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食いしばりにマウスピースは効く?役割と限界|保険で作る流れ・日中の対策

食いしばり用のマウスピースは、上下の歯の接触を防いで、歯のすり減りや欠けを守る装置です。食いしばりそのものを止める治療ではありません。睡眠中の歯ぎしりや顎関節症と診断されれば保険で作れるため、まず歯科で歯とあごの状態を確認しましょう。

この記事では、食いしばりにマウスピースを使う目的と限界、歯科で作る流れ、市販品との違い、日中の食いしばりへの対策、受診の目安を整理します。

食いしばりとマウスピースの関係

食いしばりや歯ぎしりは、専門的には「ブラキシズム」と呼ばれます。国際的な専門家の合意では、睡眠中に起こるものと、起きているときに起こるものに分けて考えます[1]。起きているときのブラキシズムは、上下の歯を繰り返し、または長く接触させる、あごを押しつけるといった筋肉の活動とされています[1]。

強い食いしばりが続くと、歯がすり減る、欠ける、被せ物が壊れる、あごが疲れる、頭痛がするといった影響が出ることがあります[2]。マウスピースは、歯と歯の間に樹脂の層を挟むことで、こうした力から歯を守る役割を担います。

種類 起こるとき マウスピースの位置づけ
睡眠中の歯ぎしり・食いしばり 寝ている間(本人は気づきにくい) 就寝時に装着して歯を守る方法が中心
起きているときの食いしばり 仕事や作業に集中しているときなど まず癖に気づいて力を抜く対策が中心
顎関節症をともなう場合 あごの痛み・口の開けにくさ・音 診断のうえで治療用の装置を検討

マウスピースでできること・できないこと

期待できること

  • 歯のすり減りや欠けを防ぐ:歯どうしが直接こすれ合わないため、歯や被せ物を守ります[2]。
  • 筋肉の働きを和らげる可能性:歯を離すことで、あごの筋肉の活動が減る可能性があるとされています[2]。
  • あごへの負担の調整:顎関節症では、症状に合わせた装置が治療の一つとして用いられます[3]。

期待しすぎないほうがよいこと

  • 食いしばりの癖を治すものではない:睡眠中の歯ぎしりに対するマウスピースの研究をまとめた系統的レビューでは、睡眠に関する結果を改善するかどうかを判断できるだけの根拠は十分でないとされ、歯のすり減りを防ぐ点で利点がある可能性が示されています[4]。
  • 原因そのものは残る:ストレス、飲酒やカフェイン、喫煙、一部の薬などが関係すると考えられており[2]、生活面の見直しも必要です。

マウスピースは「歯を守るための道具」と考え、食いしばりの原因への対策と組み合わせることが大切です。

歯科で作るマウスピースと市販品の違い

比較項目 歯科で作るマウスピース 市販のマウスピース
作り方 歯型をとり、かみ合わせを記録して作製 お湯で柔らかくして自分で形を合わせる
かみ合わせの調整 装着時と経過観察時に歯科医師が調整 基本的に自分で判断する
保険 診断によって保険で作製できる 対象外
主な注意点 定期的な確認と調整が必要 合っていないと、かみ合わせの違和感やあごの負担につながることがある

日本補綴歯科学会の指針では、歯ぎしりや顎関節症に用いる装置は、上下の歯の接触関係を付与して作製するのが一般的とされています[3]。装着後は、早い段階で歯の当たり方がかたよっていないかを確認し、装置のすり減りやあごの位置の変化に合わせて調整を続けます[3]。

歯科でマウスピースを作る流れ

  1. 問診と診察:歯ぎしりの音を指摘されたことがあるか、起床時のあごの疲れや痛み、頭痛、口の開けにくさがあるかを確認します。歯のすり減り方や被せ物の状態も診ます。
  2. 診断:睡眠中の歯ぎしりは、ふだんから歯ぎしりの音があることに加え、歯の異常なすり減りや起床時のあごの痛み・疲れなどがあるかを目安に判断します[3]。顎関節症が疑われる場合は、あごの痛みや音、口の開き方を確認します[3]。
  3. 型取り:上下の歯型と、かみ合わせの記録をとります。
  4. 装着と調整:完成した装置を口に入れ、きつさや歯の当たり方を調整します。着け外しや洗い方の説明を受けます。
  5. 経過観察:使い始めは短めの間隔で確認し、その後も定期的に装置のすり減りや割れ、かみ合わせの変化を点検します[3]。

歯科医師が睡眠時の歯ぎしりや顎関節症と診断した場合、装置は健康保険の対象になります[3]。費用の決まり方や市販品との違いは、歯医者のマウスピースの値段は?で詳しく解説しています。

