは取り外しが可能であるため、日常的な清掃がしやすい特徴があります。口の中で直接繋がったままのブリッジタイプの補綴物と異なり、洗面所で入れ歯部分をしっかりケアできるので衛生面に安心感が得られます。インプラント部分の歯肉やアタッチメント部分を清潔に維持しやすいことも、長期的にインプラントを健康に保つうえで役立つといえます。
デメリット
インプラントオーバーデンチャーのデメリットとしては、やはり保険適用外の治療であるため治療費が高額になりやすいことが挙げられます。特に上顎の場合はインプラントの本数が増える傾向があるため、初期費用の負担もそれに応じて大きくなる可能性があります。また、インプラントをあごの骨に埋め込む手術が必要になるため、全身的な健康状態によっては手術自体が難しいこともあります。
重度の糖尿病を抱えていたり、骨粗鬆症が進行していたり、あるいは喫煙習慣が長い場合はインプラント治療の成功率が下がるといわれており、医師と相談して慎重に検討しなければなりません。そのほか、残っている歯がある方がインプラントオーバーデンチャーを導入すると、入れ歯の構造によっては口腔内の清掃が複雑になる場合があります。適切なケアや定期的なメンテナンスを怠ると虫歯や歯周病のリスクが高まり、最悪の場合はインプラント周囲炎を引き起こす可能性が否定できません。インプラントオーバーデンチャーはあくまで定期的なメンテナンスと正しい口腔ケアを行うことを前提に、快適さを維持できる治療方法であるといえるでしょう。
- インプラントオーバーデンチャーは数本のインプラントを土台にして取り外し可能な入れ歯を安定させる治療法で、従来の入れ歯より動きにくく高い安定感が得られる。
- メリットとして、噛みやすさや安定感、取り外しが可能なため清掃がしやすい点が挙げられる。一方、保険適用外で治療費が高額になりやすいことや全身状態によっては手術が難しい場合があるなど、注意点もある。
上顎・下顎におけるインプラント本数の違い
一般的には、下顎よりも上顎のほうがインプラントオーバーデンチャーに必要なインプラント本数が多くなるといわれています。これは、下顎の骨が比較的硬くてしっかりしているのに対し、上顎は骨が薄かったり柔らかかったりするケースが多く、骨量が十分でないことが理由の一つです。骨質が軟らかい上顎に2本だけインプラントを埋め込むと、入れ歯の安定性が十分に確保できず、噛んだときの揺れや痛みなどのトラブルが生じることがあります。
そのため、歯科医師によっては4本以上のインプラントを推奨し、安定した土台を構築する計画を立てるのです。もちろん、すべての上顎症例で4本以上が必須というわけではなく、患者さんの骨量や噛み合わせの状態、残存歯の有無などによっても変わってきます。ただ、上顎で骨量が不足しているケースでは、骨移植やサイナスリフト(上顎洞を持ち上げて骨移植を行う処置)が必要となり、その分の費用や治療期間も追加される可能性があります。
特に他院で「骨が足りないからインプラントは難しい」と断られてしまった方でも、骨移植などの高度な技術を用いることでインプラント治療が可能になる場合があります。しかしながら、それには相応の経験と設備を持った歯科医師やクリニックが求められるため、安心して任せられる医院を見極めることが重要です。費用面では、インプラント本数が増えれば増えるほどコストも上乗せされるため、治療計画を立てる際は金銭的な面も含めて慎重に検討する必要があります。
一時的に費用を抑えたいからといってインプラント本数を無理に減らすと、後々の安定性に不安が残り、再治療のリスクが高まります。最終的に追加の出費を要することもあるため、短期的なコストだけでなく長期的な視点から治療方法を選択することが望ましいでしょう。
治療の流れ
インプラントオーバーデンチャーの治療は、一般的に以下のようなステップで進みます。最初に行うのは、カウンセリングと検査です。ここでは患者さんの口腔内の状況だけでなく、全身的な健康状態や既往歴、そして日常生活における習慣なども含めてヒアリングします。その後、レントゲンやCTスキャンを用いて、あごの骨量や形態、神経や血管の走行を詳細に調べます。
