親知らずの抜歯は痛い?麻酔と術後の痛みの経過|ドライソケットの見分け方・費用
親知らずの抜歯は局所麻酔で行うため、処置中に強い痛みを感じることは多くありません。痛みは麻酔が切れた当日〜翌日ごろが強く、日ごとに和らぐのが一般的です。数日後に痛みがぶり返す場合は受診しましょう。
抜歯中は痛い?麻酔と処置中の感覚
親知らずの抜歯は、通常、歯ぐきに局所麻酔をして行います。麻酔の注射の際にチクッとした感覚がありますが、表面に塗る麻酔を併用するなど、注射の刺激をやわらげる工夫をすることもあります。
麻酔が効いていても、歯を動かすときに押される感覚や、骨に響くような振動を感じることはあります。痛みを感じた場合は我慢せず、手を挙げるなどして伝えてください。麻酔を追加して対応します。
麻酔が効きにくいことがあるケース
- 親知らずの周りの歯ぐきが強く腫れている(炎症がある)とき
- 下の親知らずで、骨が厚く麻酔が浸透しにくいとき
- 緊張や不安が強いとき
炎症が強いときは、まず薬で落ち着かせてから抜歯の日程を組むことがあります。不安が強い方は、事前に相談しておくと、説明の進め方や休憩の取り方などを調整しやすくなります。
抜歯後の痛み・腫れの経過
抜歯後の痛みや腫れの程度は、歯の生え方や抜歯の方法によって大きく変わります。まっすぐ生えていて普通に抜けた場合は軽く済むことが多く、骨に埋まっている歯で、歯ぐきを開いたり骨を削ったりした場合は、腫れや痛みが強く出やすくなります。英国の国立医療技術評価機構(NICE)の資料でも、抜歯後には腫れや痛み、口が開きにくくなることがあると説明されています[1]。
下の親知らずを手術で抜いた患者さんを調べた研究では、痛みは手術の翌日がもっとも強く、3日目、1週間後と日を追って軽くなり、2週間後にはほとんど治まっていました[2]。
| 時期 | よくみられる状態 | 過ごし方のポイント |
|---|---|---|
| 当日(麻酔が切れるまで) | 唇や舌のしびれ、唾液ににじむ程度の出血 | しびれている間は食事を控え、唇や頬をかまないよう注意 |
| 当日〜数日 | 痛み・腫れが出やすい時期 | 処方された痛み止めを指示どおりに使い、安静にする |
| 1週間ごろまで | 痛みが少しずつ引いていく。口の開きにくさが残ることがある | やわらかい食事を続け、抜糸の予約があれば受診 |
| 2週間ごろまで | 軽い違和感が残ることがある | 痛みがぶり返していないか確認する |
経過には個人差があるため、表は目安として考えてください。
抜歯後の痛みを和らげる過ごし方
してよいこと
- 痛み止めは処方どおりに飲む:持病や服用中の薬がある方は、事前に伝えておきましょう。
- 出血したらガーゼをかむ:清潔なガーゼを丸めて抜いた場所に当て、しっかりかんで圧迫します。
- 腫れている側の頬を軽く冷やす:冷たいタオルなどを短時間当てる程度にとどめます。
- 反対側でかみ、やわらかい食事にする:熱すぎるもの、辛いもの、かたいものは避けましょう。
避けたいこと
- 強いうがいを何度もする、舌や指で穴を触る、ストローで強く吸う:抜いた穴をふさぐ血のかたまりが取れてしまうおそれがあります。
- 喫煙:ドライソケットが起こりやすくなることが報告されています[3]。
- 当日の長風呂、激しい運動、飲酒:血行がよくなると、出血や痛みが強くなることがあります。
ドライソケットの見分け方
ドライソケットは、抜いた穴を守る血のかたまりの一部または全部が失われ、骨がむき出しになった状態です。抜歯後1〜5日ごろに強い痛みが始まることが多いとされています[3]。
| 比べるポイント | 通常の抜歯後の痛み | ドライソケットが疑われる痛み |
|---|---|---|
| 痛みの経過 | 当日〜翌日ごろが強く、その後は少しずつ軽くなる | 数日たってから強くなる、またはぶり返す |
| 痛みの性質 | 鈍い痛み、痛み止めで和らぐ | ズキズキと強い痛みが続き、痛み止めが効きにくい |
| 抜いた穴の見た目 | 赤黒い血のかたまりでふさがっている | 穴が空っぽに見える、白っぽい骨が見える |
| その他 | 日ごとに改善する | 口臭や、いやな味がする |
システマティックレビューでは、喫煙する人はドライソケットのリスクが3倍以上高いと報告されています。下の親知らずの抜歯や、難しい抜歯、年齢、経口避妊薬の服用なども関係する可能性が指摘されています[3]。疑わしい場合は自己判断で様子をみず、抜歯した医院に連絡してください。穴の中を洗浄し、必要に応じて薬を詰めるなど、痛みを和らげる処置を行います。
すぐに連絡・受診したい症状
- ガーゼで圧迫しても出血が止まらない
- 痛みが日ごとに強くなる、数日たってから痛みがぶり返した