使うときの注意点

  • 痛みや違和感が強くなったら使用を中止して相談する:指針でも、痛みが悪化した場合は使用を中止し、かみ合わせの変化に気づいたら歯科医師に伝えるよう指導するとされています[3]。
  • 定期的に点検を受ける:装置がすり減ると歯の当たり方が変わるため、調整が必要です[3]。長期間使う場合は、かみ合わせに変化が出ていないかを確認してもらいましょう。かみ合わせの変化についてはナイトガードで歯並びは変わる?も参考にしてください。
  • 清潔に保つ:使った後は水で洗い、教わった方法で清掃して乾かし、ケースに保管します。熱いお湯は変形の原因になることがあります。
  • 割れたり合わなくなったりしたら作り直しを相談する:合わない装置を使い続けると、歯やあごに余計な力がかかることがあります。
  • 矯正治療中の方は担当医に確認する:矯正装置を使っている間は、歯並びの変化に合わせた対応が必要です。

日中の食いしばりへの対策

起きているときの食いしばりは、本人が気づかないうちに歯を接触させていることが多いため、まず癖に気づくことが出発点です。ふだん、唇を閉じて上下の歯が離れている状態がリラックスした姿勢です。

  • パソコンやスマートフォンの画面、机の周りなど目に入る場所に目印を付け、見たときに歯が当たっていないかを確かめる
  • 歯が当たっていたら、肩やあごの力を抜いて、ゆっくり息を吐く
  • 前かがみの姿勢で長時間作業し続けないよう、こまめに休憩をはさむ
  • 就寝前の飲酒やカフェインを控え、睡眠のリズムを整える[2]
  • 服用中の薬が気になる場合は、自己判断で中止せず、処方した医師に相談する[2]

食いしばりの原因や歯への影響は、食いしばりの原因とは?でも詳しく解説しています。

受診の目安

次のような症状がある場合は、歯科で相談しましょう。

  • 家族などから歯ぎしりの音を指摘された
  • 朝起きたときに、あごがだるい、痛い、口が開けにくい
  • 歯の先がすり減って平らになっている、欠けた、しみるようになった
  • 被せ物や詰め物が割れる、外れることを繰り返す
  • こめかみ周辺の頭痛や、あごを動かしたときの音がある
  • 市販のマウスピースを使っていて、かみ合わせの違和感やあごの痛みが出てきた

食いしばりで歯が痛む場合の見分け方は、食いしばりで歯が痛いのはなぜ?で解説しています。

まとめ

食いしばり用のマウスピースは、歯どうしの接触を防いで歯や被せ物を守る装置であり、食いしばりの癖そのものを治すものではありません。睡眠中の歯ぎしりや顎関節症と診断されれば保険で作製でき、装着後は定期的な確認と調整が必要です。日中の食いしばりには、歯が当たっていることに気づいて力を抜く習慣づくりが基本になります。歯のすり減りやあごの不調が気になる場合は、まず歯科で状態を確認しましょう。

よくある質問

食いしばり用のマウスピースは毎晩着ける必要がありますか

睡眠中の食いしばりや歯ぎしりは本人が気づかないうちに起こるため、歯を守る目的であれば、歯科医師の指示に沿って就寝時に継続して使うのが一般的です。使う時間や期間は症状によって異なるため、担当の歯科医師に確認してください。

マウスピースを着ければ食いしばりは治りますか

マウスピースは歯を守るための装置で、食いしばりそのものを止める効果は十分に確かめられていません。ストレスや睡眠、飲酒などの生活面の見直しや、日中の癖への対策を組み合わせることが大切です。

昼間の食いしばりにもマウスピースを使えますか

日中の食いしばりは、まず歯が当たっていることに気づいて力を抜く習慣づくりが基本です。仕事中などに装置を使うかどうかは、症状や歯の状態によって判断が分かれるため、歯科医師に相談してください。

市販のマウスピースでも代わりになりますか

市販品は自分で形を合わせるため、かみ合わせの確認や調整ができません。合わないまま使うと、違和感やあごの負担につながることがあります。歯のすり減りやあごの症状がある場合は、歯科で診察を受けてから使う装置を決めましょう。

マウスピースは保険で作れますか

歯科医師が睡眠時の歯ぎしりや顎関節症と診断した場合は、健康保険の対象になります。自己負担額は保険の負担割合や、型取り・調整などの内容によって変わります。

食いしばりや歯のすり減りが気になる方は、クリニック一覧から通いやすい医院をご確認のうえ、ご相談ください。

参考文献

  1. Lobbezoo F, Ahlberg J, Raphael KG, Wetselaar P, Glaros AG, Kato T, et al. International consensus on the assessment of bruxism: Report of a work in progress. Journal of Oral Rehabilitation. 2018;45(11):837-844. doi:10.1111/joor.12663
  2. National Institute of Dental and Craniofacial Research(米国国立歯科頭蓋顔面研究所)「Bruxism」https://www.nidcr.nih.gov/health-info/bruxism
  3. 日本補綴歯科学会 医療問題検討委員会「顎関節症・歯ぎしりに対する口腔内装置(スプリント)の指針」日本補綴歯科学会 https://www.hotetsu.com/files/files_249.pdf
  4. Macedo CR, Silva AB, Machado MAC, Saconato H, Prado GF. Occlusal splints for treating sleep bruxism (tooth grinding). Cochrane Database of Systematic Reviews. 2007;(4):CD005514. doi:10.1002/14651858.CD005514.pub2