これらの情報をもとに、インプラントの埋入位置や本数、必要に応じた骨移植や歯周病治療などを含めた総合的な治療計画が立案されます。次に、実際のインプラント埋入手術を行います。局所麻酔下で行うことが多いですが、患者さんの希望や症例の難易度によっては静脈内鎮静法や全身麻酔を用いる場合もあります。上顎の骨が薄いケースでは事前に骨移植やサイナスリフトを行うことがあり、その処置により治療期間は長くなる傾向があります。
インプラントを埋入したあとは、骨とインプラントが結合するのを待つ治癒期間を設けます。通常は3〜6か月程度ですが、上顎や骨移植を行ったケースではそれ以上かかることもあります。インプラントが安定したら、連結パーツ(アバットメント)を装着し、入れ歯側にも対応する留め具(アタッチメント)を取り付けます。最後にオーバーデンチャーを装着し、噛み合わせや装着感を入念にチェックして問題がなければ治療完了です。
ただし、インプラントオーバーデンチャーの場合はここで終わりではなく、治療後の定期的なメンテナンスが非常に重要になります。
治療後のメンテナンスと注意点
インプラントオーバーデンチャーを快適に使い続けるためには、メンテナンスが欠かせません。インプラントそのものは人工物ですが、その周囲にある歯茎や骨、そして連結パーツは常に清潔に保つ必要があります。取り外しが可能な入れ歯式のインプラント補綴であっても、インプラント周辺のケアを怠ってしまえば細菌が繁殖し、インプラント周囲炎や歯茎の炎症を引き起こす原因となるからです。
日常のケアとしては、就寝前には必ずオーバーデンチャーを外して、水や専用の洗浄剤を用いて汚れを落とすようにしましょう。ブラシでゴシゴシこするだけでなく、複雑な形状の隙間にも洗浄液がしっかり届くようなケアを心掛けることが重要です。インプラント周囲も専用の歯ブラシや歯間ブラシを用いて優しく磨き、歯茎との境目にプラークを溜めないようにしましょう。
また、定期的な歯科医院でのチェックやクリーニングも必要になります。インプラントオーバーデンチャーを導入している場合、通常の総入れ歯以上に専用の検査や調整が求められることがあります。数か月ごとに来院して、アタッチメントの劣化を確認し、問題があれば交換や調整をすることでトラブルを未然に防ぐことが可能です。もし違和感や痛みを感じたら、自己判断で使用を続けず、できるだけ早めに担当の歯科医師に相談しましょう。
また、喫煙習慣がある方はインプラント治療の成功率が低下するといわれています。ニコチンやタールの影響で血管が収縮し、骨とインプラントが結合しにくくなることや、術後の回復が遅れるリスクが高まるため、できれば禁煙または減煙を検討することが望ましいです。インプラントは一度埋め込んだらそれで終わりではなく、長い時間をかけて使い続けるものですから、ライフスタイルも含めて総合的に見直しを行うことが大切です。
まとめ
上顎にインプラントオーバーデンチャーを導入する場合、骨が薄いことや骨量が不足しがちなことなどから、下顎に比べてインプラント本数が増えやすいという特徴があります。それに伴い、治療費がさらに高額になるほか、骨移植が必要になる可能性もあります。しかし、数本のインプラントで入れ歯をしっかり固定できるインプラントオーバーデンチャーは、高い安定性と衛生管理のしやすさを両立できる魅力的な治療法です。
治療後のメンテナンスを丁寧に行えば、長期的に安定した噛み心地を維持しやすいとされています。もし他院で難しい、骨が足りないと診断されてしまった場合でも、骨移植や高度な技術を用いることで治療の可能性が開けることもあるため、諦めずに、専門的な知識や実績を持つ歯科医師に相談してみるとよいでしょう。
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