- 腫れが首やのどのほうへ広がる、飲み込みにくい、息苦しい(息苦しさがある場合は救急要請も検討してください)
- 発熱が続く
- 唇やあご、舌のしびれが、麻酔が切れる時間を過ぎても続く
下の親知らずが神経に近い場合、抜歯後に唇やあごにしびれが出ることがあります。NICEの資料でも、抜歯の手術には神経を傷つけるリスクがあるとされています[1]。リスクは歯の位置によって異なるため、事前の画像検査で確認しておきましょう。
親知らずの抜歯の費用の目安(保険診療)
親知らずの抜歯は、多くの場合健康保険が適用されます。令和8年度の歯科点数表では、抜歯の点数は歯の状態によって次のように決められています(抜歯の処置そのものの目安)[4]。
| 抜歯の種類 | 点数 | 3割負担の目安 |
|---|---|---|
| 奥歯の抜歯 | 270点 | 約810円 |
| 難しい抜歯(骨を削る・根を分けるなど) | 270点+230点 | 約1,500円 |
| 骨に埋まっている歯・水平に埋まった親知らずの抜歯 | 1,080点 | 約3,240円 |
| 下あごの骨に完全に埋まった、または水平に埋まった親知らず | 1,080点+230点 | 約3,930円 |
抜歯の点数には、通常の局所麻酔の手技料が含まれます(麻酔薬の費用は別に算定されます)[4]。実際の窓口負担には、初診料・再診料、レントゲンやCTなどの検査、痛み止めなどの薬代が加わります。
まとめ
親知らずの抜歯は局所麻酔で行うため、処置中に強い痛みを感じることは多くありません。抜歯後の痛みは当日〜翌日ごろが強く、その後は日を追って和らいでいくのが一般的な経過です。数日たって痛みがぶり返す場合はドライソケット、出血が止まらない・腫れが広がる場合は別の問題の可能性があるため、早めに連絡してください。抜歯の前には、画像検査でご自身の場合の注意点を確認しておくと安心です。
ご相談はクリニック一覧から、通いやすい医院をご確認ください。
よくある質問
親知らずの抜歯後の痛みはいつまで続きますか
一般に、痛みは当日〜翌日ごろが強く、その後は日を追って和らぎます。骨に埋まった歯を抜いた場合などは、軽い痛みが2週間ほど続くこともあります。痛みが日ごとに強くなる場合は受診してください。
抜歯の麻酔の注射は痛いですか
注射のときにチクッとした感覚がありますが、表面に塗る麻酔を使うなど、刺激をやわらげる工夫をすることがあります。麻酔が効いた後は、押される感覚はあっても、強い痛みを感じることは多くありません。
ドライソケットになったらどうすればよいですか
自己判断で様子をみず、抜歯した医院に連絡してください。穴の中を洗浄したり、薬を詰めたりして、痛みを和らげる処置を行います。喫煙や強いうがいは避けましょう。
抜歯の翌日から仕事や学校に行けますか
普通の抜歯であれば、翌日から通常どおり過ごせる方が多いです。骨を削るなどの抜歯では、腫れや痛みが続くことを見込んで日程を組むと安心です。
参考文献
- National Institute for Health and Care Excellence (NICE). Guidance on the extraction of wisdom teeth (Technology appraisal guidance TA1). https://www.nice.org.uk/guidance/TA1
- Gabrić Pandurić D, Brozović J, Sušić M, et al. Assessing health-related quality of life outcomes after the surgical removal of a mandibular third molar. Collegium Antropologicum. 2009;33(2):437-447. https://hrcak.srce.hr/en/40524
- Kuśnierek W, Brzezińska K, Nijakowski K, Surdacka A. Smoking as a risk factor for dry socket: a systematic review. Dentistry Journal. 2022;10(7):121. DOI: 10.3390/dj10070121
- 厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第69号)別表第二 歯科診療報酬点数表」https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001665293.pdf